第十一話!
「よろしくお願いします!」
そう言って深川は元気よく頭を下げた。
陸でのトレーニングを終えて桟橋に来ると、二人しかいないと思っていた女子部員が三人いた。一人は三年の高瀬さんで、もう一人も三年で吉本さんというらしい。で、最後の一人が鬼頭さんにアプローチしていた深川 栄子だった。
まさか本気で鬼頭さんを狙っているのだろうか?あ、鬼頭さんも微妙な顔をしている。
「艇指揮希望です!頑張ります!」
「頑張ってー!」
「かわいい!付き合ってー!」
三年生は皆さん大盛り上がりだ。去年は女子が一人も入らなかったので大ブーイングだったそうだ。
「それじゃ、AクルーとBクルーに分かれて練習始めるように。半田、16時30分に上がれるように頼むな。Aクルー乗れよ!」
島谷さんの号令で素早く出艇の準備をし、相馬さんと宮下さんがAクルーのカッターを桟橋に繋いでいたロープを引っ張って出艇を手伝っていた。どうやらああいう仕事も下級生の仕事みたいだ。あ、田口さんもAクルーに乗っている。
「田口さんもAクルーだったんですね。」
「ああ、あいつは仮入部の時は手伝ってくれてたんだよ。かなり助かった。」
「Bクルーも乗れよーって、そういやポジション決めてないか。鬼頭どうする?」
半田さんが思い出したように鬼頭さんに確認する。
「ちゃんと考えて来ましたよ。昨日寝る前に。」
「そんなに簡単に決まったんですか!?」
「いや冗談だって。」
…思わず聞いてしまった。
「ポジションも今決めても変わる可能性だってあるけどな。じゃあ、1番瀬戸!」
「え、はい。俺ですか。」
「とりあえず言われたところに乗ってくれ。2番山下!」
「はいよ!」
「3番相馬!」
「はい。」
「4番佐藤!」
「あ、はいっ!」
「5番大場!」
「は、はい!」
「6番黒木!」
「はい!」
「7番宮下!」
「うっす。」
「8番は俺、鬼頭!9番真辺!」
「…はい!」
「10番荒井!」
「おらきた!」
「11番柳原!」
「よっしゃ!はい!」
「12番加納!」
「はいっ!」
おお、もう呼ばれないと思ってたからちょっとびっくりした。
「とりあえずのポジションなんで、ちょくちょく変えていくかもしれないからそのつもりでいてな。」
「じゃあ、出るぞ!深川はともに乗っててくれ。きょうつけ番号!」
半田さんが号令を掛ける。
・・・・・・・・・・。
………あれ?確か番号を順番に言うんじゃなかったっけか?1番は…瀬戸だ!あいつ忘れてるのか?
「おーい!瀬戸が言わないと始まらないって。」
「あ!俺ですね、失礼しました!もう一回お願いします!」
隣の山下さんに言われて気付いた瀬戸が半田さんにお願いする。せっかくの漕艇部のスタートだからきっちり始めたいんだろうな。俺もその方がいい!
「おう。ビシッと決めろよ!きょうつけ番号!」
『1!2!3!4!5!6!7!8!9!10!11!12!』
「おもて離してとも離せ!」
半田さんの号令で相馬さんと宮下さんがカッターを桟橋から離す。漕艇部員としてのカッター初乗りだ!