引きこもりを真人間にするNPO
――次の日の朝、俺の部屋のチャイムが鳴る。
誰だ!? こんな朝早くに! もう少し眠ってたいのに。ゆう子かな?
防犯モニターを見ると、知らない40歳くらいの男だ。
『新聞なら要りませんよ』
『あっ、おはよう。龍熊二谷君?』
『そうだけど、何か?』俺の名前を知ってる。生徒時代の先輩……? にしては老けてる。
『ちょっと話したい事があってね。出てきてくれる?』
『はい、分かりました』なんだろう? 宗教の勧誘だったらボコボコにしてやる。
俺はドアを開ける。
『君が二谷君だね? 希望のスパイラルの設楽という者だけど』
『宗教には入りませんよ』俺はドアを閉めようとすると、男は右足をねじ込んで止める。
『宗教じゃなくて、NPO法人だよ。話だけでも』
『融資なら、お断りだ』
『そうじゃなくて。我々は引きこもりを真人間にする活動をしていてね。親御さん、生活が厳しいって、今後どうするの?』
『それが何か? ……働けっての? 俺は一生分の労働をした』
『それは親御さんから聞いてるよ。でも今は働かないと』
『ゲームで収入を得てるから』
『遊んで暮らすのが許されると思うの!? どうせ些細な収入でしょ?』
『頭が固いんだよ。絶望感を与える説教するの楽しんでるだろ?』
『なっ、何を言ってる!?』図星か。
『サイバーブロッサムって会社がスポンサーになってくれてる』
『そんな旨い話がある訳ないだろ。騙されてるんだよ』
『根拠は? 確認もせずになぜ断言できる?』
『親に迷惑かけて恥ずかしくないの?』
『親が大変で収入がないなら、お前が金をくれれば良いじゃん』
『はぁ!?』
『はあ……、大した“力”もないくせに、人助けごっこをするな』
『自立してもらわないと……』
『だから! お前が金を寄越せば済む話じゃん』
『そんな余裕ある訳ないだろ』
『だから! 大した力がないのに人助けごっこをするな』
『そっ、それじゃあグループホームに入ろう?』
『俺を雑魚キャラと一緒するな』コイツは素人だ。話が噛み合わない。
『柔道やってたんだから立ち直れるよ』
『知った風な口を聞くな』カチンと来てドアノブを強く引く。
『痛い痛い! 親御さんは大変なんだよ?』
『もっと苦しめばいい。慰謝料だ。三段にならなきゃレフェリーにもなれない。初段を取らしたのは完全に親の世間体に利用された』
『もう来月から振り込みはないよ? 預金はいくらあるの? アパート代が払えなくなったら大変だよ?』
『お前には関係ない』
『今月中にアパートを退去してもらわないといけなくなるよ』
『だから! 金はあるって! 帰れよ、塩を撒くぞ?』
『分かった、また明日来る。一度頭を冷やそう』お前が頭を冷やせ。




