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17.スーパー前のハンバーガー店(佐世保) 後編

車を運転し、しばらくして。


「ナビだとそろそろ目的地だぜ。……あれか?」

「どこですか?」

「あの平屋の……合ってるか晴明」

「合ってる合ってる」


晴明は店に直接向かわず、ハンバーガー店の近くにあるMaxValueの駐車場へ向かう。

目的地のハンバーガー屋には駐車場はあるのだが、スーパーで飲み物を買っておきたいからである。


仕事の後で喉がカラカラだ。


「バトー。金渡すからスーパーで適当に飲み物買っといて。俺コーラの小さい缶と烏龍茶ペットボトルで」

「あいよ。屋敷はどうする?コーラで良いか?」

「え?は、はい、それでお願いします」

「バトーの方が帰り早いだろうから、ついでに鍵渡しとくな」


晴明が放り投げた車の鍵をキャッチすると、バトーはスーパーへ向かって行った。


「じゃあ、屋敷。荷物持ちでハンバーガー屋まで着いてきくんない?」

「了解です!」


気持ちのいい返事。

入社でもしたら良い後輩キャラだろうな。


スーパーから歩いて1分ほどで店に到着。


「これ、店と知らないと通り過ぎますね」

「初見は厳しいわな、ここは」


道の途中にこの店はポツンとあった。

大きな看板があるわけでもない。

テイクアウト専門の店なので、お店は小さめ。

木造の年季の入った建物で、正直目立たない。


しかしそれでも平日の昼なのに人が店先に並んでいる人気ぶり。

店に近づくと、ふと店前に設置された看板が屋敷の目に入った。


その看板は日焼けしてボロッボロであったが、辛うじて看板にキャラクターが描かれているのが見えた。


「このキャラってアンパンマンのあのキャラの………いや、違う?どことなく似てるけど」


ハンバーガーから人の体が生えてるキャラ看板。

これは佐世保バーガー公式のキャラクターである。

ちなみに、これはアンパンマン作者によって書かれた正式なものだ。しかも、バーガーキッドとは別にわざわざ佐世保バーガー用にとキャラまで作ってくれた優しさ。流石です先生。


