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8/20

7、御殿場IC付近の長時間待ちハンバーグ(静岡)

昨日の夕暮れ時のことである。

晴明が仕事からの帰り道、ふと道の途中で立ち止まる。


すんすんと鼻を鳴らし匂いの元を辿れば、


『Big Boys』


よくあるハンバーグ&ステーキのチェーン店である。

店から肉を香ばしい匂いがぷんぷんと漂ってくる。


……そういやハンバーグ久しく食ってねえな。


食っていきたい気もするが、生憎と既に夕飯の材料を買ってしまった後だ。

明日から連休ということもあり、大量に買い込んでしまったのを少し後悔。


……ハンバーグはいつでも食えるしな、しゃあない。


また今度来よと思って、夕飯を食べ夜が明けて、





「てことでハンバーグ食いに行こう」


「今日も雑だな、我が主。……まあ、昨日から不満そうにしてたのは気づいていたが」


三連休初日である土曜日のお昼頃に、晴明を有無を言わせぬと言わんばかりにやる気に満ち溢れてる。


「やっぱり……肉の口に一瞬でもなると我慢できん!」


自分を騙そうと試みたが、里芋の煮物を一口食べた時点で俺の中のハンバーグへの肉食欲が爆発した。

誰しもが腹に秘めているこの荒神は、食わなければ鎮まること叶わない!


