【冒険者パーティを追放されたので復讐する話 with 牛】(^ω^)のようです
(^ω^)「お前、俺のパーティから出ていけ」
男がそう口を切ると、あれほど賑やかだった酒場が、一気に静まり返った。
どうやら、この男は冒険者パーティのリーダーのようだ。
筋骨隆々の身体、顔を裂く大きな痣、そして全身に開けた黄金のピアス。それらは、彼がただ者ではない事を誇示していた。
そして、彼の視線の先に居たのは、如何にも気弱で陰鬱な雰囲気の若い男だった。
('A`)「そッ……そんな!今までずっと、このパーティに尽くして来たじゃないか!」
彼は酷く狼狽しながらも、団長の男に食ってかかった。
それもそのはず、冒険者チームからの追放を宣言されることは、つまり、二度と冒険者ではいられない事を暗に示している。
ギルドから依頼を受け働く冒険者などと云うのは、元来、腕っぷしに自信のあるアウトローやならず者の稼業であった。
故に、その活動にはメンツが非常に重要となってくる。
パーティを追放されたというのは、使えない・頼りにならない男だと判を押されているようなものだ。
(^ω^)「尽くしていた?よくもまぁ、そんな言葉が吐けたモンだ。実力のある俺に寄生してランクを上げようとしていたクズが」
('A`)「違うッ!確かに俺は、冒険者としては未熟かもしれない!でもそんな事は!」
(^ω^)「うるせぇ!言い訳なんか聞きたかねぇんだよ!この商売、結果が出なきゃ意味ねぇんだ!」
('A`)「ああっ!」
椅子を乱暴に蹴飛ばされ、彼は床に倒れこんだ。しかし、それだけでは終わらない。
男はうつ伏せになった彼を強く踏みつけ、その背中に酒をぶちまけると、溜まっていた鬱憤を吐き出すように、がなり声をあげた。
(^ω^)「ここでお前の首を刎ねてやるのもいいが……俺の愛剣を汚すのも気が引ける」
(^ω^)「それに、同胞殺しは冒険者の恥だ。だから、もう一度だけ言ってやる!」
(^ω^)「"俺のパーティから出ていけ"!この役立たずが!」
そう言って、男は彼の襟首を持ち上げると、酒場から放り出した。
雨にぬかるんだ道に顔面をぶつけ、泥だらけになりながら、男は打ちひしがれた。
締め出された酒場の中からは、つい先ほどまで仲間と呼んでいた者たちの笑い声がこだました。
('A`)「クソッ……クソがッ……!」
雨に濡れ、恥辱に塗れ、彼は脚を引き摺り酒場を後にした。
しかし、なによりも、すぐに酒場へ戻り団長の頬を殴り返すこともできぬ、己の無力さが悔しかった。
('A`)「今に見ていろ……必ず!必ず!」
◇
数か月後……
(・∀・)「いいじゃなーい。アナタ、乳しぼりお上手よ?」
('A`)「そ、そうっすか?」
男は、牧場にいた。
牛舎で乳しぼりをしていた。
(・∀・)「ええ。ほんと、テクニシャンだってわかるわ。見て?牛さんも気持ちよさそうでしょ?」
彼の側で牛の世話をしている女は、この牧場のオーナー。
若くして両親を失くし、女手一つで広大な牧場を切り盛りする女丈夫である。
彼女が雌牛の背中を撫でると、雌牛はモォ~と短く鳴いた。
('A`)「……いや、分かんないっすけど」
(・∀・)「こんな逸材が今まで在野に居たなんて信じられない!あの時、アナタが私の家を訪れなかったらと思うとぞっとするわ!」
('A`)「ははっ……そんな、これくらいのことで、大げさっすよ」
パーティを追放された後、彼は行く宛てもなく街道を歩き続け、やがて行き倒れる寸前にこの牧場の扉を叩いたのだった。
ひどく衰弱していた彼に対し、牧場主の女は食事と寝床を用意してやった。
そして、一宿一飯の恩返しとして、彼は牧場で雑用として働いていたのだ。
(・∀・)「ねぇ、アナタ。過去に何があったか、やっぱり教えてくれないのね?」
('A`)「まだ、自分の中で踏ん切りがついていないんですよ。まだまだ未熟ですね、人間として」
(・∀・)「そんなことないわ、アナタはアナタよ。もっと自分を強く持ちなさい。素晴らしい技術を持っているんだから」
('A`)「そう、ですね」
彼は牧場に来る前のことを女に話していなかった。
