業火と破壊を司る鳥
僕は驚いた。
再び何かが建物を突き破り大量の割れた瓦を撒き散らした。
そして、突き破っただけでなく、一瞬で炎がその大きな屋根を全て覆ってしまったのだ。
「何が起きているの。」
白波八幡という建物から一斉に信者達が外に逃げ出してきて、それを誘導しているのは麻友であった。
ああ、麻友と数人の制服警官達が必死で動き回っている!
「まゆゆ!どうしたの!何が起きたの!」
「来ちゃ駄目だって。危ないから!クロちゃんは帰りなさい!」
ガチャン。
再びあの鳥だ。
今度は別の棟を襲っている。
あの鳥が突っ込むとそこは全て炎にまかれ、焼け落ち、完全なる灰と変わる。
「あれは何?あんなに怖い鳥をはじめて見た。」
「僕もだよ。ガルーダが本当にいたとはね。」
ガルーダの黒い体は闇ではなく太陽の黒点を現すという、太陽の化身そのものなのだ。
バシン!バンバン。ざしゅん。
中二階らしき箇所が一気にぐしゃりと潰れた。
鳥は壁を突き破り、窓を割り、柱を折りと、狂喜の中暴れまわっている。
僕のオコジョ達を初めて解放した時のような、狂喜乱舞ぶりである。
ぎょぎょぎょぎょぎょぎょ。
「変な鳴き声。何これ本当に鳥なの?キモイ。」
「うん。…………双頭のカラスだからかな。」
「双頭なの?僕には翼の羽ばたきで鳥だってぐらいしか見えない。」
「君が?珍しい。さぁ、危ないからクロちゃんは下がって。僕はまだ家屋に残されている人達を助けなければいけないからね!」
麻友は僕を安全な位置にまで引っ張ってくると、そう言い残して燃え盛り始めている屋内へと再び駆け戻っていった。
制服警官達は麻友に指示されていたのか、焼け出された人達を特定のグループわけをして救護している。
「妊娠した人達の中になぜか白波の気配を感じる。それに、屋敷の中からも……淳平君?君はそこにいたの?どうして泣いているの?」
僕は駆け出していた。
炎の中、燃え盛る火に煽られた灰や燃えカスが巻きあがり、破壊された木材の破片までもが落ちてくるが、僕にはそんなものを気にしている余裕は無い。
山口が絶望の中にいる!
だが僕はそこに辿り着けずに、大きな腕に抱き留められた。
力強い腕は僕をしっかりと抱え込み、大きな体は炎から僕を庇っている。
「良純さん!淳平君がいるよ!あそこに、あの奥にいるから!」
「わかっている。そこには楊もいるから大丈夫だ。お前は外に出るんだ!」
「かわちゃんは大丈夫なの。ここは凄い。まるで火炎地獄みたい。」
ぎょぎょぎょぎょぎょぎょ。がしゃん、がしゅん。ぼん。
爆発音ともに建材が弾けて炎に次々と巻かれて灰になっていく。
炎が強過ぎるのか落ちてくる破片は下に辿り着く前に完全な灰となり、僕達は火炎地獄の中で灰色の雪を浴びているのだ。
「なんなんだこれは!こんな火事は初めてだよ!」
僕は良純和尚の袂に隠され抱きしめられて、ぎゅっと目を瞑る。
せめて、淳平と同じものを見つめて安心したいからと。
「酷い。ひど過ぎる。かわいそうな僕の家族。」
「わかったから。とにかく、俺達は一度出るぞ。」




