プロローグ
中学三年の夏休みだった。高校の説明会に行くために、海沿いの道を一人で歩いていた。太陽がかなり高く上がっていて、とても暑かった。帽子を深くかぶり、少し俯いて歩いた。桟橋があり、船が泊まっていた。大きな船だなと思い、足を止めた。海青院高等学校桟橋と、書かれていた。これが学校の船なのだろうと思っていた。
「あいよー、あい!あいよー、あい!」
どこからか、規則正しい音が聞こえた。いや、声が聞こえた。
「おもてファイトッー!!!」
「オラー!ともファイトー!!」
「おっしゃっ!!」
「海青ファイトー!!!」
『おーっしゃー!!!!!』
いきなり聞こえた怒声に驚いた。そして、左手から桟橋に向かってくる小さな船を見つけた。
「あいよー、あい!あいよー、あい!」
「おらっ!メインばてんなコラッ!」
「おっしゃっ!バウファイト!」
「おらきた!!」
その船はエンジンが無い船だった。オールを使って漕いでいた。6人ずつ両側から12人で漕いでいた。
「あいよー、あい!あいよー、あい!」
一人が規則正しい声で叫んでいた。
「よしっ!ラスト!ダッシュいくぞー!」
一人が船の舵を取りながら叫んでいた。
『おっしゃー!!』
『おらぁ!こいやー!!!』
十二人が全身で漕ぎながら叫んでいた。
「ラスト三枚!一枚!二枚ラスト!ダッシュ!!!」
「いっちにー、さん!いっちにー、さん!」
『―――――――――おい!――――――おい!』
十四人が全力で漕ぎ切った。遠くに見えていた小さな船は、桟橋に到着していた。十四人は疲れ切っていたが、笑っていた。一人が着ていたジャージに漕艇部と書かれていた。
その間一歩も動くことができなかった。目を離すこともできなかった。もう忘れることもできなかった。
俺はこの高校に決めた。漕艇部に決めた。




