四十二話 解決への糸口は唐突にくるもの
委員長への反応、凄いですね……
あと、信じてもらえないかもしれないですけど、自分フルメタは未だにみたことないです……。
「―――で? 本当に警察、呼んだのか?」
篤史の問いに、柊は苦笑しながら答える。
「いいや。あれはブラフだ。警察を呼べば、大ごとになるからな。そうなれば、『黒幕』の思う壺だろう?」
警察がくれば、どうしてもことは大ごとになる。そして、それは教師陣をつれてきても同じこと。そして、大ごとになれば、それは噂となってしまう。そして、噂になれば、また『黒幕』が好き勝手に内容を書き換えて広めるのは自明の理。
篤史が斎藤に何も言わず、柊を頼ったのはそのためだった。
「それで? どうだった?」
「ああ、お前の予想通りだよ」
言いながら、柊は親指で後ろを指す。
そこには、一人の男が壁によりかかりながら、気絶していた。
「あ、あいつは……?」
「お前達のことを隠し撮りしていた。恐らくは、山上の暴力行為の証拠を撮ろうとしていたんだろう。そうすれば、また山上に対しての噂を広められるからな」
そして、それこそが、今回の『黒幕』の目的だったのだろう。
佐山と不良グループ、どちらと喧嘩をしたところで関係ない。篤史が暴力をふるった、という事実があれば、『黒幕』にとっては好都合なネタとなる。しかし、そのためには証拠が必要であり、それを撮る人間がいるであろうと、何となく予想していた篤史は、柊に頼んで協力してもらっていた、ということだ。
「悪いな。さっきの不良についてもそうだが、マジで助かったわ」
「別に構わない。お前が、暴力以外で解決するために、俺に頭を下げたんだ。そこに俺はお前の成長を見た。だから協力した。それだけだ」
そう。以前の篤史ならば、きっと今回も暴力で物事を解決していただろう。佐山にしても、不良たちにしても、己の力のみで返り討ちにする。きっとそれは可能なことだっただろう。だがしかし、それではダメだ。そんな方法では、誰も救われないし、何より『黒幕』の思う壺。
ゆえに、今回、彼は他人を頼ったのだ。
……まぁ、その頼った相手が予想の百倍以上、優秀だったことは、嬉しい誤算と言えることだが。
「とは言っても、あいつから何か聞き出すことはできないだろうな。さっき、気絶させる前に確認したが、ただ雇われたらしい。しかも、雇い主とはネットを通してしか連絡していないから、会ったことはないと言っていた。そして、恐らくそれは本当だろう。これまで尻尾を掴ませないようにしてきた奴だ。こんなところでボロを出すとは思えない」
それはそうだろう、と篤史は思う。
先ほどの不良たちを撃退した柊の情報収集能力は、本物だ。正直、怪物レベルと言っていい。そして、そんな彼に未だ正体を掴ませていない相手となれば、この程度のことで尻尾が出るとは到底思えない。
「ちなみに、佐山。お前、どうして山上とタイマンを張ろうとしたんだ? もしかして、誰かにそうした方がいいとか、そそのかされなかったか?」
「え、いや、そんなことは……いや、言われたような気も……でもあれ、誰にだ? いや、そもそも俺、何で山上相手にあんだけ怒ってたんだ……?」
「なるほど……まぁ、予想はしてたことだ」
どうやら佐山からもあまり情報は聞き出せないらしい。
彼がただ単に利用されていたのは、明らか。そして、そんな彼に対し、何かしらの尻尾をつかませるような情報を伝えておくわけがない。
それでも、今回の件で分かったこともある。
(これではっきりしたな……翼の件も、今回の『黒幕』と繋がってる)
唐突に現れた不良グループ。前回と同じ展開。これが偶然の一致、などと楽観的にとらえる程、篤史も馬鹿ではない。
だが、現状分かることと言えば、それくらい。
何かもっと手掛かりを掴めると思って、今回わざと相手の誘いに乗ってはみたものの、収穫はこの程度、ということか。
「っと、それから、これをお前に渡しとくぞ」
などと思っていると、柊は鞄の中から大きな封筒を取り出した。
「これは?」
「ここに来る前、校長から渡されたものだ。お前に渡してほしい、と言われてな」
言われて思い出す。
そういえば、沢城が色々と調査してみる、と言っていた。つまり、これはその調査結果ということだろう。
そう思い、篤史は封筒をあけ、中の書類を見た。
そして。
「―――お、い。まさか……そういうことだったのか……?」
書かれてある調査内容に、篤史は唖然としていた。
「どうした。山上」
「柊……」
未だ手口は分からない。方法も分からない。いや、そもそも沢城が調べた調査内容が間違っているという可能性もある。
だが、もしも調査内容が正しければ、『黒幕』がなぜ篤史を陥れようとしたのか、一応の説明はつく。
確かに、そういうことならば、『黒幕』が篤史を憎む理由も分からなくはない。
だからこそ。
「多分―――犯人が分かった」
彼は、そう断言したのだった。
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