3話 ひさしぶり
それではどうぞ
それから暫くして、扉が開いた際に鳴る鐘の音が店内に響く。
入り口に目をやると、喜屋が少し息を切らせながら立っていた。
マスターは彼女を見た後、僕の方を横目で見ると。
「いらっしゃいませ。待ち合わせですか?」
そう聞いた。彼女は僕に気がつくと、笑顔を見せて、マスターの方に一つ頷き、こちらにやってきた。
当たり前のように僕の横に座った彼女がにこりと笑いながら話かけてくる。
「茂木、さっきぶり。待った?」
僕は彼女の方を向いて、少しだけ笑うと。
「そうだね。それほどは待ってないよ。」
そう返したのだった。
彼女が注文するのを待ってから、彼女に屋上のことを問いかける。
「で、あれってなんだったの?」
「あれって、嘘告のこと?」
キョトンとした顔で僕の方を見る。
いやいや、このタイミングで話題はそれ以外にはあるまい。
「そう、それ。」
僕は頷く。
彼女は言葉を選ぶためか、少し悩んだ後話し出した。
「えーとね、罰ゲームだったのよ。あいつらがやりたいって言い出してね。負けた人が罰ゲーム。」
「それで喜屋が負けたの?」
彼女は苦笑いしながら。
「そ、あたしの負けで嘘告することになったってわけ。ま、いま思うと嵌められたかも、だけど~。」
僕は少しその意味を考えて。
「負けが決まってたってこと?」
そう聞いた。
彼女はため息を一つついてから。
「たぶんね。」
そう言って、きれいに整った眉をハの字に寄せた。
僕は陽キャも大変だね、と思い。
「御愁傷様。」
そう言っておいた。
僕はもう一つ聞いておきたいことがあったんだと思い出し、彼女に確認する。
「嘘告の経緯は分かったんだけど、なんで僕に教えたの?」
彼女は意味ありげにニヤっと笑みを浮かべると。
「だって、茂木だったら先に言っとけば上手くやってくれそうだったしね。」
僕はため息をついて。
「信頼してくれてありがとう。」
と、心にもない御礼を言った。
「というか、僕じゃなくても良かったんじゃないの?」
それを聞いた彼女は、少しムッとした顔をした後、前を向いて目を閉じる。
「だって、茂木だったら私とMINE交換してなさそうだし、バレそうにないじゃん。(……それに嘘告でもあんた以外に誤解されたら困るでしょ。)」
最後の言葉は口の中でぼそぼそ言う喜屋。
まあ、確かに僕だったら喜屋も連絡とれるとは思わないか、とそう納得することにした。