「我が主よ、いつになく欲丸出しだな。(あるじ)の欲に私の悪魔センサーが反応してるぞ」


「血縁者に鬼太郎でもいんのかセイル」


ほれ、とピンと立った髪を指さしているが、寝癖かと思ってたわそれ。

なんか初耳の悪魔スキル出てきたんだが。

……まあ、交渉して魂を代償に欲望を叶える悪魔なら、人間の欲を正確に感じ取る機能があっても全く不思議でもないな。


意外に興味深い内容に考えを馳せていると、セイルがよいしょと立ち上がる。


「食事の準備をするか。自分もお腹が空き始めたころ───」


「いや、食べに行くのは夕方だぞ」


「ぬ?そうか、ならそれまでドカベンでも読んで」


これまた渋いな漫画のチョイス。近くの図書館であったから借りてきたらしいが。

まあ今はそれよりも。


「いや、今から店に行くぞ」


「………………」


セイルが時計を見る。

現在13時過ぎ。

決して夕飯と言える時間ではない。


セイルはしばし思索してから、


「とんちか?それとも流行りのウミガメのスープ開催か?」


それなら受けて立つぞと何だか勝手に乗り気になってるセイル。


「違う違う。今日行く所は店行ってから食うのに5時間くらい掛かるんだよ」


「…………………………………やはり流行りの」


「違う」


折角三連休だし、明日ボードゲームカフェに連れてってやろうかな。





「ってなわけで、やってきました【さわやか 御殿場インター店】」


「ファミレスのような店構えだな……しかし車が多いな」


「高速降りてすぐにある店だからな。他県からの客も来やすいし」


「品川、湘南、果ては長野。よりどりみどりだな……む、晴明?」


セイルを置いて晴明は早足で店の扉をくぐる。

いつもならもう少し解説するが、今はその時間が惜しいので割愛。


恒例(いつも)のが無いことに呆気に取られ、慌ててセイルがついて行く。


店中に充満している肉の香りに空腹の虫が暴れ出すが、まだ早い。


レジのお姉さんが「何名様でしょうか?」の質問に2人と答えると、


「現在4時間半待ちとなっていますが、それでもよろしいでしょうか」


「はい、お願いします」


「───────────は?」


セイルの気の抜けた声を背に、晴明は受付番号の書かれた紙を受け取り外に出るのだった。





さわやかで受付後、一旦自宅へ戻った2人。


セイルはチラリと壁にかかった時計を見る。


……13時30分……それから4時間半となると、


「18時!」


「うおっ!?びっくりしたなぁ、急にどうしたセイル?」


突然の声にTVを点け番組表を見ていた晴明はびっくりする。


「いや、失礼。しかし、長すぎるだろ。新幹線で東京から函館へ行けてしまう時間だぞ」


「何でサッと出る例えがそれなんよ」


お前(セイル)瞬間移動能力あるから新幹線乗んないだろ。


「まあ、確かにさわやかは2時間待ちなんてザラだけど。御殿場店は特に混むんだ。他の店舗に比べてアクセスがよくてな」


TVの前から立ち上がり台所に向かいながらセイルに対して説明する。


「店によっては空いてて待ち時間無しで即食えることもある」


「それほど人気なのか。………なら、何故わざわざ激混みの店を選んだんだ?」


セイルの疑問は当然だ。

アクセスの良し悪しなどセイルの能力には関係ない。


「土日のこの時間で入店待ち登録すると、大体4時間後ってのは分かってたからな」


昼食じゃなくて夕食時を狙った理由としては、まあ、今食卓に用意してるコレだ。


「ほら、昼飯のサバ味噌ときんぴら。温め直したから冷めない内に食おうぜ」


「………なるほど。昼飯は昨日のうちに作ってしまっていたのか」


はい、その通り。

食材買い込み過ぎてたから消費しないと悪くなる。


いただきますと手を合わせ少し遅めの昼食。

セイルは箸で器用に身から骨を取り除きながら、はたとあることが気になり、手を止める。


「だが、店で待っていなくて良いのか?店で受付の記入もしてなかったではないか」


4時間半も待って座れないなんてなったら地獄だ。

だがその点は抜かりなく。


「店で貰った整理券見てみ」


「……番号の下にQRコード?」


このQRコードを読み取りメールアドレスを登録すれば、自分の番号の少し前あたりで知らせが来るのだ。

しかも、現在呼び出しをされている番号、そして予想待ち時間がスマホから見れる。


「俺らは部屋で時間潰してるけど、御殿場近くだと御殿場アウトレットや、ちょい遠いけど富士山が綺麗に観れるスポットもあるんだわ」


長時間待つと分かっているからこそ、敢えて遠くに遊びに行ける。

ビバ文明の利器よ。


なるほどと納得したセイルはキンピラを一口。

しばらく咀嚼して、


「……ん。しかし、それでも心情的には店から離れにくくはないか?」


「どして?」


「4時間半だぞ。前の番号の者が食べるのを諦めたら、予想待ち時間よりも早く呼び出しされるかもしれないだろ」


母数が多ければ、そのような者も多くなるであろう。

そんなセイルの心配に対して、晴明は平然と返す。


「ああ、それなら大丈夫大丈夫。むしろ予想の時間より遅くなると思っとけ」


「……やけに自信ありで答えるな?」


人間のサガとしてその不安は最もであるのだが、大丈夫な理由がある。


「ズバリ、皆が長いこと待つので有名なハンバーグ屋として知ってるのに来てるからだ」


「?」


「普通は2時間待ちがザラなんだ、この店は」


基本その情報を知っていながら来店する者は、2時間待っても食べたい者たちだ。

更に2時間のつもりが4時間と言われても残るやつは、何時間経とうが待つ。



4時間待ちと聞いても残る

諦める人がいて、もしかしたら予想時間より早く食べれるかも

2時間も待ったんだし、ここで帰るのは非常に損

ま、待つしかねえ!



