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1話 高尚な遊び

恋愛ものを読んでいると書きたくなり、書いてみました、が難しい。恋愛、ラブコメを書いている皆さん、尊敬します。それではどうぞ、はじめは連続投稿です。

世の中には、嘘告と呼ばれる陽キャのみに許された高尚な遊びがあるらしい。


なぜそんなことを考えているかって?


今まさに僕の目の前で、その嘘告が行われようとしているからだ。


僕は茂木田 ワタル、高校一年生。

陰キャ、陽キャの何れでもなく、クラスにひとりはいる、全く目立たない人間。卒業までに隣に立っても気付かれないくらいの存在感ゼロを目指すつもりだ。

目の前にいるのは、喜屋 アンナ、同じクラスの陽キャで読者モデル、いわゆる読モもやっている、スクールカーストトップで学年一の美少女だ。


というか嘘告って、ばれたらダメなんじゃないか? そんなことを思いつつ、僕は悟りも開けるんじゃないかとばかりの凪のような静かな心で少し頬を赤らめた彼女をぼーっと見返す。


そして、そもそもの発端は午前の授業中だったか、なんてことを思い返していた。



窓の外から入る初夏の日差しの中、油断すると眠りに誘われる教師の呪文を聞いていると、ズボンのポケットに入っているスマホがブルリと震えたのに気がついた。


とはいえ授業中、スマホを手に取るわけにはいくまい。

授業はとりあえず寝ずに聞く派な僕はそれを無視して放っておくと、早く手に取れというように、続けざまに何度か震える。


仕方なく、教師に見つからないように、こっそりとスマホを取り出して見てみると、コミュニケーションアプリのMINEにメッセージが入っていた。


送り主を見て、少し驚く。それは後ろの席に座っている、ミルクティーカラーをした髪をセミロングにしているギャルで学年一の美少女、喜屋 アンナからだった。


そもそもなぜ彼女が僕のアカウントを知っているかというと、高校になってから交換したわけではない。


彼女とは同じ中学で、一度だけ同じクラスになったことがあり、たまたまいっしょの委員になる機会があり、連絡のために交換したのだった。


なので、メッセージが届いたのは約2年ぶりか……。


そんなことを思いながらメッセージを見る。

ちょっと、はやく、見ろ、等といった言葉の先を辿っていくと、一言。


《放課後、嘘告よろしく。うまくやってね》


そう書かれていた。

僕は意味が分からずにポカーンとして、それを見た。

そうなっても仕方のないことだと思う。


あの後、華麗に既読スルーした僕は、放課後、帰る準備をしている時に、皆の前で喜屋に呼び止められ、そのまま屋上に連れていかれたのだった。


そして、今に至る。



目の前で、喜屋が話しかけてくる。


「あの、茂木田くん、私、あなたのことがずっと……。」


ちなみに、僕はこれまでに彼女に茂木田と呼ばれたことはない。さっきのが初めてだ。


普段、というか、昔は短くして茂木と呼ばれていた。呼んでいたのは彼女だけだが。


あっ、別のことを考えているのがばれたのか、彼女が少しムッとした顔になる。


気を取り直したみたいで、彼女はそのまま続けた。


「好きでした。付き合ってください!」


そう言って両手を胸の前に持ってきて頭を下げる。

上手くやれ、というのは、おそらく合わせろってことだろう。


なので僕は死んだ魚のような目をしながら彼女を見ると。


「ハイ、ヨロコンデ。」


そう答えたのだった。

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