(第二章)ニート誕生
――俺は高校を卒業して晴れて自由気ままなニート生活が始まった。実家の近くに3LDKのアパートを借りて。勿論、出資するのは親だ。当然だ、散々労働させたんだから。月に15万円は安いくらいだ。
朝から晩までテレビゲームのネット対戦をする。時々、ワイドショーを観て休憩。そんな生活が数ヵ月続いた。
たまに兄が差し入れをくれる。『今日はフライドチキンか! 丁度夕飯の買い出しに行くところだったんだよ。建谷兄ちゃん、毎度あり』
『何が毎度だ。アルバイトくらいしたらどうだ?』
『そうだな〜、建谷兄ちゃんのスカイラインを貸してくれたら、1日頑張ってみる』
『R32のGTSーtタイプMだぞ?』
『ドリフトもやらないで機械式のデフを入れるなよ』
『免許証を見せてみ?』
財布から運転免許証を出して見せる。
『どう? 上手く撮れてる?』
『そうじゃなくて、マニュアル車オーケーなんだな?』
『8トンまでね。それと原付も運転出来るよ』
『で? 1日、スカイラインを借りて何をするんだ?』
『円書きくらいはやっておきたいじゃん。山奥の姫島に大きな駐車場があるよね。今夜辺り行こうよ』
『壊したら、働いて弁償してもらうからな?』
『オッケー! ぶつけたら弁償してやるよ』
モータースポーツはゲームの次に好きな事。F1、D1、ラリーが好きだ。壊さない自信はある。ドリフトのビデオ、DVD、ネット動画を穴が空くまで観た。
――姫島の駐車場まで20キロメートルくらいだ。俺の運転で行く。
兄がタバコを吸う為にウインドウを開ける。すると、スキール音が聞こえてきた。
『平日にやってる人が居るんだ、暇なんだな〜』
『二谷、本当にやるのか?』
『ビビってきた? 大丈夫だよ、アハハ』
『ビビってねえよ! 心配なだけだ』タバコを吹かしながら言った。
駐車場に着く時に3台のスポーツカーとすれ違う。丁度帰るところか。
『じゃあ早速やるから』
『壊すなよ!?』
俺は車を駐車場の中央で停め、クラッチを切り、ギアを1速に入れ、アクセルを踏み、クラッチを一気に繋ぐ。リアタイヤが空転して左右に振れる。取り敢えず、ステアリングを右に回し、車を回し出す。
『おいおい! 壊れちまうよ!』
レブがレッドゾーンに入る。一旦、車を停めて、2速にギアを入れて、今度は左回り回転する。自然とカウンターを当てる。
『アハハ、おもしれえー! 足周りはアンダーステアなんだね』
『知らねえよ、そんな事!』
――30分くらいやってると、兄が『そろそろ止めよう、マジで』
『分かった。余は満足じゃ』