人間というのは非常に損することを嫌う傾向にある。

そもそも車じゃなきゃ行けないような場所で、しかもハンバーグの為に遠くから静岡に来たのだ。


「つまりUFOキャッチャーと同じだな」


中々取れず2千円使ってしまうが取れない。

大きく見れば本来はここで辞めた方が出費という損を回避できるのに、『取れなかった』とい目の前の損を回避したいが故に更に出費を重ねる。


「そもそも、あの店に行って整理券を掴んだ時点で覚悟のある者しか居ないわけか」


「後には引けなくなってるからな皆」


だから気にせず店から離れて買い物なり、観光することを強くオススメする。


「ま、俺らはこうしてゆっくり出来るがな。ほんとセイル様様だ」


ありがたやーと崇める。

そんな晴明を見て、セイルは一言。


「崇めるよりも、我が主。ならば是非買いたい物があるのだ───」


「はいごちそうさまー!よーし皿を洗わないとなー」


「…………」


しばらくの間、気づかなかったことにして洗い物に勤しむ晴明の横顔を、訴えるようにジイイイと見続けたセイルであった。





映画や漫画で時間を潰し、5時間後。


セイルと晴明の2人はついにさわやかに入店した。


……我が主が言っていたが、本当に予想より長いこと待つことになるとは。


セイルはその事実に半ば呆れながら、店内を見回す。

外観からはファミレスっぽいと印象を受けたが、中に入れば尚のことファミレスぽさが強くなった。


「というか、ファミレスそのものだな」


至って普通の、まんまファミレスである。

だが、他のファミレスと異なる点は、


「どの席でもハンバーグを注文してるな」


ここまで待ってハンバーグ以外を頼むのも少々おかしな話ではあるが、目につくといえばその点だ。

その光景に晴明は唾を飲み込む。


「ヤバい。ハンバーグ食べた過ぎて、これだけで飯いける」


ハンバーグへの思いを馳せながら、2人は案内された席に座る。


「はいよメニュー」


「どれどれ……ハンバーグ以外にもあるのだな。ステーキにチキングリル、ミートドリア……雑炊とビビンバ?」


「ハンバーグレストランのビビンバ。選択肢として無さすぎて……逆にちょっと気になるよな」


だが、今回の食いたいものは昨日の晩から決まっている。

ドシンプルにこの店の定番メニューを。


「やはりここはゲンコツハンバーグ一択!」


「なら私もそれだな。ソースは"オニオンソース"と"デミグラス"あるが、どちらがオススメなんだ晴明?」


「デミグラスも捨てがたいが、かけた時のこと考えるとやっぱり1()()()はオニオンソースだな」


「む……なるほど」


晴明の言葉の節にどこか違和感を抱きながらも、セイルは晴明と同じゲンコツハンバーグ(オニオン)とライスのセットを頼む。


メニューを置いて、耳をたてる。

そこかしらの机から鉄皿の上で肉が焼けてる音がする。


昨日の晩から主菜の肉絶ちを行なっている晴明が、すぅと鼻で息を吸うと、まるで肉を前にした虎のようにグルグルとお腹が鳴った。


ハンバーグを迎え撃つに最高のコンディションであることを確かめた晴明が、ふとセイルに視線を向けると、


「どした?」


「……手に馴染む形をしていて懐かしくてな」


日常では馴染みのないイカついフォークとナイフ。

いや、これがマジでイカつい。


それを悪魔が持っていると、なんか似合う。


「これで食べるには危なくないか?」


「俺らは使わねえよ。それ、店員さん用」


「店員用?」



10分くらいして、お待ちかねのハンバーグがやって来た。


「お待たせしましたー!」


元気なお姉さんの声と共に、空腹を促進させる音を響かせながらハンバーグが現れた。


なるほど、拳骨というのも頷けるとセイルは思った。


丸く、握り拳のような俵型のハンバーグ。

熱された鉄皿の上でジュ〜と音を上げ、存在を主張している。


セイルは熱いうちに頂こうかとするが、未だに店員の女性がテーブルの側にいる事に不思議に思う


「では、調理させて頂きまーす!」


「?」


お姉さんがセイルが気になっていた仰々しいナイフ&フォークを掴んだかと思うと、勢い良くまん丸のハンバーグを半分にカットした。


「……!」


更に、あろう事かナイフの背をフォークで押さえてぎゅうと潰し始めた。


真っ二つに掻っ捌かれ押しつけられたハンバーグが、悲鳴があげるが如く、キュウウウウウと肉の表面が焼かれる音が響く。


ハンバーグにとっての悲鳴も、捕食者にとっては甘美なBGM。

これだけでも食欲を掻き立てられるが、しかし、お姉さんの仕上げはまだ終わりではない。


「ソースおかけしますか?」


「お願いします」


晴明の了承を得ると、(かたわ)らに置いてあったオニオンソースをハンバーグの上で傾け、


────ジュワアアアァァァァァァッ!!


