2話 ネタばらし?
それではどうぞ。
すると、さっきまでの様子を見ていたのか、いつも彼女の席に集まっている陽キャの男女数人がバカにしたような笑いを上げながら出てきた。
「あはは、茂木田、本気だと思った? そんなわけないだろ。」
「嘘告だよ、おまえなんかにアンナが告白するわけないだろ。」
この二人は、たしかテニス部のイケメンだったか。
いや、嘘告って知ってたし、そう思いながら、あははっと乾いた笑いをあげる。
「さっきの声、ウケる。マジになってるし。」
「ね、アンナ行こ? 」
そう言って、苦笑いを浮かべている喜屋を連れていくギャル二人。喜屋の容姿に勝るとも劣らない二人。そして、彼女達が屋上から出ていった後を男達もついていった。
後に残されたのは僕一人。嵐のように去って行った扉の方を見ながら。
何だったんだろう、あれ。
嘘告で騙そうとしている人を騙して、こっそり笑う遊びだろうか……。
いわゆる逆ドッキリ。理解できない高尚さだと思った。
「なんか疲れたな、コーヒーでも飲んで帰るか。」
僕は帰りに行きつけのカフェに行くことを決め、一人屋上を後にしたのだった。
◇
雑居ビルが立ち並ぶ裏どおりを進んだ先、入口が分かりにくい、その店に入る。
少し薄暗く、しかし、アンティークな家具や机、椅子が並ぶその店には、分かりにくい場所にも関わらず、パラパラと客が入っていた。
僕が入ってきたのを見て、マスターが僕に声をかけてくれる。
「いらっしゃい。どこにする?」
僕は周りを見渡した後。
「じゃあ、カウンターで。」
そう言ってマスターの前に座った。
「今日はどうする?」
「コーヒーだけでいいや。」
ケーキも捨てがたいが、食べるには少し遅い。
僕はコーヒーだけにした。
こんな高校生が来ないようなカフェの常連客になっているのには、深い訳があるわけではない。単純に両親がこういった店が好きで小さい頃から連れていかれたからだ。
コーヒーを待っていると、スマホが震える。
今日はよく震える日だ。一年分がまとめてきてるんじゃないか。
そんなことを思う。
スマホを見ると、MINEのメッセージ。送り主は喜屋だった。
《いま、どこにいる?》
うーん、これは帰りにどこか寄っているか確認のメッセージだろうか。そう考えていると。
《ねえ、教えてよ》
仕方なく、この店の名前を送る。
《オーケー、待っててね》
そんなメッセージがすぐに帰って来た。
まあ、彼女もこの店を知っている。忘れてなければ、だが。この様子だと、覚えているんだろうか。中学時代に連れてきたことがあるのは数回だけだと思ったけれど。
それにこの店で僕以外に高校生を見かけることはなかったから頻繁に来ているってこともないだろう。
それに、まさか、あいつらと連れだって来るんじゃないんだろうな。……逃げようかな。
そんなことを考えていると。
《撒いていくから逃げないでね》
仕方ない待つとしよう。