十七話 研究報告書(仮)
※今回出てくる「宗教団体」はあくまで、この物語の中の設定です。
実際の団体とは何の関係もありませんので、ご注意ください。
『研究報告書(仮)』
『この世に超能力があると信じる人々は、少ないが確かに存在する』
『それは自分がそうであるというパターンと、他人がそうであるというパターンの二つに分かれ、私が集めた情報を整理すれば、圧倒的に後者のが多い』
『前者の場合、そのほとんどが思い込みや妄想であり、その原因として考えられるのは過去のトラウマなどがあげられる』
『そして、後者の場合は、心が弱っている際に他者から隙を付け込まれ、洗脳されている場合などが多い』
『そんな洗脳手段を現在の宗教団体の多くが用いている』
『彼らは、自分たちが特別な存在であるとアピールするために、あたかも超能力を持っていると吹聴しているとこがあり、一定の人々はそれを信じてしまう』
『無論、その九割九分が偽物。宗教団体とは名ばかりの、詐欺グループでしかない』
『本来ならば、超能力などみせられても、手品だと思うのが普通だ』
『空中浮遊やテレキネシス、それから人の心を読んだりなど、それらをするのに「準備」をする連中がほとんど。それらの力が本物だというのなら、そんな「準備」など必要なわけがない』
『だが、それでも信じてしまう人たちはいるのだ』
『彼らの多くは、その心に悩みや傷を持っている者が多い。そして、人は自分が落ち込んでいる時に騙されやすい性質を持っている』
『そういう心のメカニズムを熟知している者ほど、人の心を操ることができる』
『本当ならば、絶対に騙されることはないが、状況とタイミング、そして付け込む際の方法が合致すれば、人はどんな馬鹿げたことでも信用してしまうのだ』
『何より厄介なのは、騙された人々は、自分たちが騙されていることを絶対に認めようとしない、という点』
『それは騙す方が巧みだから、という要因も無論あるが、騙される側にこそ大きな要因がある』
『つまり、騙されている方が、楽である、という点』
『一言で言ってしまえば、現実逃避。しかし、それも仕方のないことだろう。元々心に傷を持っている人がなりやすく、騙されていれば、その痛みから解放されるのだから』
『その良し悪しについて、ここでは言及しない。人の心の痛みは千差万別。その一つひとつに対し、どのような答えが必要なのかは、それこそ本人の問題である』
『だが、確実に言えることがあるとすれば』
『一度、騙された者はそうそう簡単に洗脳から抜け出すことはできない、ということである』