熱された鉄皿の上に突如投下されたオニオンソースは、急激な高温に沸騰する。

瞬間、解き放たれたオニオンソースの香りが晴明とセイルの2人を包み込む。


スゥーと深く息を吸えば、ひどく健全な合法ドラックが肺を満たす。


粘度の高いデミグラスソースとは違い、さらさらのソースが故に、肉汁の香りを伴った芳醇な匂いが熱により発散しやすい。


「では、ごゆっくりどうぞー!」


そう言ってハンバーグを完璧な状態に仕上げ、店員は去っていった。

晴明は待ちきれんとばかりにナイフとフォークでハンバーグを切り分けていき、セイルもそれにならう様にハンバーグにナイフを入れる。


すると、またもや驚きの光景にセイルは固まる。


「……おい、晴明。中に火が通ってないぞ」


まさかの事態にセイルは慌てたように、しかし小声で晴明に囁く。


表面の見事な焼き目からでは分からなかったが、中身が赤い。

中心まで火が通らず生焼けというよりも、その紅さにステーキのレアを想像させる。


しかし、それに対して晴明はおどけた表情のままだ。


「安心しろセイル。さわやかのはわざとレアなんだ」


さわやかのハンバーグ。

オーストラリアの南東部で育てた牛肉を100%使用しており、指定された牧場で育てられ、その牛に与える餌も指定されている。

ハンバーグに使用する肉は厳かに指定され、内臓由来の微生物が付着しないよう、注意して処理されている。


産地からテーブル上に届くまで安心安全を徹底管理したからこその、レアで食すことのできるハンバーグ。


昨今、肉の生食取り締まりが厳しくなり、鳥レバーや牛肉ユッケがメニュー表から消えていく世の中で、本当にありがたい話だ。


余談であるが、レアが苦手な人は注文時に「中まで焼いて下さい」と言えば対案してくれる。

オススメはしないが。


「……よしと」


ひとしきりハンバーグを小分けにした晴明はナイフを置き、フォークとライスを構える。


ここからは食いに徹する。

突いたフォークは狙い通りにハンバーグの一切れを捉え、晴明の口へと運ばれた


「あちちっ!はふっはっ………!」


昨日からの待望のハンバーグだったからだろうか、早まる気持ちを抑え切れず熱めのままであり、しばし熱さと格闘。

なんとか落ち着かせ咀嚼し、さらにライスも迎え入れる。


「……っはあ。うめぇ」


そう、これだよこれ。

俺が最も食いたかったハンバーグのイメージにバチコンと合致している。

肉の弾力の噛み応えがあるのに、それでいて柔らかいのだ。


熱々のまま、更にもう一切れ。

一口目よりも落ち着きを取り戻し、ハンバーグの食感を楽しむ。


肉100%の粗粗しいハンバーグか、それともつなぎによる柔らかいハンバーグか。

ハンバーグのタイプは、この2種類のタイプが多い。(どっちも好きだが)


