14話.フェルミナの冒険②:リア・エリーゼ・ヴァイロン
大変不快なことにギルドに着いて早々に野蛮な冒険者どもに群がられてる。
何なのかしら、この原始人どもは、
とフェルミナは思った。
「はぁ!?姉ちゃん。正気かよ?敵が何だか分かってんのかぁ?Sランクモンスターだぞ、Sランク」
男たち3人は大笑いして、こちらを罵ってきた。
「冒険者ってのは姉ちゃんみたいな細腕で勤まる仕事じゃないぜ。その剣だってまともに触れるのかぁ?」
「さっさと帰んな。俺らみたいな実力者じゃないと今回の仕事は務まらんぜ」
こいつらこそ何を言ってるのかしら。
姿形、ましてや性別なんて強さに関係がない。
それが私たち魔獣の間での常識だ。
その常識を持っていなければ、例えばオルのようなか弱く見える少女が、実は身体能力最強だと見抜けずに殺されることとなる。
だからこそ、魔獣は相手の実力を魔力量で計る。
それが一番確実だからだ。
もっともそれでも100%正確に実力を測る事は不可能だが。
それでも計測した魔力量と実力差が乖離していることはまずないと言っていいだろう。
冒険者ってどんなものか、少し期待もしていたのだけれどこの程度なのね。
いえ、彼らがしたっぱすぎるだけかしら。
そう思い、フェルミナは憐みの目で彼らをみる。
「そっちこそ、クラーケンに勝てるようにはこれっぽっちも見えませんけど?とっても弱そうだし」
ニッコリ笑って私は言った。
「な、なんだとぉ。おれたちのどこがよわいってぇ」
「これでも、筋トレ毎日2時間はして鍛えてんだぜ。この筋肉をみろ」
男たちがこれ見よがしに腕の筋肉を見せつけてきた。
「そんなもん役に立つわけないでしょ」
思わず呆れてしまう。
「なにぃ?」
めんどくさいわね。こいつら。ぶっ飛ばしちゃおうかしら。
「どうしましたか!?」
そう思った時、騒ぎを聞いてかギルドの職員の女性が駆けつけてきた。
ちょうどよかったわ。こいつらよりは理知的な会話ができそう。
ーーー
ギルドの受付の女性は思ったより話が分かる人物だった。
さっきの男たちと違ってクラーケン討伐に参加したいという話を聞いても、笑わず聞いてくれたし、お茶も出してくれて丁寧な対応をしてくれた。
冒険者の業界全員がさっきの奴らみたいに野蛮ってわけではないのね。
お茶を啜りながら、私は思考を巡らせる。
女性の話をまとめると、どうやら簡単には討伐隊に加勢できないようだ。
受付の女性も丁寧に対応はしてくれているが、
私の提案を受ける気はないらしい。
となると、私の実力を示すものが必要だ。
そして、人間たちの場合その実力を示すものが冒険者ランクという冒険者の階級になるようだ。
下からE、D、C、B、Aランクと階級があるらしく、さらにそれを超えた最上位冒険者のランクがSランクらしい。
その説明の中で思いがけない話が聞けた。
受付の女性曰く、
「ですけど、Sランク冒険者はこの国の王女ルナ様が彼らは特別だからと、他の名前をつけられまして、そちらの方で呼ばれているんです」
とのことだった。
「!」
ルナが…
懐かしい名前だ。あの子も王女としていろいろ頑張ってるのね。
「その名も"自由の騎士団"」
「自由……ね」
ルナらしいネーミングセンスだ、と思いなんだか懐かしくなった。
13年前、魔獣四王がまだ生まれたての最弱モンスターだったころ。
ルナと一緒に4匹で旅をしていた。
よく1人と4匹遊んでいた思い出がよみがえる。
後で皆にも教えてあげましょう。
ーーーー
「そんなわけで、安全のためにも実力を示す必要があるんです。冒険者ランクで言いますと最低でもCランクは必要です。相手は危険度最高ランクのモンスターですからね。なので貴方を討伐隊に加えることは」
「そう、困ったわね」
受付の女性が言う。
彼女の言うとおりどうやって私の実力を示すか、そこが問題ね。
今から冒険者になったんじゃ、階級を上げるのも
間に合わないし、目の前の女性はそもそも実力を見てくれようとすらしてなさそう。
この建物を吹き飛ばしてみようかしら。
でもそれじゃ、正体がバレかねないし。
「ちょっと待って!」
そうやって悩んでいた時、話を割って入ったのは先程から離れたところでこちらの話を聞いていた女性だった。
さっき私が冒険者に迫られた時も
助けようとしてくれてたっけ。
……あら?この人結構強い?
改めて見てみると細かい動きや気配、
肌で感じる彼女から発せられる魔力からそれを感じた。
いったい何者かしら?
「リアさん!」
「横からごめんなさい。確かに民間から討伐隊に加わってもらうのはリスクが大きいことは分かる。けど、クラーケン討伐には正直戦力不足なのが現状だわ。今は少しでも戦力が欲しい」
「だからって民間からの募集はさすがに」
「ええ、分かってる。だから実力を見て審査することにしてはどうかしら。その場合私が直々に見ます」
そう言ってリアという女性は真っ直ぐな視線をこちらに向ける。
「・・・へぇ」
なんだか少しワクワクしてきた。
今度は期待してもいいのかしら。
「その提案、受けて立つわ」
だって面白そうだもの。
この子、人間で10代後半か20代って
ところかしら。
若いのにかなり強そう。
楽しみね。
「それと、ありがと。正直かなり困ってたのよ。
せっかく助けに来たのに、仲間に入れてもらえないんじゃしょうがないからね」
「ずいぶん気が早いのね。手を抜くつもりはないですよ。そうそう、自己紹介が遅れたわ。
私は自由の騎士団、叛逆の騎士、リア・エリーゼ・ヴァイロンよ。よろしくね」
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