祝杯
『翔? 翔じゃないか。久しぶりだな〜、元気か?』翔はレジの隣の列に並んでた。
『話は後でね』
俺と翔はスーパーマーケットの外のベンチに座る。
『今日は休みか?』
『正社員になってから初めての有休だよ。それより、クレイジーモンキーの名はネット界ではかなり有名だよ』
『実はサイバーブロッサムから社員にならないかって打診があった』
『もちろん、オーケーにしたよね?』
『当たり前じゃん、こんなオイシイ話。翔の戦績はどうなんだ?』
『総キル数は8万くらい、勝率は7割くらいだよ』
『結構やるじゃん。サイバーブロッサムからいくらか貰えるだろ?』
『月に数百円だよ。二谷君が異常に強いだけ。化けたね、今や時の人だ、アハハ』
『そうか、ネット界ではなんて言われてるんだ? 俺はSNSとかやらないし』
『アンチが目立つよ、奇人変人だとか』
『負ける理由を周りのせいにするタイプだな?』
『元々SNSはそういう特性があるのも仕方ないけどね』
『クレイジーモンキーはまだまだ強くなる! 昇華させる!』
『そのモチベーションはどこから湧いてくるの? 不思議だ。燃え尽き症候群とかにならないの?』
『子供の頃の強制労働で封印されていたのが、一気に解放されたのさ』
『そういえば、子供の時に二谷君がいじめてた、田辺洋介を覚えてる?』
『そんな奴も居たな〜。すっかり忘れてた、アハハ』
『IT企業の立ち上げに失敗して今はクラッカーだって』
『犯罪者か』
『じゃあそろそろ行くね。天才プロゲーマーを拘束しちゃいけない』
『もう行くのか?』
『これだよ』翔は小指を立て、駐車場の方へ歩き出す。
『ああ、女とイチャコラか。ちゃんとゴムを使えよ』
翔は片手を振り行ってしまった。
さて、俺は帰ってウイスキーと鰻重だ。
俺は駐輪場に行き、原付バイクの鍵を開け、フルフェイスのヘルメットを取り出し、買った物を入れる。もうちょい稼いだら車を買おう。
俺は無事に帰宅して祝杯を独りで挙げる。寂しくはない、慣れてる。車は何を買おうかな? 建谷兄ちゃんみたいにスカイラインもいいな、シルビアもいいな、景気よくR32スカイラインGTRもいいな。
俺はウイスキーをワイングラスで飲む、コーラ割りだ。一口ストレートで飲む。ベッドまで歩いて行けない。酔っぱらった。ソファーで我慢だ、暖かくなってきたし、風邪は引かないだろう。




