一話 水着回は唐突にやってくるもの
※今回の章は色々と「ん?」と思うところがあるかもしれません。ご注意ください
唐突だが、夏休みに突入した。
そして、篤史は目前にある海を眺めていた。
「おお、凄いなこれは……」
そんなことを呟く篤史。第三者からしてみれば、海如きで、と思われるかもしれないが、しかし、篤史の言葉は当然のもの。
何せ、『ここ』はただの海ではないのだから。
「篤史さーんっ!!」
ふと名前を呼ばれ、振り返る。
そこには、同じく水着を着た友里がこちらに向かって来ていた。
「お待たせしましたっ」
「お、おう……」
到着した友里に対し、相づちする篤史。
彼女が着ている水着はいわゆる薄い赤色のワンピース水着。腰のところにフリルがつけられており、その上から白いパーカーを着ている。
本来、ワンピース水着はビキニと比べて、露出度が少ない。加えて今の友里はその上にパーカーを着ている。故に、余計に肌の露出は少ないはず。
……なのだが。
「何ですか、篤史さん。私の水着を見て、興奮しました?」
「おいこら待てや。流石に女子がその発言はダメだろうが」
などとツッコミを入れつつも、実際、目を奪われていたのは事実であった。
特に、胸部辺りに。
(いや、まぁ普段からそれなりにはあるなと思っていたが……こうしてみると、それ以上だなオイ)
まさか、友里が『着痩せするタイプ』だったとは、予想外である。
などという考えを振り払うために、篤史は話題を変えた。
「っつーか、いつも以上にテンションが高いな」
「あったり前ですよ。いやー、夏の海って正直、人が多くてあんまり好きじゃないんですけどねー。特に、変なテンションの人とかいますし。そして、そういう人ほど絡んできますし……でも、『ここ』だけは例外ですっ。存分に遊びつくしてやりますっ!!」
「お、おう。そうか……」
妙なテンションと共に宣言する友里。
その『表情』はどこまでも活き活きとしていた。
(ったく……いつもの無表情はどこにいったのやら)
確かに『ここ』は特殊な場所ではあるが、まさかここまで変わるとは、思ってもみなかった。
「にしても、目立ってるなお前」
などと言いつつ、周りを見渡す篤史。そこには他の客たちが、こちらをチラチラとみている姿があった。
「あー、確かにそうですね……まぁ、『ここ』では私の隠密スキルも発動できませんし。そこだけがネックですよね……あっ、でもあれです。篤史さんがずっと隣にいてくれたら、変な奴も来ないかと。そういうわけで、私の傍を離れないでくださいね」
「それはこっちのセリフだ。目を離したうちにどっか行くんじゃねぇぞ。遊園地の時みたく、迷子になったら、『ここ』じゃあ探せないんだから」
「うぐ……言い返したいけど、事実だから反論できない……だ、大丈夫ですよ。あの時は『鬼面ヤイバー』のイベントをやってたからであって、それ以外のモノにつられて私が単独行動をとるわけが―――」
「ようやく見つけた。いつまでそんなところにいるつもり?」
突然と話しかけられた二人。
振り向くと、そこには、黒いビキニを着た霧島澄が腰に手を当て立っていた。
「げっ」
「……白澤さん。貴方が私にあまりいい感情を持ってないのは知ってるけど、その顔は流石にないんじゃない? というか、貴方、そんな顔もするのね」
「しょうがないじゃないですか。『ここ』だといつものように感情を抑えられませんし。なら一層、はっちゃける方向にシフトしようかと」
「……それはポジティブと言うべきなのかしら?」
白澤のマイペースっぷりに困った表情を浮かべる澄。そんな彼女は、篤史の方に視線を向け、ムッとした表情を浮かべた。
「何見てるの? 視〇のつもり?」
「おいこらお前も初っ端からとんでもないこと口走ってんじゃねぇよ」
「だって、さっきからこっちのことガン見してるんだもの。いやらしいことを考えてるって思うのは当然だと思うけど?」
「いやらしいかどうかはさておき、気になるのは当然だろ……」
澄の格好は、先も言ったように黒のビキニ。特にこれといった特殊な様式ではなく、単純な代物。だが、それを澄が着るとなれば、それはもうただのビキニではなかった。
前のバニーガールの時もそうだが、彼女はとことんまでスタイルがエロい。スタイルが良いではなく、色っぽいのだ。
ゆえに、篤史でなくとも、他の男なら誰でも彼女の姿には視線を向けるのは明白だった。
「はぁ……まぁいいわ。それより二人とも、委員長が向こうで待ってるから、早く行きましょう。あんまり待たせると、小言コースに突入するから」
「うげ、それはやばいな。委員長、小言コースに入ると中々止まらないからな」
「まぁ、それでも誰かさんのマシンガン的なトークよりはマシなんじゃない?」
「おほほほ。霧島さん。それは一体誰のことですかね。ああ、もしかして、まだ私の『歌』を聞きたいとか?」
「……その脅しは『ここ』では通用しないわよ」
「ええそうですね。でも、『ここ』から帰った後は、別でしょう?」
「っ、ふ、ふん。べ、別に、好きにすれば? それより、ほら。早く行くわよ。でないと、本当に委員長が怒りだすかもしれないから」
そういいながら歩いていく澄に対し、二人は後を追うように歩いていく。
そんな中、ふと篤史は空に輝く太陽、そしてそれに照らされる海を見ながら、一言。
「ほんと……リアルすぎるだろ、この『ゲーム』」
そう、言い放ったのだった。
三章スタート。
そして、色々とおかしな点があると思いますが、まぁとりあえず、気長に読んでください。
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