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一話 借りはすぐに返さなければならない

『一……三……五……七……九……十一……十三……十五……』

「なにやってんだ?」

『いえ、心を落ち着かせようと、素数を数えようと思いまして……』

「いや、お前のそれ、素数じゃなくて奇数だろ」

『え? 奇数と素数って同じ意味じゃなかったでしたっけ?』

「そこからか……」


 色々とツッコみを入れたい篤史だったが、流石の彼も今はそんな余裕はない。

 現在、二人はまた呼び出しをくらい、校長室へとやってきていた。

 この場にいるということ。それだけで、誰に呼ばれたのかは、一目瞭然だろう。


「―――すまない。待たせたようだ」


 などと言いながら、校長こと沢城が入室してきた。

 一礼する二人を見た後、沢城は即座に自らの仕事机に腰を掛けた。


「さて。早速だが、例の噂はどうやら終息したらしいな。私が持ってきた情報が役にたった、とみていいだろうか」

「ええ、その節はありがとうございました」


 正直なところ、沢城の情報が全てのきっかけになった、と言っても過言ではない。

 あの情報がなければ、篤史は澄が犯人であること、そしてその動機を知ることができなかったのだから。


「しかし、君も変わっているな。彼女に対し、何の罰則も与えないよう言ってくるとは、正直予想外だった。てっきり、彼女を転校させてほしい、と言ってくるものだとばかり思っていた」

「それはちょっと考えましたけど、根本的な解決にはならないと思ったので。転校したところで、霧島が何もしてこないとは限りませんし」


 悪いことをした相手を追放する……昔からよくある話であり、手段でもある。が、復讐のために動いてきた彼女が、別の学校に転校させられた程度で引くとは篤史には到底思えなかった。

 ……まぁ、何よりも予想外だったのは、あれだけ用意周到だった彼女が、友里の脳内リサイタルを一度聞いただけで、全てを投げ捨てたという点なのだが。


「なるほど。確かに、そう考えれば、近くに置いておく方がまだマシ、というわけか。まぁ、霧島君は柊君が面倒を見ているのだろう? ならば問題はないだろう……何にしても、私が提供した情報で君は事を解決へと導いた。その点は間違いないな?」

「えっと、まぁ、はい」

「ならば、今度は君が私に力を貸してはくれないだろうか」


 それはつまり、借りを返せ、ということか。

 いや、確かにおかしいとは思っていた。柊も言っていたが、一生徒に校長が手助けをするとは、普通のことではない。何か裏があるのかも、という予想はあったものの……まさか頼み事をしてくるとは。


『勝手に情報を与えておいて、借りを返せって……何か、やり口が、ヤ〇ザっぽいと思うのは私だけでしょうか』

『やめろ。実際俺としては助かってんだから』


 などと脳内会議をしていると、沢城は机の中から大きな封筒を取り出した。


「今度、我が校に転校生がくる」

「この時期に、転校生ですか?」

『珍しいですね……』


 今はもう六月末。一か月もしない内に、夏休みが始まってしまう。

 そんな時期に転校してくるというのは、少々奇妙だと篤史は思った。


「少し込み入った事情があってな。転校がこの時期になってしまった。ただ、その転校生は登校を拒否している状態だ。しかも、家に引きこもっているわけではなく、昼間から毎日、どこかへ出かけているらしい。ご両親も心配しているのだが、これが一向に耳を貸す気配もない。しかも、どこへ出かけているのかすら分からない。何度か母親が尾行したようだが、いつも必ず見失ってしまうという話だ」


 いわゆる、不登校という奴か。

 しかし、毎日どこかに出かけている、となれば引きこもりというわけではないらしい。とはいえ、学校に行くことを拒否し、親に黙ってどこかに行っているとなれば、あまりよくない場所、と考えるべきか。

 ただし、篤史たちにとっての問題はそこではない。

 問題なのは、そのことを校長が自分たちに教えてきた、という点だ。

 嫌な予感がする……そんなことを篤史が思っていると。


「そこで、君たちに転校生がどこに行っているのか、探ってきてもらいたい。できることなら、学校に来るよう説得もしてもらいたいと考えている」

『え゛っ!?』


 今、女子がしてはいけないような、濁った言葉がテレパシーとして流れ込んできた。

 しかしながら、今回に限って言えば、篤史も同様な反応をせざるを得ない。

 まさしく予感的中。

 しかし、そのままはいそうですか、と受けいれるわけにはいかない。


「あの、校長先生。何で、俺達なんですか? いや、そもそもどうやって探せと? 俺達は別に、人の捜索とか尾行のプロというわけでは……」

「いいや。君たちならば……特に、山上君。君になら、きっと彼女を見つけることができるはずだ」


 なぜならば。


「彼女は君たちと同じ、超能力者なのだから」


 さらっと。

 さも知ってて当然かと言わんばかりの口調に、篤史と友里は同時に驚くほかなかったのだった。

そんなわけで、二章突入です!


面白い・続きが読みたいと思った方は、恐れ入りますが、感想・評価の方、よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 超能力部創設だぁー!
[気になる点] 美人校長も何かの能力者なのかな。 超能力者を見分けることが出来る超能力じゃない能力の保持者(ヤヤコシイ)とか・・
[一言] これ、校長は篤史の両親と知り合いor友人でその伝手で知ってたりしたのかな?
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