介護離職になっちゃって思うこと
五年前の夜、それまで普段通りにおしゃべりしていた母の舌がもつれてしまいました。
結果、脳幹小脳出血ということで抗血小板薬投与療法のみで治療が終了し、回復期リハビリテーション病棟に期限いっぱいまでいた母は車椅子での要介護生活となりました。
脳幹小脳出血はベテラン歌手の方が初老で発症されましたが、積極的治療としての手術や薬物療法がなく、血圧と血栓予防の治療くらいで、未だに天に召されてしまうことが多い脳卒中の一つです。
母の場合、奇跡的にも小脳失調症状と呼ばれる運動時の筋の協調動作ができなくなる症状と小脳の認知機能(認知症;dementiaではなく、cognitive functionの方です)障害による、高次脳機能障害でおさまりました。
ですが、上記の症状のために一日中、一人で家にいることができません。
外に出てゆくことがないだけ気が楽なのですが、こうなると、家の中の役割や負担が大幅に変わってしまいました。
私も医療従事者の一人でしたので、患者さんが在宅復帰できるように支援していましたが、いざ自分の家族のこととなると本当に大変でした。
当時70前で年齢的にも若いので、施設入所も他の利用者さんとは親子ほどの年齢差で交流できず無理でした。
ですので、デイケアとショートステイ、車椅子などの福祉器具のレンタルを組み合わせ、年に数ヶ月間、介護老人保険施設に入所してリハビリテーションに頑張ってもらっています。
父も高齢ですが自営業なので働いてもらっています。ですが戦前生まれの男性に介護をお願いするのは大変です。
私は一昨年までは仕事していましたが、月に数回の通院や母の体調不良などの付き添いもあり、有給休暇も減ってゆき、自分も体調不良が目立つようになり、上司から休みが多いためにかなり迂遠に心配されました。
宮仕えも長く続かないなぁと思った私はより時間が自由になるようなライフワークバランスをとることを決めて退職しました。
ですが、好事魔多しと言うのでしょうか?
退職するその月にそれまで介護を手伝っていただいていた親戚も体調を崩してしまいました。
もう辞めることは確定してしまったので、なし崩し的に働くことができない状態になってしまいました。
めちゃめちゃ、困りましたよ。
とりあえず、お役所を回りました。
鼻であしらわれるか、怒鳴られるかとビクビク足を運んだ役所でしたが、皆さん優しくしていただきました。
国民年金の支払いの休止と国民健康保険の軽減(前年度収入0でも免除にはならないんですよねぇ。。。)の手続きををして少しホッとしました。
ですが、税務署の場合は署員の人が数名集まって頭を寄せ合って考えてくれた結果が、全ての貯金と保険、固定資産を手放したら免除できますとすごく申し訳なさそうに言われました。
ハローワークでは相談員や厚労省の職員の方が親身に相談に乗ってくれましたが、勤務時間や体制とデイケアの時間などが合わずに難しいと言う結論になってしまいました。
結局働くことが難しく、母を一人にしておくこともできず、起業計画も一時休止になってしまいました。
両親の年金も零細な自営業なので国民年金だけで、気がつくと起業のための資金にも手をつけざるを得ませんでした。
相対してくれる公務員の皆さんはとても親身ですし、色々と考えてくれますが、そもそも制度設計的に介護をしながらの仕事は未だにとても難しいことが身をもってわかりました。
例えば仕事を探すのでも、保育園などは早朝保育や遅い時間までの保育などがあって、うまく組み合わせることで、09:00〜17:00まで働くことができますが、デイケアやデイサービスだと、9時ごろに送迎が来て、早い時間ですと15時ごろに帰宅します。
ですから、午前だけとか、午後だけとかのパートタイムするにはとても難しい状況です。
あとローカルルールかもしれませんが、同居家族がいる要介護者はヘルパーサービスが使えない場合があります。よしんば使えても、鍵を渡すことはマンションですと他の入居者との絡みもあって難しいですね。
税金の件も言葉は悪いですが、『身ぐるみ剥がしてからまた来てね♡』的な財務省の陰謀めいた印象を受けます。
各地方公共団体によって違うのかもしれませんが、介護離職者への援助が薄いですね。
介護離職してしまう人たちの年齢層は30代後半から50代くらいの社会でも管理職だったりと世間で一番働いて稼ぐ年齢層ですが、近年の家計収入が経済成長とリンクしていない状況で貯金が少ない割に支出が多い状況の人が多いと思います。この状況ですが経済的な援助は全くないのですよ。
海外では在宅介護している家族に対して、介護費用として少しは支払う国があるようですが、日本ではロハでございます。家族なんだから面倒見ろということです。
現政権では介護離職ゼロ政策を推進していますが、介護休暇や企業努力を求めますが、私のように成り行きで介護離職になってしまい、中途半端に父の収入があると制度の狭間に落ち込んでしまい何も使えなくなってしまいました。
心を鬼にして両親と生活を分離しようにも、両親の国民年金ですと二月に一回での支払いでひと月当たり一人6万程度です。
この額は生活保護費との逆進性が問題となって、未だに解消されていませんね。しかも生活保護と異なり、医療費、交通費、介護保険費などの公共費用を年金から支出しなくてはいけません。
本当に、これで実際に生活できるかどうか、政府関係者全員にも試してもらいたいところですよ。まったく。
憲法の文化的に最低限の生活の保障がされていないんじゃないかと思います。
どうしたらよいものか。
経済成長も華々しいとか、今回の選挙は安全保障が問題とか、十二分に分かっていますが、底辺の庶民はそんなことより、今の生活を守るためにおぜぜをくれるような候補者を選びたくなるという気持ちがよっくわかりました。
日本の保守政治家って大所高所の議論や歴史的、国の名誉の議論は大好きですが、こんな泥臭い話は苦手ですよね。
ここをもう少し攻めたらもっと理解が広まると思いますけど、如何なんでしょうか?