このハンバーグの食感はその両方の良いとこ取りをしたようなもので、正にジャストミート。

これこそハンバーグ界の綱渡り師。良いバランスを見事に取っていやがる。


牛肉100%で作るとボロボロになって硬く、逆につなぎが多く柔ら過ぎて肉肉しさが薄れてしまうなんて事、自分でハンバーグを作った際に多々ある。


さわやかのは一切そんな欠点が無い。


フォークが織りなすハンバーグとライスの往復運動は

晴明の口を経由して更に加速。

肉の合間に、付け合わせの温野菜とフライドポテトも忘れちゃいけない。


にんじん、ブロッコリーはソースがかかり少し表面が焦げてしまっているが、逆にそれが良い。

野菜独特の甘味と、ほんの少しの苦味がいい味出してる。

フライドポテトポテトに至っては、衣がソースと肉汁を吸い取り、中のホクホクの芋に染み込んでいる。

何という贅沢か。最高だ。


付け合わせに心躍りながらも、やはり、なんと言ってもハンバーグ。

食べる手が止まらない。


牛肉100%の場合、本来硬くモソモソとなるが徹底管理によるレアにより、豚肉などつなぎを使用せずに柔らかなハンバーグを想像している。

先程良く焼きをオススメしないと言ったのはこのためだ。


半分に切られ押しつぶされたにも関わらず、噛めば肉汁が口に広がり、オニオンソースと炭火によって焼かれた肉の香りが鼻へと抜ける。

およそ350℃まで熱された鉄皿により、断面が急速に焼かれ膜が出来、肉汁を逃さないのだ。


気づけばハンバーグの残機も残り1切れ。

惜しみながらも、文字通り噛み締めてラストへ。


噛めば噛むほど牛肉本来の旨みが広がっていく。

俺は今ハンバーグを食っているが、ハンバーグ感よりも肉を食っているという実感がヒシヒシ来る程に肉肉しい。

さわやかのはハンバーグにして、肉である!

……いや、ハンバーグだから肉なのは当たり前なのだが。


最後の一口を終え、スープを一口。


ふぅと一息吐き、憑き物が取れたように満足気な晴明。


……少々ガッツき過ぎたな。


味わって食べたつもりであったが、いつもより早く食してしまい、セイルはまだ食べている最中であった。


「どうよセイル」


晴明がセイルに感想を求めると、咀嚼していたハンバーグを飲み込みゆっくりとセイルは言った。


「美味い。確かに美味い」


確かめるようにハンバーグを一口。


「ハンバーグは他の店では無いような食感で、中がレアなのも私好みだ。ソースの香りも最高だ。もぐもぐ、かなり旨い…………しかし」


ハンバーグを更に一口。

そして、一拍置いて、


「失礼だが、5時間待った後にと考えると、はむ……むぐむぐ。いや、この店が1番混むというだけで、もぐ、2時間待ちと考えれば……うーむ。あむ」


いや勿論美味いのだぞと、ナイフとフォークを動かしながらセイルはそう申し訳なさそうに言う。


「いかんせん、期待値が上がり過ぎていたのかもな…………(カチャン)む?」


そう話すセイルのプレートから金属のぶつかる音が鳴り、セイルが音のした方に視線を向ける。

気づけばセイルはハンバーグを完食しており、空を突いたフォークが鉄皿に当たった音であった。


「……う」


……いつの間にか食べ切ってしまっていたか。


その事実を理解しつつ、そして、それと同時にある感情がセイルの中で少しずつ湧き上がってきた。

もう一人前食べたいと。


「……………………………な、なあ晴明。実は提案なのだが」


晴明は鉄皿から視線を上げ、否定的な事を言っていた手前恥ずかしそうに晴明に話そうとすると、


「ん、これか?」


晴明は再びメニューを開いており、ハンバーグのページを見ていた。

そのページをセイルに見えるようにし、笑顔を向ける。


「セイル。もう一個ハンバーグ食いたくなったんだろ」


「……………むぅ。いやその……その通りだ」


ズバリ言い当てられ数秒言い訳を考えたセイルは、だがしかし、白旗を上げて認めた。


その様子がおかしかったのか晴明はハハハと嬉しそうに笑う。


「分かる分かる。何でか食い終わるともう一個食いたくなるんだよな、さわやかのハンバーグ」


俺も今から頼もうと考えていたし、と店員さんを呼ぶベルを鳴らす。


「次はデミグラスでも頼もうぜ」


「……私もそれで頼もう」


謎の現象に不思議がりながらも、セイルと晴明はもう少しさわやかを堪能するのであった。





「あ……ありのまま今起こった事を話す!『私の前にハンバーグが置かれ食べていたと思ったら、いつのまにか新しいハンバーグを頼んでいた』……何を言っているのかわからないと思うが、私も何が起きたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……お腹が腹ペコだっただとか、そんなチャチなものでは断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わった」


「……ジョジョ読んだ?」


「5部まで読んだ」

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