獣人
娘がひらがなの"む"を書いています!
"は"が苦手らしい。
「助けて下さい!息子を!息子を助けて下さい‼」
その日、うちの騎士団に駆け込んできたのは狐みたいな黄色みがかったケモ耳の女の人だった。
「息子が人さらいに!助けて!」
泣き始めた女の人の背中を撫でてあげると抱き付かれた。
「二番隊は全力で息子さんを探しますよ。」
私は女の人を抱き締め返した。
息子さんの特徴を聞いて私達は彼女の息子のフォルテ君を探す事になった。
フォルテ君は茶色の髪の毛に黄色の狐耳オレンジ色の瞳の男の子で身長は130㎝ぐらいだと言う。
私達は街の人に聞いて回りながらフォルテ君を探した。
「なんで誘拐なんかするんだろ?」
「姐さんは知らないのかい?獣人ってのは人間なんかより能力が高いんだよ!力も体力も!だからガキを捕まえて貴族に売ると高く売れるんだ‼獣人の魔力持ちは人間の姿を真似られるから捕まりにくいけど、魔力の無い奴等は捕まらないように力の強い獣人にくっついて暮らすんだよ!だから、あんまりこの辺で獣人を見たりしないだろ?」
「そうだね。初めて見たけど、可愛いよね!ケモ耳!」
団員の男の子は呆れたように言った。
「普通は怖がるんだよ‼獣人は簡単に人間を殺せるんだから!」
「でも、撫で回したいぐらい可愛いよね。尻尾も艶々でモフリたい!」
「姐さんは動物好きなんだね~!」
そんな話をしているとフォルテ君らしき子供を肩車している副団長の姿が目に入った。
「副団長が誘拐犯?」
「なんでだ?この子の母親を探している。」
「二番隊本部に居ますよ‼」
私は副団長の肩に乗るフォルテ君に笑いかけた。
「誘拐じゃなくて良かった~。お母さんが待ってるよ!」
フォルテ君は顔を赤らめて笑った。
「お姉さんは僕が怖くない?」
「なんで?可愛いくて抱っこしたいけど?」
フォルテ君は副団長の頭に手を置くとぴょんっと翔び、私に抱き付いた。
可愛い!モフモフの耳が顔にあたってくすぐったいが、何だか幸せだ。
「ケモ耳!可愛い‼」
「………」
副団長はかなり驚いた顔をしていた。
「怖くないのか?」
「何が怖いんですか?可愛い以外の何物でもないですよね?」
「普通は怖がるんだ。」
「ふーん………他の獣人さんにも会ってみたいな~。」
私の言葉に副団長は苦笑いを浮かべた。
二番隊につくとフォルテ君はお母さんに抱き付いた。
「良かった‼フォルテ!」
「ママ~。聞いて!お姉さん、僕が怖くないって!エヘヘ!」
可愛いな~。
私はそんな二人を微笑ましく見つめていた。
「あの、無理はなさらなくて大丈夫ですよ。」
控え目にフォルテ君のママさんがそう言った。
「獣人は、怖いですよね?」
「まったく!ケモ耳素敵です!私が住んでいた所では獣人さんは居なかったのでワザワザ似せたケモ耳カチューシャつけたりしてましたよ!やっぱり天然の美しさにはかないませんけど‼」
フォルテ君のママさんは苦笑いを浮かべた後、泣き出してしまった。
何か悪いことを言ってしまっただろうか?
「ごめんなさい………嬉しくて………」
ママさん!
私は思わずママさんをギュッとハグした。
ママさんはさらに泣いてしまって私はオロオロしてしまったが、その後ママさんと仲良くなって友達になった。
帰るというママさん。
名前をフォルアンダさんと言うらしい。
私は少し送って行くことにした。
「獣人に怯えない女の人は、初めてで……」
「そうなんですか?可愛いのに。」
「そんなこと言われたことが無かったので………嬉しくて……フォルテはまだ、獣人が怯えの対称とは知らないので………」
私は首をかしげた。
「怯えの対称?普通の人ですよね?」
「え?」
「違いますか?それにもう、友達でしょ?」
「………」
私が笑いかけるとフォルアンダさんはまたウルウルしていた。
少し先をネコを小走りで追いかけているフォルテ君を見て私達は笑いあった。
その時私とフォルアンダさんの目の前に男が現れ、霧吹きの様な物で何やら霧じょうの液体を吹き付けられた。
考える事もできないまま、私は意識を手放したのだった。
「ウチはアイドルになれないなら、絵本作家になるんだ‼」
って娘に言われました。
何故か、我が娘は自分の事を"ウチ"と言います………
何故?