『お次でお待ちのお客様〜。ご注文お決まりでしたらどうぞ〜』


気づけば自分達の番になっていたので、晴明はメニューを見ずに一言告げる。


「先ほど電話で予約してた晴明です」

「はい、分かりましたー!そちらに立ってもらって、もう少々お待ちくださいね」


晴明は店員の指示に従い、横にズレる。


「予約なんか出来るんですね」

「この店はな。中々無いけど」


珍しいことにこの店では電話で事前予約出来る。

非常にありがたい。

ちなみに、電話は屋敷少年が目覚めて、車に乗り込むときにしておいた。


佐世保バーガーの特徴。

手作りである事と先程言ったが、これが最も欠かせない特徴である。

基本的に作り置きはせず、注文が入ってから食材の焼き上げに入る。そのため熱々のハンバーガーが食えるのだ。


鰻然り、出来上がるまでの漂う匂いによる焦らしプレイは、これまたたまらない。

匂いに釣られてか、屋敷少年の腹がグゥ〜と鳴る。


晴明達は品物が出来上がるまでの間、油の爆ぜる匂いと共に鉄板が奏でるBGMにうっとりしていた。





品物を受け取った晴明達は車まで戻ると、バルバトスが助手席に座って待っていた。

エンジンかけてガンガンにエアコン効かせてくれてたのはナイス。


駐車場が混み始めたので、車を動かして近くの駐車場併設の公園に向かって移動を始める晴明。


あと10分もせずに公園の駐車場に着くが、先ほど店から漂う匂いでお腹をやられた晴明は食欲が抑えきれない。


「屋敷。ハンバーガーの袋からポテト取ってくんない?ちょっとつまみたい」

「分かりました!」

「お。良いね、俺にもくれ」


後部座席に座った屋敷少年がハンバーガーの入った紙袋を開けると、ぷわっと匂いが車内を満たす。

その紙袋の中からフライドポテトの入った紙製の包みを取り出して、助手席のバルバトスに手渡す。


「量あるな」

「それで2人前なんだからお得だよ、ほんと」


大きい紙の包みには、倍の4人前くらいあるのでは?と思うほどのポテト。

この物価高にありがたい限りだ。


ポテトの種類は細長タイプではなく、三日月形にカットされ皮をつけたまま揚げられたタイプ。


食わんでも分かる、美味いやつや。

ちなみに、このタイプのフライドポテトを「ウェッジカット」と言う。


バルバトスがポテトを1つ(つま)んで、運転で手が塞がっている晴明の口元へ。


「ほい」

「ん、…ッほ!?あ、っちあ……ほふっほふ」

「熱いぞ」

「は、さひに言え。……けど、うまい。もう一個頂戴」


口の中が軽く火傷したが、美味さと空腹が相まって、追加のおねだり。

今度は熱に気をつけて、良く味わう。


よく揚げられており、ポテトの外はカリカリを通り越してガリッガリッ!中身は熱と旨みを孕んだホックホク。

皮付きということもあり、芋の風味が強い。

それに負けじと荒めの塩がガツンと効いているので、運転中でさえなかったら食べる手が止まらなかっただろう。


「うん、ウメぇな。(ひょい、ひょい)」

「自分、コンビニで細長いのばっかり食べてましたけど、太いのもアリですね(パクッパクッ)」

「ちょ、ちょい。俺にもくれ」

「ほいよ」


運動した後の身体が、強めの塩味を求めてスイスイ食べていく。あんなに量があったのに、公園に着く前に無くなりそうなペース。


晴明も負けじとせっつき、ハフハフホフホフと熱さを堪えながら芋を堪能する音が、車内を満たす。そして、あっという間にポテトが消失した。


「なんで芋と油の組み合わせって、こんなにも悪魔的なんだろうな」

「ん?呼んだか?」

「バトーのことじゃねえよ。……いや、悪魔だけども」


などとバルバトスと晴明が茶々入れながら車は進み、もう少しで駐車場に着く。


晴明は、不意に屋敷少年にも話を振る。

理由は特に無い。ただ、会話の輪に入れようと思ったからだ。


「そう言えば。屋敷は行きつけの佐世保バーガーの店とかあったりするの?」

「え?行きつけですか?」

「2.、3年は佐世保で活動してたんだろ。もし、地元民だけが知る穴場店とかあったら知りたくてな」


話題は適当に選んで聞いてみたが、何故か後部座席から屋敷少年の返答がない。

晴明が、バックミラーでチラリと屋敷少年の表情を確認すると、何故か気まずそうにしている。


「どした?」

「……佐世保バーガー。実は、俺初めて食べるんすよね」

「え!ここら辺でずっと活動してたのに食ったことないの?」

「なんだ、嫌いなのか」


バルバトスの問いに屋敷少年は慌てて否定する。