なぜなら、それは彼にとって屈辱であったし、同時に精神的苦痛を伴う経験であったからだ。
なによりも冒険者チームを追放された事が明かされたとあっては、彼のメンツが丸つぶれである。
しかし、そんな事とはつゆ知らず、女は彼を励ますように明るい笑顔を向けてくれる。
その時、彼の頬を雌牛がペロっと舐めた。
(・∀・)「ふふっ……ほら、牛さんも『元気出せ』ってきっと言ってるわ」
('A`)「いやコレはアレですね。ただの水分補給です」
彼の空気を読まない指摘に同調するように、雌牛はモォ~と短く鳴いた。
(・∀・)「あ、そう」
女は、ふてくされるように目を細めた。
◇
その夜、自室で寝ていた男は牧場主の女の悲鳴で目を覚ました。
ベッドから飛び起きた彼が、声のした牛舎まで駆けつけると、そこで見たものはひどく荒らされた資材や飼料、そして柵の側で腰を抜かしている女だった。
('A`)「なんだ!?なにが起きた!?」
すぐさま女に駆け寄り、その手を取りながら彼が訊くと、女は体を震わせながら答えた。
(・∀・)「泥棒!泥棒よ!仔牛ちゃんが一頭、盗まれちゃったの!!」
('A`)「なんだって?一体だれが仔牛を!?」
(・∀・)「きっと最近この辺りで活動している盗賊団よ!そうに違いないわ!」
('A`)「盗賊団……だと?」
彼女は断言するように声を荒らげたが、彼にはどうにも腑に落ちなかった。
盗賊団とはつまり、盗賊ギルドに所属する冒険者のこと。夜の闇に紛れ、音を消し、華麗に獲物を盗むのが彼らのやり方だ。
元冒険者の彼も何度か仕事で盗賊と共に行動した事があるが、彼らはこんなお粗末な仕事はしない。
つまり、これは盗賊ではない何者かの仕業だ。
その時、彼は女の足元に光る貴金属を見つけた。
何かと思って拾い上げると、それが何なのか、彼はすぐに理解できた。
('A`)「こッ……これは!団長のピアス!」
おそらく仔牛を運び出す時に、何かに引っ掛けて取れたのだろう。
しかし何故、団長が仔牛を盗み出したのかは分からない。
('A`)「クソッ……どうすればいいんだ!」
彼の脳裏に、最後に見た団長の下卑た笑いが反響した。
トラウマが蘇り、身体を強張らせて眼に涙を浮かべる彼。そんな彼の頬を、一頭の雌牛がペロっと舐めた。
それは、盗まれた仔牛の母牛であった。
('A`)「お前、もしかして?」
彼には、その牛の考えが手に取る様に分かるようだった。
"取り返しに行こう"──彼女はそう言っているのだ。
しかし、相手は自分の心を折り人生を滅茶苦茶にした男だ。
そんな男から、自分は仔牛を取り返せるのだろうか。
彼は手を震わせた。
──無理だ。できる訳ない。自分は無力だ。そんな負の感情が彼の脳を塞ぐ。
しかし、彼はふと気づいた。
あの時は、自分には仲間がいなかった。だが今はどうだ?自分には仲間がいる。牛がついている。
そう、これは千載一遇のチャンスなのだ。
団長に復讐するためだけではない。屈辱に塗れた過去の自分を捨て去るためのチャンスなのだ!
('A`)「分かった!行こう!」
何かを決意した眼差しと共に牛の背中を叩いた彼。牛もそんな彼の意志をくみ取ったのか、力強くモォ!と鳴いた。
('A`)「ハイヨーッ!!」
彼は颯爽と牛にまたがると、角を掴んで勢いよく叫んだ。
(・∀・)「ああっ!牛さんにまたがって!どこへ行くの!?」
('A`)「仔牛と、俺のプライドを取り返しにな!」
そう言うと、彼は牛の腹を蹴って、牛舎から勢いよく飛び出した。
突如とした一人と一匹の暴走を、女は呆然と眺めることしかできなかった。
(・∀・)「牛って、結構早いのね……」
◇
('A`)「間違いない。ここだ」
彼と牛は、街の場末にある、とある酒場の前で立ち止まった。
そこは、紛れも無く、あの日自分がチームを追い出された、あの酒場である。
彼が牛から降りると、酒場の扉が開き、一人の大男が姿を現した。
(^ω^)「おやおや……誰かと思えば、随分前に追い出してやったカス野郎じゃねぇか」
因縁の相手、団長である。にやにやと嘲るように口を歪ませて彼を見下している。
(^ω^)「なんだぁ?牛なんか連れて……俺に貢ぎ物か?」
