ウェルチン先生と悪口
ウェルチン先生は悩んでいた。
200歳を超えたあたりから皺が多くなった。
300歳を超えたあたりから目がひどくかすむ。
500歳を超えたあたりから耳がよく聞こえない。
900歳を超えたあたりから腰が痛む。
それよりもウェルチン先生を悩ませているのは乳袋だ。
若い頃はつんと上を向いて、
たわわに実ったメロームよろしく、
ボインボインと揺れた乳袋。
男たちはこぞって美しいウェルチン先生に踏まれたがった。
だが、現在の乳袋ときたら、
ウェルチン先生の腹の辺りまで垂れ下がり、
歩くたびにぶらんぶらんと年寄りの雄サザルのアレのようだ。
全く、邪魔なものだよ。
ウェルチン先生は乳袋を憎らしげにつまんだ。
しかし、今ウェルチン先生を悩ませるのはそんなものではない。
ウェルチン先生は左足の義足をがちんがちんと鳴らしながら廊下を歩く。
そして、一つの扉の前で足を止めた。
3年14組、ウェルチン先生のクラスである。
ちょうど始業のベルが鳴る。
ウェルチン先生は扉を開けて中に入る。
「さぁ、天使たち、ウェルチン先生の時間だよ」
ウェルチン先生は慈悲深く聖母のような先生で、
生徒たちを天使と呼ぶ。
天使と呼ばれた10歳くらいの20人の生徒たちは、きちんと席についていた。
「ウェルチン先生はずっと悩んでいたんだよ、天使たち。
何故かわかるかい?天使、セシル!前へ!」
質問しておきながら間髪入れずに一人の生徒を教壇に呼ぶ。
「はい、ウェルチン先生」
「天使セシル、あなたは昼休みに泣いていたね、どうしてだい」
「は、はい、ウェルチン先生……」
セシルは戸惑いながら、落ち着かない様子で指をいじる。
「セシル!はやく言うんだ!
ウェルチン先生は何でも知っているんだよ」
ガツンとウェルチン先生は義足を床に叩きつける。
セシルはびくっと、体を震わせ、口をひらいた。
「サスケ君に、悪口を、言われたから、泣きました」
「そうだろ、そうだろ、可哀想に。
ウェルチン先生がちゃぁんと助けてあげるからね」
猫なで声でウェルチン先生はそう言い、ぎっと、ひとりの生徒に目をやった。
「サスケ、お前はひどい天使だね!
羽をむしって、堕天使にしてやろうかね!」
ウェルチン先生はセシルの頭を撫でた。
「こぉんなにかわいいセシルに
ゲロクソバカグズウスノロ乳袋なし女なんて
なんで言ったんだい!このクズ!」
「先生、オレ、そこまで言ってないです、ノロマっていっただ…」
「おだまり!」
ガツンとウェルチン先生が義足を鳴らす。
「なんて言ったかなんて問題じゃないんだよ!
人の悪口を言う事は悪いことだ!そうだね、天使たち」
「「はい、ウェルチン先生」」
生徒たちが全員声を揃えた。
ウェルチン先生は満足そうに頷く。
「先生は悩んだよ、
どうやったら悪口を二度と言わない天使になるのか。
そうしてひらめいたのさ」
ウェルチン先生は魔女帽から杖を取り出した。
「なに、簡単なことさね」
生徒たちは震え上がった。
愛と平和と体現者ウェルチン先生は世界一の大魔女なのだ。