「いえ、そんな!ただ、飯は基本コンビニで済ましてて。外食滅多にしないんすよ」


屋敷は2人の驚く反応にポリポリと頬をかく。

そして、気を悪くしたかなと気まずそうに屋敷少年は2人の表情を窺う。

だが、そんな事全く気にしてない2人は逆にコンビニの話で盛り上がる。


「コンビニ凄ぇし仕方ねえな。刺身売ってたの、あれはビビったぜ。流石日本ってな」

「俺も冬は肉まんついつい買っちゃうな。肉まんはベスト」

「あ?ピザまんの方が美味えだろ。なあ、屋敷。ピザまんだよな」

「え!えーと、そのぉ……………すんません、自分あんまん派です」

「「………あんまんかぁ」」


などと、アレもありだな、アイスはあれが美味かったと下らない話に花を咲かせる。

そのどうしようもなく生産性皆無でくだらない話は、どうしようなく屋敷少年には心地よかった。


そして楽しい時間というのは速やかに過ぎ去るもので、公園の駐車場に着いた。


公園のベンチで食べるのもありかと、うっすら候補としてかんがえていたが、あまりの炎天下のため、クーラーをガンガンに効かせた車内で食べることに決定。


「ほらよ」

「さんきゅ」


飲み物とハンバーガーを全員に配り分け、いざ実食。

冷めちゃったかな、と少し不安になっていたが、包み紙に包まれたハンバーガーは未だホカホカ。


「中身は?」

「ベーコンエッグバーガー。全員同じの頼んだ」


ちなみに飲み物は全員コーラをチョイス。

晴明はコーラ缶ミニサイズ。バルバトスと屋敷少年はペットボトル250ml。

ハンバーガーのお供に、映画「パルプフィクション」よろしく、スプライトもありかと悩んだが、汗を大量に流してカロリーを欲した体にはコーラが最適。


さてと。

包み紙をめくり、ハンバーガーとご対面。


「マックと比べてデカいな。横にも縦にも」

「口元汚さずに食うのが一苦労ですね」

「というか無理だな。ちなみにこれで1つ630円」

「「安っ!」」


包み紙の中には、サイズだけでなく、サンドされた具も豊富なハンバーガーが。


少し白めのパンズ。パンの上下をよく見れば、綺麗な円形の焼き色があり、マフィンのように見える。恐らく、挟む前に一度パンズも焼かれている!


そのパンズの間には様々な具が。

下からたっぷりのマヨネーズ、牛のパティ、目玉焼き、ベーコン、トマト、オニオン、トマト、レタスが挟まれてる。

なんとボリューミーか。

ちなみに、目玉焼きの黄身は敢えて潰され、しっかり火が入っている。半熟も好きだが、良く焼きであれば黄身を逃さず、余す事なく卵を味わえる。


「ん?……屋敷、俺ら気にせず先食べていいよ。一番お腹空いてだろうし」


晴明がハンバーガーを観察していたが、晴明が食べていないからと屋敷少年が律儀に食べるのを待っていた事に、晴明が気づいた。

バルバトスもウェットティッシュなど用意しており、まだ手をつけていなかったので、余計に食べ始めにくかったのだろう。

……というか、バトー。スーパーでウェットティッシュも買ってたのか。

指示無しでも購入して準備をするとは。流石である。


「……では、お言葉に甘えて。頂きます!」


晴明にそう言われて、屋敷少年はおずおずとハンバーガーをひと齧り。


……もぐもぐ


屋敷少年は良く味わおうと、しっかり咀嚼し、飲み込んだ。

さて、屋敷少年の反応は如何(いか)に?


「……お、美味しいです!何だろ、マックやモスと違って。なんか、日本風じゃないというか」


屋敷少年の感想は嘘偽り無く、心からの本音であった。


焼き色で分かってはいたが、パンズは焼かれていた。しかも、トースターなどでは無く、鉄板などでプレスされながら焼かれているので、思っている以上にサクサク食感。

この時点で、従来のパンバーガーチェーン店と一線を画す。


続けてバトーもハンバーガーに齧りつき、顔を綻ばす。


「ん。美味ぇな。確かにチェーン店のとは違った味だ」

「何だろ。ソースもそうなんですけど、お肉が違うんですかね」


屋敷少年が言っているのは、肉の品質がどうこうを言っているのではない。

特徴があるのは()()()だ。

今食べているハンバーガーの牛肉のパティはどちらかといえば薄くて広め。

厚さはマックのパティと近いか。

しかし、この薄さは荷重を加え、プレスしながら焼いたことによる物。

鉄板に押さえつけながら焼かれたことで、肉の表面に均一に高熱が行き渡り、自身の脂で揚げ焼きのように表面がカリカリしている。

この薄さだからこそ、肉肉しさとジャンキーさを併せ持つ美味さ!