団長は雌牛を指し、煽るように鼻で笑うが、今の彼にはそのような挑発など効果は無い。
('A`)「違う。お前が盗んだ仔牛を返しに貰いに来た」
彼は毅然とした態度で、団長を睨み返す。
しかし、百戦錬磨の彼にとって、一度自分に負けた男の威嚇など屁でも無い。
団長は余裕のある態度を崩さぬままに答えた。
(^ω^)「仔牛?……ああ、さっきの牧場から連れ出したヒョロい牛か」
(^ω^)「悪いが返す訳にはいかねぇな……もう売り手はついているんでね」
その時、酒場から気品のある装いの男が姿を現した。
おおよそこのような場末の酒場に似つかわしくない、貴族風の男だ。
(゜Д゜)「なんだ、騒々しい。私は仔牛のステーキが食べたいんだ。さっさとしてくれ」
男の呑気な言葉で、彼は事の真相に気が付いた。
なるほど、これは貴族から、団長率いるチームへの依頼だったのだ。
内容は恐らく"なんとしてでも仔牛肉を手に入れろ"と言ったところか。
('A`)「くッ!なんて酷いことしやがる!」
(゜Д゜)「ふん。私は今すぐに仔牛を食いたいから、冒険者に依頼したのだ。のぉ?」
(^ω^)「はい。今すぐにご用意させます」
(゜Д゜)「うむ。して、こ奴は?」
(^ω^)「仔牛を狙う悪党でございます」
(゜Д゜)「なに?私の仔牛を?それは大罪じゃ!ひっ捕らえい!」
(^ω^)「おっと、それは依頼に無ェ。こっちの好きにやらせてもらいますよ」
団長はそう言うと、自慢の愛剣を鞘から抜き、切っ先で彼を指した。
(^ω^)「さぁ、今尻尾を巻いて逃げるんなら、見逃してやるぞ?前みたいにな!」
嘲笑する彼の剣が空を切る。逃げなければ殺す、つまり彼はそう言っているのだ。
しかし、もはやそのような脅迫に屈する彼ではない!
('A`)「俺は、もう二度と逃げない!」
彼は懐に忍ばせておいたナイフを取り出し、団長に差し向けた。
(^ω^)「ほう……少しは度胸が付いたか?でもな、残念ながら冒険者の戦いに"公平"の文字は無ェ」
そう言うと、彼は腕を挙げて、酒場の中に居る仲間に合図をした。
すると、建物の中から、一人また一人と姿を現し、遂に数十人のならず者が、彼と牛を囲むように立ちはだかった。
(^ω^)「たった一人で大勢に歯向かうのは蛮勇って言うんだ。分かったか負け犬野郎!」
どれだけ脅しても全く怖じ気づくことのない彼に、団長はこめかみをひくひくと震わせる。
('A`)「独りじゃないさ!俺にはこの牛がついている!」
しかし、減らず口を叩き続ける彼に対し、遂に団長の怒りが爆発した。
(^ω^)「はん!そんな肉の塊を連れて何になる!?」
(^ω^)「俺の剣で切り裂いて、サイコロステーキにしてやるよ!」
団長が剣を空に突き立て、攻撃の合図をすると、ならず者が一斉に彼に襲い掛かる!
もはやこれまでか、彼が死を覚悟したその時、大きな地鳴りが辺りに響いた。
(・∀・)「やっと追い付いたわ!」
('A`)「オーナー!それに牧場の牛たち!」
彼が見たのは、牛にまたがってこちらに向かってくる牧場主の女と、その後ろに続く牛の大群だった。
突然の事態に動揺するならず者達。そして次の瞬間、おびただしい数の牛が彼らに向かって突進してきた。
余りにも非現実的な光景に唖然とする暇もなく、必死で牛を回避するならず者だったが、ある者は腹を突かれ、またある者は顎を蹴飛ばされ、まさに死屍累々である。
しかし、そんな中でも団長は、突撃してくる牛を殴り返し、必死の抵抗を見せた。
(^ω^)「なッ!?なんだこの牛どもはッ!」
(・∀・)「牧場の牛、馬、羊、それに犬……百体以上連れてきたわ!これでも多勢に無勢なんて言えるかしら!?」
彼女が高らかに叫ぶと、ならず者たちは戦意を喪失したのか、散り散りに逃げ去った。
(^ω^)「おい!お前ら!逃げるな!戻ってきて戦え!」
団長はそう言って呼び止めるも、遂に誰一人として戻って来ることは無かった。
('A`)「ふん。奴らなら戻って来ねぇさ……お前の顔色ばかり伺っている連中だからな」
(・∀・)「これで形成逆転って訳ね!」
(^ω^)「ぐっ……ぐぬッ」
(゜Д゜)「お、おい!お主、なにやら分が悪いようだが、大丈夫かえ?」
