四十七話 オチが同じでも効果があるなら仕方ないよね
【重要】
※色々と考えた結果、少し改稿しました。よろしくお願いします。
一方その頃。
楓たちのいるメイド喫茶。そこから少し離れた路地裏に一人の男がいた。
男はメイド喫茶にいる楓を待ち伏せしている。その理由は至って単純。自分をここまで追い詰めた楓に報復するため。
だがしかし。
『全く、懲りない人ですね』
そんな声が、男の頭に響き渡る。
「な、何だ、声が、頭に……」
『この程度のことで一々挙動不審にならないでください、二宮徹さん』
謎の声に、自分の名前を言い当てられたことで、男―――徹はさらに目を見開いた。
「お、お前は……一体……」
『私ですか? さぁ。誰なんでしょうね。そこら辺は貴方が好きに解釈してください。ただ……一つ、言えることがあるとすれば、私は貴方の敵である、ということです』
貴方の敵。
その言葉から、相手が自分に好意的ではないことを徹は理解する。
しかし、それ以上に脳内に声が聞こえてくるという状況に、未だ頭が追い付いていない。
(な、何なんだ、この状況は……!!)
困惑する徹。それも当然の反応と言えるだろう。知らない声がどこからか聞こえてくるとか、そういうものではない。なぜかは知らないが、この声が直接脳内に伝わってきているのだと理解しており、だからこそ尋常ではない状況なのだと嫌でも分からされてしまう。
そんな徹を他所に、謎の声は問いを投げかけてくる。
『まぁ、一応理由だけは聞いておいてあげましょう。貴方は何故、ここにいるのですか? まさか、広瀬楓さんに何かやらかすためとかではありませんよね?』
「な、何でそれを……」
『はぁ……まぁそうだろうとは思っていましたが、実際に聞くと呆れてしまいますね。っというか、何でそんなことを?』
「何でだと……!? 決まってるだろ!! あいつのせいで……あいつのせいで、加奈は……!!」
『はぁ……まだそんなことを言ってるんですか?』
徹の言葉に対し、謎の声は大きなため息を吐きながら、続けて言う。
『貴方の妹さんから事情は聞いているはずです。井上加奈が広瀬楓さんに何をしようとしていたのか。彼女が警察の厄介になったのは自業自得。っというか、貴方は彼女に利用されたってことも、もう分かってんでしょう? 自分がもっと上の地位にいけるように、貴方との婚約をとりつけたって』
「嘘だ……そんなの嘘に決まってる!! あんなの、妹が言ってるだけだ!! そうだ。あいつは昔からあの女と仲が良かった。だからありもしない嘘をついて、加奈を……」
謎の声の話を、しかし徹は一切聞き入れていない。耳には入っているが、全く信用していなかった。己の中にある価値観と正義感で判断しており、だからこそ、他人の言葉など彼には通用しない。
徹の中では、未だに加奈は被害者であり、楓は加害者。自分の妹から全てを聞いたというのに、それを未だに信じられずにいるのが何よりの証拠。
そして、だからこそ、本当に愚かとしか言えない。
『いやはや……貴方の妹さんがどれだけ苦労してきたのか、少しばかり理解できた気がします。確かに、これはもうダメですね』
「何を……」
『というか、貴方、こんなところにいていいのですか? 確か、正式に親から勘当されたらしいじゃないですか。今の貴方は二宮家の長男でもなければ、大企業の後継者でもない。正真正銘、どこにでもいるただの間抜けな男。もう貴方が何か問題を起こしてもどうにかしてくれる人はいないというのに』
「……っ!!」
その言葉に、奥歯を噛みしめる徹。
そんな彼に対し、謎の声は続けて言い放つ。
『何ですか? 本当のことを指摘されたことがそんなに悔しいと? それとも親から勘当されたことに腹を立ててるとか? どちらにしろ、それは全部貴方の間抜けさが招いた結果。そもそも、貴方がちゃんと広瀬楓さんと向き合っていれば、こんなことにはなってなかったんでしょうが……しかし、それももう後の祭りと言うやつですかね。とは言っても、こんな頭お花畑な人と一緒にならずに済んだのですから、広瀬楓さんにとっては幸運だったのかもしれませんが』
「こっの、言わせておけば……!!」
怒りを露わにする徹であったが、しかしこの声の主がどこにいるのか、全く分からないがために、彼は怒りのぶつけどころがなく、周りをきょろきょろとみる他なかった。
『まぁ、貴方が人の話を聞くとは最初から思ってませんが……一応、最後の忠告です。金輪際、もう二度と彼女に近づかないでください』
「はっ、それを聞いてはいそうですかと言うとでも思ってるのか!!」
『あー、うん。まぁそうですよね。分かってました。ここまではお約束というか、一応聞いただけなので……それじゃあ、もう二度と彼女に纏わりつかないよう、容赦なく、思う存分いかせてもらいます』
何を……と問いを投げかけようとする徹だったが、しかし最早謎の声はそんな彼の言葉など聞いてはいない。
『それでは―――アニメ「進〇の巨〇」、全OPメドレー、歌わさせてもらいますっ』
謎の声がそんな言葉を言い放った次の瞬間。
「ぎ、がぁ、ァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
路地裏に、間抜けな男の声が響き渡ったのだった。
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