肉は、一辺倒にただ厚ければいいという物ではない。


晴明もハンバーガーにガブリと一口。

口の汚れは気にしない。今は目の前の獲物(ハンバーガー)だけに集中する。


「もぐもぐ………美味い!ソースがピリ辛だから、食欲が増すな」


パティや目玉焼きにガリッガリに黒胡椒が荒く振り掛けられている。

しかし、このスパイシーさは胡椒だけではない。ハンバーガーの(かなめ)であるソースが、少し辛い。どこかメキシコを思い出すような……タバスコやサルサのような。

断定はできないが、……とりあえず美味いことには変わりない。


また、野菜が多いのも嬉しい。


「野菜があるとカロリーの罪悪感薄れるから良いよな」

「……今更じゃね?肉にマヨにポテトに、あとコーラ」

「……気分の問題なの。な、屋敷」

「えっ!そ、そうですね!」


バルバトスの痛い指摘に、目を逸らす晴明は屋敷少年に同意を求め、元気な返事が返ってきた。

良い子や、この子。


カロリーの罪悪感は置いとくとして、このバーガーにおいて、旨味として野菜の存在感はデカい。


レタスと玉ねぎのシャキシャキとした甘さ、トマトのジューシーさ。

見た目だけで無く、食感にも彩りを添えてくれる。


家でこんなバーガーを作ろうとすると水っぽくなって味がボヤけてしまうが。

たっぷりなソースとマヨネーズにより、見事に味が調和している。


そして、ベーコン。

たった1枚のベーコンなのに、侮るなかれ。しっかりとした存在感がバーガー内に確立されている。

カリカリになるまで火が入れられたベーコンの風味と脂の味が、ハンバーガーをワンランク上へと押し上げる。正に、縁の下の力持ち。


……さてさて、そろそろアレを行きますか。


口いっぱいに肉の脂とソースを味わい、堪能しているところで、晴明はコーラの缶のプルタブに手をかける。

プシュッとガスが抜ける音が、耳に心地良い。


すかさずコーラで口内を満たし、喉へと勢い良く流し込むように飲む。

ハンバーガーの四重奏の油分(うまみ)がコーラによって流され、喉で炭酸が弾ける。


「……くぅ〜ッ、脳が回復する〜!」


アホほど分かりやすいコーラの糖分(エネルギー)が疲れ切った五臓六腑に染み渡り、幸福感が湧き上がる。


バルバトスと屋敷少年は、晴明の飲みっぷりを見ると、ゴクリた喉を鳴らし、コーラに手をかける。


「「──ぷはぁ〜」」


2人は晴明以上に体を動かしたていたので、コーラへの渇望は晴明以上であるのは当然か。


更に!