事態が呑み込めない貴族が狼狽して団長に縋りつく。しかし、団長はそれを鬱陶しいと一蹴し、彼を突き飛ばした。
(゜Д゜)「ぐげッ!」
(^ω^)「お前は黙って見てりゃいいんだよぉッ!」
彼はまだ戦意を失っていなかった。
剣を握り、彼は己の敵に向かって走り出した。
負け犬野郎は未熟な冒険者だ。背後からの一撃を防ぐ技量など無いだろう。
そうして剣を振り被った瞬間、横から飛び出てきた一頭の雌牛にわき腹を突かれ、彼は大きく吹っ飛ばされた。
(^ω^)「ぶるッ!」
彼に痛恨の一撃を喰らわせたのは、彼が盗み出した仔牛の母牛であった。
◇
(・∀・)「さて……コイツ、どうしてやろうかしら」
その後、吹っ飛ばされて地面で気絶していた団長を縛り上げた女は、その処遇をどうするか、彼に訊ねた。
('A`)「いい案があります。オーナー」
彼に耳打ちをされた女は、縄を解けと暴れる男を見て悪戯っぽく笑った。
(・∀・)「それ最高。やっちゃって!」
(^ω^)「おい!何するつもりだ!殺されてぇのか!」
('A`)「団長。あの後分かったんですが、俺にはすごい才能が眠っていたようです」
(^ω^)「なにが才能だ!カス野郎にそんなものある訳ねぇだろ!」
男は体を大きく揺すりながら怒鳴り声を上げる。
しかし、拘束された状態でのそのような姿は、恐ろしいどころか滑稽でさえあった。
彼はそんな男の罵りなど歯牙にもかけず、彼のわき腹に手を入れて、怒りの限りに叫んだ。
('A`)「その才能とは……乳しぼりで鍛えた!指先のテクニックだァ!!!」
彼は男のわき腹を、自慢の指先で素早くくすぐった。
男は、全く予想だにしていない事態に、溜まらず噴き出してしまった。
(^ω^)「ガッ!っはははっはは!やめろ!ハハハは!止めてくれ!!」
('A`)「止めん!これが俺の復讐だ!とくと味わえ!」
(^ω^)「ははっはっははは!許ッ!許してくれ!!ははははっはは!」
('A`)「許さん!」
男は遂に涙を流し、笑いながら許しを請う。
しかし、彼は全く相手にせず、自分の復讐を続けた。
くすぐりはわき腹だけにとどまらず、顎の下、首、背中、二の腕、股座、足の裏に至るまで、彼は男の身体に対し凌辱の限りを尽くした。
(゜Д゜)「な……私はさっきから、一体、何を見せられているんだ?」
彼の隣で同様に拘束されていた貴族は、呆然と口をあんぐりと開けたまま、その光景を見続けていた。
(・∀・)「アナタはこの男の滑稽な姿を、周りの人たちに言いふらせばいいのよ」
その微笑みとは裏腹に、女に肩を強く掴まれたので、貴族は「これは従わないと自分まで酷い目に遭う」と首を何度も縦に振った。
その時であった。酒場を囲うようにして並んだ牛の影から、女は人の姿を発見した。
それは先ほど遁走したならず者達であると、彼女にはすぐに分かったので、嬉々として男にそのことを伝えた。
(・∀・)「ほらぁ、あなたの仲間、帰ってきたみたいよ」
('A`)「そうか、それは良かったな!見てもらえよ、お前のこの恥ずかしい姿をなぁ!!」
(^ω^)「止めッ!止めてくれッ!はははっはは!止めッ!許してッ!ははははは!」
その話を聞かされた男は、より一層激しく抵抗した。
こんな惨めな姿を見られては、自分の面目は失墜してしまう。
そうなれば、自分はもう、冒険者として生きていくことはできない。
(^ω^)「許してくれェーーーーーーー!!」
男の悲痛な叫びが街にこだまし、牛達は何を思ったのだろうか、それに呼応するようにモォ~と高らかに鳴いた。
◇
牧場に帰る途中、女がなんとはなしに話しかけてきた。
(・∀・)「なんで隠してたのよ。こんなことぐらいで」
('A`)「いや、だってメンツが立たないし……」
牛の首を撫ぜながら、彼は口をもごつかせたので、女はいじましく思って、朗らかに笑いながら彼の背を叩いた。
(・∀・)「何言ってんの。そういう世界からは抜けたんでしょ?」
('A`)「いや、そうじゃなくて」
(・∀・)「?」
('A`)「男としての、メンツが……」
彼が酷く赤面しながらそう言うと、横を歩く仔牛が甲高くモォ、と鳴いた。




