1話後編.再集結
2025年12/07
1話改稿して前編後編2つに分けました。
◇◇◇
ちょうどその時刻、13年の時を経て魔獣四王が遂に再会を果たしていた。
昔の約束の場所で。
「13年前、友と別れて幾星霜。互いの誓いを胸に生き抜いて、集いしは今日の日の為。ふふふふふ、お、ま、た、せーっ!みんな、わたし参上だよー!」
おかしな口上を述べてパァンっと破裂音を撒き散らし、満面の笑顔で部屋に入ってきたのは
スライム王となったかつての最弱スライム、セレーネだった。
水飛沫が部屋中に飛ぶ。
セレーネは自身の体の一部を破裂させて、その破裂音を発生させたのだ。
それは、セレーネにとってはお祝いのクラッカーのつもりだったのだろう。
花火のように部屋にはセレーネの破裂音が響き続ける。
セレーネの感覚はよくわからないが、相変わらず派手なことが好きなようだ。
セレーネはタプーン、タプーンと、
廊下を埋め尽くすほど大きな液状の肉体を引きずってとある古城の中央の部屋に入る。
かつて4匹がまだ弱い時、4匹と1人で一緒に旅をしていた時に
隠れ家にしていた秘密基地の古城。
そして、強くなっていつか必ず集合しようと誓って別れた約束の場所。
そこが集合場所だった。
すでに残り3匹の王は
人化の魔法で人間に姿をかえて、円卓に座しているようだ。
それぞれの王は部屋の外に一匹ずつ、従者を
外に待機させている。
「あらー。セレちゃん。えらい久しぶりやなぁ。やというに、えらいゆっくりきはったみたいで、待ちくたびれたわぁ。ほんまに」
まず初めに口を開いたのは蜘蛛の王になった最弱だったタランチュラ、真蜘羅だった。
彼女は真っ白な髪の女の子の姿に擬態していた。
基本白ベースで膝下の右下には蜘蛛の糸の紋様が描かれたデザインの浴衣を着ている。
相手が何も知らなければ、顔立ちの整った美人にしか見えないが、性格は一番魔獣寄りかもしれない。
真蜘羅は口元を扇子で隠しながら、赤く光る目で
セレーネのほうをジロジロと探るように覗いている。
邂逅一番にこの嫌み。
この娘は昔のまま性格悪く育っちゃたみたい。
昔矯正を試みたのに嘆かわしい。
「えへへ。いやー、ごめんなさい。わたしのスライムボディは移動が面倒で」
セレーネは青い液体の体をタプンタプンと揺らしてアピールする。
「大して待ってないでしょ。相変わらずアンタは性格悪いわね」
真蜘羅に噛み付くように物申したのは
かつて最弱だったグリフォン、大怪鳥フェルミナだ。
長髪の茶髪にチャーミングポイントのアホ毛が一本生えている。このアホ毛はこの娘と同じ種族のモンスターにも生えているが、種族的な特徴なのだろうか。
他に特徴といえば、オッドアイで右目がサファイヤのような青で左目がエメラルドのような緑だ。
あと胸がとても大きい。鳩胸ということなのだろうか。
他の人にはとても優しい子なのにマクラにだけは
やけに突っかかるのは相変わらずだ。
「ふふふ。そんな噛み付くように言わんでもええやない。ただの軽口や」
ニヤニヤと笑いながらマクラは言う。
「でも、確かにセレーネ。お前ちょっと遅いぞ。おかげでお腹すいちゃった。マクラ〜。お前の糸食わせてくれ〜」
蜘蛛と鳥。2匹の会話に割って入ったのは、かつて最弱だったドラゴン、龍の王オルゴラズベリー、通称オルだった。
彼女は可愛らしい少女の姿をしていた。
臀部から生えているドラゴンの尻尾を隠せば、
この少女の正体が実はドラゴンと思う人間はいないだろう。
「糸って…オル。しばらく見ない間にずいぶん偏食になったのね」
フェルミナが苦虫を潰したような顔をして言う。
「我の糸は栄養たっぷりやで」
マクラが得意気に行った。
「そういう問題じゃないでしょ」
その返答に対して、フェルミナはツッコミを入れる。
「うんうん。久しぶりだけとみんな仲良さそうで安心たよ。よきかな、よきかな。おっと、ごめん。この姿じゃ大きすぎだね」
皆の様子を見て、セレーネは嬉しそうに頷くと、それから人化の魔法を使った。
部屋の半分は埋め尽くす大きさの液体はみるみるうちに姿を変え、1人の女性へと変化していった。
肩にはペットのスライムを乗せている。
「懐かしいなぁセレちゃん。招待状見て思い出したわぁ。昔の約束。とうとう果たす時が来たんやねぇ。セレちゃんと世界せいふ」
「うん。13年前約束したね。いつか最強のモンスターになれたら4人で集まっていろんなお話しようって。全員頂点までいけたみたいだし、そろそろかなって」
セレーネはマクラが言い終える前に言った。
「え、あ、そ、そうやったな。うん。とーぜん覚えてたよ。今日はいっぱい話そうなぁ。セレちゃん」
マクラはたじろぎつつも返答する。
ちょっとマクラ!今何言おうとしたのですか!?、と私は心の中で突っ込む。その場にいたら吹き出してしまったかもしれない。
「マクラ…。アンタね」
フェルミナが呆れたように言った。
「私も覚えてるぞ。皆でやりたいこともあったしな。にしし」
オルも嬉しそうに言う。
若干1人、いえ、1匹心配な子がいたけど、
やっぱり基本いい子だ。
安心しました、と私は思う。
「それで、セレーネ。ルナはどうしたのかしら。やっぱり来れないの?」
「うん。立場的に厳しいみたい。でも、大丈夫!そのうち会えるでしょ。それはそうと今日はいっぱい手土産も持ってきたからみんなで楽しもーー!」
セレーネが言う。
さてさて、これからとっても楽しくなりそうですね。
ここも、人間領も魔族領も。色んな意味で。
◇◇◇
その頃の人間の国の王宮では、王様がずっと父が私の膝の上で半べそをかいていた。
こんなに恥ずかしい所もある父ですが、なんだかんだで好きですよ。かわいくて。
でも皆本当に大袈裟すぎなんですよね。
「ふげっ」
心の中で呟いてから私は膝の上の父を無造作に退かして立ち上がり、片目を開けた。
視界がこの王宮内に切り替わる。
突然ひざまくらを外された父は頭をぶつけて手で覆っている。
おっといけない。父をどかすのを忘れてました。
私は気にせず机の上の紅茶を一口、ゆっくりと口に入れた。
彼女らと知り合ったのは14年前のことだった。
それから1年旅をしたあと、私は彼女たちと別れた。
それからの13年間、1匹を除いて私は彼女たちにずっと会っていない。
それは私の個人的な理由が原因なのだけれども、それはまた今度語るとしましょう。
長い年月が彼女たちを変えてしまったのではと少し心配していたが、様子を見てる限り一応問題はなさそうだ。
そうそう、なんで魔獣四王が集まっているのに大したことがないかというお話でしたよね。
だって、今回の騒動は共に最強まで成り上がろうと誓った幼馴染たちが、
それを達成した記念に同窓会を開くだけのとっても微笑ましくて平和的なお話なんですもの。
私の都合で彼女達を離れ離れにさせてしまったけれど、また会えたみたいで本当によかったです。
そうそう、私の自己紹介が遅れていましたね。
ルナ・リリベスティ・クリスティナ、王の娘です。
よろしくお願い致しますね。




