第十三話!
「おばちゃーん!大盛にしてー!」
ここは寮の食堂だ。漕艇部の練習が終わった後、俺達一年は寮食に直行した。いるのは七人中五人。真辺と柳原は寮生ではないのでここで飯を食べることはできない。時間は19時過ぎ。
「うー、疲れたー。覚えること多かったねー。」
黒木が大盛ご飯を前に唸っている。部活自体は17時には終わったって体力的にはそこまで疲れなかったのだが、一年生はこれからの部活前の準備を二年生から習っていたので遅くなったのだ。まず、部活は陸で基礎体力の向上を目的としたトレーニングをして、それから海に出てカッターの練習をするのが通常の練習のようだ。
そして、一年生に与えられる仕事が陸でのトレーニングを終えて、すぐにカッターの練習ができるように部活が始まる前にカッターを出艇できる状態に準備することである。
「だな。しっかりとやらないとな。明日は15時半にはポンツーン集合だったよな?」
「そ、そうだね。ぼ、僕ちょっと遅れるかも。」
時間の確認をした俺に大場が申し訳なさそうに言う。ちなみにポンツーンとは桟橋のことだ。二年生や三年生の先輩達はみんなこう呼ぶので、俺達も真似することにした。航海科には元から呼んでいたらしい。
「航海科は明日は授業が一時間多いんだっけ?終わったらダッシュだぞ。」
「う、うん。」
「お互い様だろ。俺らが遅い時は真辺と頑張ってくれよ!」
「わ、わかった。が、頑張るよ。」
そういっても七人中航海科は二人しかいないってのはきついよな。最初は鬼頭さんとかが手伝ってくれるから何とかなると思うけど。そういえば深川も航海科だったな。でも女子じゃ駄目だよな。女子も飲み物の用意とかいろいろあるみたいだったしな。まあ、今は早く覚えることが先決だ。なるようになるさ。
「そうっちゃ、鬼頭さんが言ってた試合っていつやっと?」
チキンカツをがっついていた佐藤が思い出したように聞いてきた。
「えーと?何か近くの学校と試合があるって言ってたやつだよな。一ヶ月後くらいだっけ?」
「正確には27日後だな。五月の第四日曜日。で、相手は隣の県にある栄清高等学校。うちの海青院との対校試合ってことで、名前は海栄戦。漕艇部だけじゃなくて、運動部が対校試合をやって勝ちの数でどっちの学校が強いかを決める。最初は漕艇部とヨット部が、新一年生を迎えて手っ取り早く試合をやるためにやりだしたらしいんだけど、どうせなら学校対抗にしようってことになって今みたいな対校試合になったんだと。」
…さすが瀬戸だ。何日にあるか聞きたかっただけなんだけど、ここまで詳しく情報を持っているとは。
「Aクルーも試合すんだよね?他の部もレギュラーと補欠で試合したりすんの?」
「部活ごとに違うよ。野球部やサッカー部は二チーム作れなかったりするから一年生メインで一試合だけするって。漕艇部は栄清高校もAクルー、Bクルー共に人数揃っているから両方やるってさ。」
黒木に説明する瀬戸。ほんとこいつって情報を集めるの好きだな。ほとんど趣味みたいなもんじゃね?
「…なら、どっちが強いと?」
佐藤が答えられるかな?というニュアンスを漂わせながら聞いてみる。
「部活対校試合になってから32回あって、海青14勝、栄清18勝。漕艇部だけだと、36回あって、海青が22勝、栄清14勝。ここ十年で漕艇部は一回しか負けてないらしい。だから漕艇部だけ見るとうちの優勢かな。」
瀬戸の流麗な説明に佐藤の顔には参りましたと書いてある。その隣では大場が愛想笑いを浮かべている。
「じゃ、じゃあ負けられないね僕達も。が、頑張ろう。」
「やっぱり勝ちたいもんね〜。デビューウインっていい響き〜!」
大場も黒木も気合十分って感じだ。俺も負けてられないな。
「だな。ちかい目標があってよかったよ。まずは栄清漕艇部に勝つこと!頑張ろうぜ!」
俺の言葉に他の四人が頷く。
「てか、時間ヤバイよ!俺達まだ風呂入ってないじゃん!」
おう、本当だ。もう19時半になるところだ。食堂も終わりの時間だが、風呂に入れるのは20時までとなっている。俺達は残りの飯を素早く平らげ、ダッシュで風呂に行く。何だかんだといろいろあって、部活第一日目は慌ただしく終わっていくのだった。




