7話.閑散期
*フェルミナ視点
「あ、あなたは!?」
「しぃー!今日は友達とお忍びできてるから名前は出さないでくれると助かるんだけど!」
なにやら慌ててセレーネが門番に訴えている。
私たちは街の通行検査を受けていた。
ほとんど他所から来てる人はおらず、
待つこともなくスムーズに検査を受ける事ができた。
観光客とかいないのかしら、こんな大きな都市に?
と私は不思議に思った。
これかけとこ、と呟いてセレーネはサングラスをかけている。
「?」
変装のつもり?
セレーネはこの街だと有名人なのかしら。
「はい、これ通行証」
そう言ってセレーネが衛兵に手渡す。
「はい、確かに。ではお通りください。この街は今色々ありまして、少々閑散としてしまっているのですが、
まぁそれはともかく、お気をつけて。セレスティア様」
セレーネのことを門番は聞きなれない名で呼ぶ。
「セレスティア?」
何の偽名かしら。
「あぁ、この町では占い師として通ったことがあってね。その時そう名乗ってた。気にしなくて良いよ」
セレーネはそれだけしか教えてくれなかった。
こうして四王の一行はセントラル・フィリアに入国したのだった。
街への門をくぐり抜け、大通りを目にすると違和感
を覚えた。
しばらく大通りを歩くと、その違和感の正体に気づく。
そうか、極端に人が少ないのね。
門の衛兵が閑散としていると言っていたことを
フェルミナは思い出した。
その理由はなんとなく想像はつく。
まぁだからと言って何かできるわけではないのが少し心苦しいが。
オルはおお〜、と街中をキョロキョロと見回している。
オルは洞窟暮らしで、滅多に人間の街に
来ることはないから珍しいのだろう。
「?」
途中で武装した冒険者と騎士の集団を見かけた。
何やらものものしい雰囲気で行進している。
海岸の方に向かっているようだ。
何かあったのだろうか。
この街は交易が盛んで、海からも品々を
運搬しているという。
その海岸で何かトラブルでもあったのだろうか?
それに裏道から時折り視線を感じた。
気配から街のチンピラといったところかしら。
治安もあまり良いとは言えないようだ。
異変、とまではいかないが、
街がいつも通りの日常を送っていないことは
明らかだった。
「ま、人がいないと煩わしくなくてかえっていいね〜
さて、レストランはもうすぐそこ、と……ありゃ」
そこは見るからに高級な店でだった。外装は華やかで
国旗が3本上の看板に刺してあり、その中央には
ワイバーンの頭が突き出ていた。
あれ、本物じゃないかしら、店主の趣味悪いわね、とフェルミナは思う。
だが、その店の真ん中には看板が置いてあり、
「この世界が無事なら開店します」
と貼ってあった。
やっぱり、この閑散としているのは私達のせいだったわけね。
世界が無事ならというのは、私たち魔獣四王が世界を滅ぼさなかったら、
という意味なんでしょうね。
私達が集まったことはどうやら思った以上に
世界に影響を与えているようだ。
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この回からセントラルフィリア編が始まります。
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