特別な…
そこは全面ガラス張りの広い部屋だった。
そして真ん中には直視できないほどの光に包まれている人物が立っていた。
「待ってましたよ。矢坂一樹君。」
俺はこの人に待たれていたらしい。
彼の目の前まで行く。
「私はエルゴッドと申します。力を使いこなせてない者に特別な能力を授けることをしてます。力が大きければ大きいほど強力な能力が身につくのですが…。貴方はとてつもないオーラが出ていますね…。これはとんでもないことになりそうです。」
エルゴッドは興奮気味にそう言った。
オーラが出ているらしい。しかもかなりすごいらしい。どうなるんだ?
「しかし、これほどオーラが出ていたら、
エルゴッドは顎に手を当ててそう言った。
横で女…マナが少しニヤニヤしている。
「やっぱり私の目に狂いはなかったのね!」
急に彼女が大きな声で言った。あれ?もっとクールな感じだったような…。
俺は気になったことを聞いてみた。
「すみません、その力というのは一般的にはどのくらいですか?」
するとエルゴッドはニコニコした顔から真剣な顔に変わった。
「普通はオーラは無く、私が能力を授けてから少し体の周りにオーラが見えはじめるのですが、貴方の場合は何もしなくても最初からオーラが出てる。しかも他の人とは比べものにならないほどの。最初見た時、正直引きましたよ。ハッハッハッハッハ。」
エルゴッドは嬉しそうに笑う。
「マナも最初からオーラを放ってたんです。それだけでもすごいのですがねぇ…。」
隣でマナが少し悔しそうにしている。
「わ、私だってオーラくらいは楽勝よ!」
まぁ悔しくなる気持ちは分からんでもない。
他の人より大きな力を持っていたのにそれを簡単に跳ね除けるくらいの人間が急に現れたからねぇ…。
そしてエルゴッドはまた真剣な顔に戻った。
「先程私が能力を授けると言いましたが、基本的には自分自身がどうなりたいか、自分の理想を言ってもらう形になります。そして、自分自身の力が大きければ大きいほどその能力が強力な物になります。
貴方のように力が大きい人は大抵の望みを叶える事ができます。」
これはつまり、能力の良し悪しは自分自身の力次第、ということになるのか。
「それでは本題に入ろう。矢坂君、貴方はどんな能力が欲しいですか?」
こうやっていざ聞かれると難しいなぁ。能力っていっても多分数えきれないほどあるのだろうなぁ。
「アンタならすごい能力が身につくと思うわ。」
マナはそう言った。うん、それはさっきエルゴッドが言ってたね。
どうしようか。適当にしててもなんとかなるような能力にしたいな。
「適当になんでも出来る能力がいいですね。」
言ってしまった。そのまま。
「分かりました。」
エルゴッドはそう言うと、俺の右手を持って何かを伝達した。特に痛みもない。何が変わったとかもない。そして…
目が覚めた。
-----------------------
今日も休みだ。かなり天気がいい。
昨晩見た夢の影響は無さそうだけど、急に何が襲ってくる可能性もある。だって、完全に転生するやつじゃね?流れ的には、俺は何日後かに死んで、どっかの世界に飛ばされて…みたいな感じか?
まぁこれで死亡フラグは回収できたか。
「とりあえず外に出るか。」
俺は外に出た。が、やはり夢のことが気になる。どこか広場のような所に行って能力みたいなのを確かめたい。いくら夢のこととはいえもしかしたら…と思うと確かめたくなる。
車で何分か走らせた後、少し広めの公園に着いた。人は誰もいなく、閑散としている。遊具もシーソーとブランコと鉄棒しかない。
ここなら試しても大丈夫そうだ。
俺は地面に手を向け、力を込めた。
何か起こらないかと。手から何か出てくるか地面から何か出てくるか。
それは一瞬だった。だが、確実に手から解き放たれた。
野球ボールからあの大きさで、黄色と白の中間くらいの色で、凄い勢いで、衝撃波のようなものが一瞬にして地面に穴を開けた。穴の大きさは大体サッカーボールくらいか、それより少し大きいくらい。衝撃波は地面に当たった瞬間に周りが吹き飛ばないくらいの勢いで破裂した。
そして地面に穴が開いた。
そして、段々と込み上げてくる感情。
「なんだこれ…やばくないか!?」
いや、やばいよ!どうするよこれ!
焦りが半端ない。正直ダメ元でやってみたけど、ホントにこんなことになるなんて思わないよ!
マジで力ってあるんだな…そういや、昨日猪が進路を変えたのもオーラのせい?
「とりあえず誰にも話さないでおこっと。」
ぐしゃぐしゃの感情になりつつ、俺は穴が開いた所を土で埋めて、車に戻った。