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三十二話 校長室で緊張するのは当たり前

「失礼します」

「し、失礼します」


 言いながら、篤史たちは校長室へと入っていく。

 中にいたのは、椅子に座っている一人の女性。

 長い黒みがかった藍色の髪を、後ろで縛っており、服装はぴっしりとしたスーツ。加えて、目つきが鋭く、ある種怖いとさえ思えてしまう。

 彼女こそが、この学校の校長・沢城葵である。


「来たか。座り給え」


 言われ、ソファに腰掛ける二人。その心中は、先ほどとは比べ物にならないほど、緊張していた。


『うっわ、いつ見てもすっごい美人ですよね、うちの校長……でも、目つきが怖いので、めっちゃ苦手なんですけどね』

『全面的に同意だ』


 沢城葵。三十代とは思えない程の美貌の持ち主であり、若き校長。

 しかし、その雰囲気は冷徹のそれであり、目の前にいるだけで、もの凄い圧を感じてしまう。具体的には、氷の刃を突きつけられているような、そんな感覚だ。


「さて。君の、いや、君たちの現状は聞いている。妙な噂に振り回されていると。この学校を預かる者として、甚だ遺憾だと思っている」


 しかし。


「一方で、個人的な見解を言わせてもらうのなら、山上君。君の対応にも問題はあったと私は思っている。そもそも、君が起こした乱闘事件……失礼、過剰な正当防衛が、今回のような事態を引き起こした、というのは自覚してほしい」

「え、でも、それは……」

『それって、篤史さんのせいじゃないじゃないですか。篤史さんは襲われた被害者で……』

『いや、白澤。いいんだ』


 テレパシー内で篤史は友里を制止する。

 彼女が自分のことを思ってくれるのはありがたい。だが、校長の言い分は全てが間違いというわけではない。むしろ、正論だと言えるだろう。


「……俺があの時、喧嘩じゃない道を何とかして見つけ出していれば、確かにこんなことにはなっていなかったかもしれません。どうにかして逃げて警察に電話したり、交番にかけこんだり、話し合いで解決すればよかった。いいや、そもそもあの女が何かしかけてくることを考えて対処をしておくべきでした。そうすれば、誰も怪我をせずに済んだとは思っています」


 あの時、篤史には逃げるという選択肢があった。しかし、彼は売り言葉に買い言葉という状況で頭に血が上り、襲い掛かってきた連中を一網打尽にしてしまった。

 結果、今回の噂の火種を作ったのは間違いない。


「それを自覚しているのなら、まぁいいだろう……とはいえ、私もあの件について、何が正解だったのか、それを説くつもりはない。現場にいなかったんだ。もしかすれば、君がとった行動が正しかったのかもしれんからな。だが、なるべく暴力沙汰は控えるように心がけてくれ。君自身のためにも」

「はい……なるべく、そうします」


 篤史の答えに、沢城は「よろしい」という言葉を頭につけた上で、話を続ける。


「今出回っている噂だが、学校側としても、このような事態をこのままにしてはおけない。今回の件は、斎藤先生に一任しているが、校長としても色々と調査はしてみるつもりだ。故に安心しろ、とは言わないが、君たちの学校生活に支障がでないよう、心がけよう―――話はそれだけだ」


 沢城の言う通り、話はそれで終了。

 その後、篤史たちはすぐさま、校長室を後にしたのだった。





『いやぁ、何というか……めちゃくちゃ緊張しました……』

「俺もだ……」


 校長室を出た二人は、そのまま下校し、帰路についていた。


『いや、人を見かけや雰囲気で判断しちゃいけないってのは、分かってますよ? それこそ、その被害にあってる私たちですから、それがどれだけ嫌なことなのかは十分に理解しています。けど、けどですね……あの圧は、ちょっと無理です』

「美人で綺麗なのは確かなんだがな……あの鋭い視線と口調は、正直、いつまで経っても慣れる気がしないな……」


 氷のような視線と口調。きっと沢城の中では常日頃から使っているものゆえ、当たり前なのだろうが、しかしあれに真正面から耐えられる人間は、きっとそうはいない。


『でも、校長先生まで出張ってくるとなると、いよいよ大ごとになりそうですね』

「ああ……ただ、だとしても、噂を流した奴を見つけられるかどうか……いや、そもそもにして、見つけたところで、どうしたもんか」


 噂を流した人物。それが誰なのか、何故こんなことをしているのか、それは確かに篤史も気になるし、知りたいと思う。

 だが、その手掛かりは一切ないときた。柊の言い分では、きっと黒幕がいるだろうとのことだが、しかし、どうにもその尻尾を隠すのがうまい相手らしい。噂を流したであろう者たちが、全員それを誰から聞いたのか覚えてないと言う程なのだから。

 などと考えていると。


『あっ、そのことなんですけどね、篤史さん。私、斎藤先生や委員長の話を聞いて、分かったことがあるんです』

「分かったこと?」


 言うと、友里はふふん、と鼻をならしながら、人差し指を一本たてた。

 そして。


『今回の件―――ずばり、犯人は、超能力者なんですよ』


 そんなことを言い放ったのだった。

最新話投稿です!


面白い・続きが読みたいと思った方は、恐れ入りますが、感想・評価の方、よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 校長も超能力者説
[一言] 本編すたーと
[良い点] ポンコツ可愛い [一言] (`・ω・´)「この噂には超能力者の陰謀が隠されている」 ΩΩΩ<な、なんだってぇー!?
感想一覧
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