炭酸とコーラの香辛料により、油クドさがリセットされる。

バーガーをがぶり。コーラをぐいっ。

バーガーをガブリ。コーラをぐいっ。

バーガーをガブリ。コーラをぐいっ。


……おいおい、永久機関が完成しちゃったぜ。


バーガーと炭酸の組み合わせを思いついた奴にノーベル賞をくれてやりたい。絶対にこの味は多くの人々を幸福にしていること間違いなしなのだから。


とまあ、永久機関なぞと言っているが。

悲しきかな。それは実在するわけがなく、


「────ごちそうさまでした」


あっという間にハンバーガーは胃の中へと消えてしまった。





ハンバーガーを食べ終えた3人は、再度晴明の運転で移動をしていた。

目的地は長崎にある土御門管轄の魔術支部。


───屋敷少年の身柄の引き渡しだ。


魔術師がわざと神秘を隠匿せずに暴れていたわけではないが、魔術的な力を持った屋敷少年が暴れていた事に変わりがない。


「事情聴取あると思うけど、正直に答えれば良いから」

「分かりました」

「あ、バルバトスが悪魔なのは内緒な。あと、バルバトスは日本で魔術師登録してないから、屋敷を捕縛しなのは俺だけってことにしといて」

「言ったそばから、正直に話せねえじゃん」

「……まあ、臨機応変って事で」

「ははは、分かりました」


身柄を引き渡すと言っても、逮捕や拷問、処刑をするわけではない。

屋敷少年は稀な天然種なため、処罰は重いものではない。

ただし、一旦拘束という監視下のもと、厳重注意の後に魔法技術の講習、魔術師協会への奉仕活動、魔術師としての登録などと、罰則やら手続きがあったりはする。


ちなみに、血縁者が不明で連絡も取れないため、屋敷少年の保証人は晴明が名義を貸すことに。


「一応、俺も土御門家には関わりある方だから。早く監視が解けるように掛け合っては見るよ」

「何から何まですみません」

「良いって良いって。他に頼みとかあったら言っときな」


何気に晴明が呟いた言葉に、屋敷少年は考え込む。


……何だろ、軍資金100万下さいとかだったら困るぞ。


少し不安になる晴明であったが、屋敷少年のお願いは意外なものであった。


「あの、晴明さんの弟子にしてくれませんか!」

「………で、弟子〜?」

「はい!魔術を教えて欲しいんです!」


真っ直ぐなお願いに対して、晴明は眉を下げて渋い声を出す。


「うーん」

「や、やっぱり難しいですか?」

「良いじゃねえか、晴明。ケチケチすんなよ」

「いや〜。面倒くさがってるわけじゃねえよ」


晴明は、「ただなぁ」と続ける。


「俺は、師匠から邪道的に教わったからな。初めの基礎がしっかりせずに、変な癖が付くのは正直避けたい」


癖が付くと、治すのに苦労する。


過去にも1人、晴明は同じように指導をせがまれた事がある。根負けした晴明は少し教えたが、癖までとはいかないが、変な指向性を与えてしまったのが否めない。


……しかし、言った手前、断るのも………………あ。


「なら、魔術学園行くか?」

「……へ。それってホグワー」

「違うよ」

「何だ。違ぇのか」

「何でバルバトスが1番残念がってんだよ。各国の魔術師の卵が集まる、ただの海外にある魔術学園だ」

「……それ、もうほとんどホグ◯ーツだろ」


バルバトスのガヤはスルーしつつ、晴明は屋敷少年に説明を続ける。


「そっちにコネあるから入学は出来る。ただ、すぐには無理だから、早くても1年後かな」


ただし、あちらはゴリゴリの実力主義と階級主義。

そして、屋敷少年の入学中の金は自身で稼いでもらう他ない。

何より、この魔術世界は、足を踏み入れればするほどに死ぬ危険性が高まる。

屋敷少年がそこに行けば、間違いなく厳しい目に遭う。確実に。


「けれど、そこで学べば、屋敷のその力を自分で制御出来る。本人の頑張り次第だけどな」


そう一区切りつけ、晴明は問いかける。


「その未来が過酷なのは保証する───それで、どうする?」

「行かせてください」


屋敷少年は問いに対して、一拍も置かずに応えた。

そこに不安はなく、強い意志を感じる。


屋敷少年が少しでも返答に迷ったら入学させない考えだったが、「しょうがない」と晴明はため息を吐く。


「けど、まずは土御門への奉仕活動済ませてからな。それが終わらないと、行けないからな」

「はい、頑張ります!」


元気よく答えた屋敷少年の顔からは、この世の全てに絶望していた悲壮感が全く消え、希望に満ち溢れていた。 





数年後、とある魔術学園で、1人の魔術師見習いの少年を中心に、さまざまな奇々怪界な騒動が巻き起こり、必死に解決に臨むのだが、それはまた別のお話。


運転終盤。

屋敷少年がある事を思い出した。


「あ、そうだ!」

「「?」」

「学園に行くなら、下の名前も必要ですよね」

「あー、確かに。───バルバトス、命名!」

「俺かよ!?」

「だって。俺、もう苗字考えたし」

「すみません。けど、是非バルバトスさんにお願いしたいです!お願いします!」

「えー、え〜……………ぅう、ただひと。そう、唯人はどうだ!」

「唯人………ありがとうございます!」


屋敷少年、改め、屋敷 唯人は命名に満足して大喜びの模様。

けれど、晴明はバルバトスをじーと見る。


「………何だよ」

「安直」

「うっせぇ」


肘が晴明の良い所にヒットした。

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