四話 ボッチ同士の対戦ゲーム
次の日。
「まじかよ、雨か……」
昨日の約束通り、旧校舎のベンチで昼食を食べようと思った矢先、空から落ちてくる雫に、篤史は舌打ちする。
まぁ外で食べようとすれば、こうなる可能性も考慮すべきこと。それを怠った自分のミスだ。
しかし、そうなればどこで食べようか……などと考えていると。
『おーい。そこのお困りな強面な人ー』
唐突に、昨日と同じく頭の中に声がしてきた。
『上ですよ、上』
言われ、篤史はふと上を見上げた。
そこには、二階の窓からこちらを見下ろす友里の姿があった。
上半身を外に出し、手招きする形で彼女は続けて言う。
『中に入ってください。タオル、貸しますよ』
友里の提案に乗り、篤史は彼女がいる部屋へと向かった。
ふと、外を見ると雨の勢いは先ほどよりも増しており、強い雨音が聞こえる。もしも、あのままあそこにいたらと思うと、篤史はずぶ濡れ状態だっただろう。
ゆえに、友里には感謝している。
しているのだが……。
「……いいのかよ、俺を入れて」
『構いませんよ。まぁ、超能力者同士ということで』
タオルで濡れた髪を拭きながら問う篤史に、友里はあっさりとした言葉で返す。
が、直後、不敵な笑みを浮かべながら、頭の中に言葉を送り込んできた。
『そ、れ、に。ただで雨宿りさせてあげるわけじゃないですしね』
「……成程。交換条件か。で? 俺は何をすればいい? 焼きそばパンでも買ってくればいいのか?」
『いや、そんなこと頼みませんしそもそも雨の中買いに行かせるとか何ですか。私は鬼ですか』
などとツッコミを入れるものの、相変わらず、無言のまま。
表情は少し変わるものの、口は一切動かさない。だというのに、頭に流れ込んでくる言葉の数々は何ともお喋り好きの口調そのもの。
見た目と中身が全く別物であり、だからこそ、物凄い違和感を感じざるを得なかった。
『やってもらうことは、これですよ』
「……ゲーム?」
首を傾げる篤史に対し、友里は自分の鞄からゲーム機を二つ取り出していた。
そして、それと同じく取り出していたのは。
「これは……日曜朝にやってる鬼面ヤイバーのゲームか」
『そうです! いやぁ、これで友達と対戦するの、夢だったんですよねぇ』
「いや、そもそも対戦格闘ゲームって、二人でやるもんだろ。何で友達いねぇのに買ったんだよ。っつか、何でゲーム機二つもってんだ?」
『……察してください』
「……もしかして、いつでも誰とでも対戦できるようにゲーム機は二つ常備してるとか?」
『だから、察して、くださいと、言いました、よね!!』
無表情のままだが、頭に流れ込んでくる言葉と、体から発せられる圧が凄い。
どうやら彼女にとっては地雷のようであるため、即座に話をすり替える。
「つーか、あれだな。学校にゲーム機って、珍しい校則違反だな」
『えー。今時これくらい誰だってやりますよ。それこそ、スマフォにゲームアプリをダウンロードしてる子なんてそこら中にいますし』
「だからこそだろ。わざわざゲーム機を持ち込むリスクを冒してまでやることじゃないだろ」
昔はともかく、今の時代、スマフォを学校に持ってくるのは当たり前だ。そして、その中にゲームが搭載されてあれば、そちらで遊ぶのは常識。
わざわざ、先生に見つかるリスクを背負ってまでゲーム機を持ち込もうとするのは酔狂と言えるだろう。
「でもま、いいぜ。俺もこのゲーム、嫌いじゃない」
『おや? その反応、もしかして山上さんもこのゲームをお持ちで?』
「昔のタイプをな。最新作は持ってないが、鬼面ヤイバーは小さい頃はファンだったからな。最近のは見れてないが、昔のキャラが使えるのなら、やってみたいし」
『ふふーん。よろしい。ですが、私は初心者だろうが、経験者だろうが関係ありません。やるからには本気です。負けたからって、泣かないでくださいよ?』
「へいへい」
友里の言葉に対し、適当な返事をする篤史。
学校でゲームをするというのはどうかと思われるが、それはこの際置いておこう。それに、これが雨宿りをさせてくれる条件だというのだから、篤史には断る権利はない。
ゆえに、純粋に自分も楽しもう。
そう思っていたのだが……。
【YOU WIN】
『へ、へぇ~。な、中々やりますね。でも、次は負けませんから。覚悟してくださいね』
【YOU WIN】
『い、今のは、本気のキャラじゃないですから! 次はマジでいきますからね、マジで!!』
【YOU WIN】
『くっそぉぉぉ!! 何で勝てないんですかぁ!! どうして私のブレードが負けるんですかぁ!!』
【YOU WIN】
『……………………ぐすっ』
あまりの連敗続きで、最後には涙を浮かべる友里。
本当に自信があったのだろう。だが、哀しいかな。CPUと戦うことだけをしてきたせいで、他人と戦うことに全く慣れていない彼女の攻撃はあまりにも単純で隙が多かった。
そして、そんな彼女に対し、篤史も大人げなく勝ち続けたことに罪悪感を覚えたからこそ。
「あー、そのー、なんだ……すまん」
とりあえず、謝っておくことにした。
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