仕事をクビにされました。
初めましての方もそうでない方も宜しくお願いいたします‼
「君はクビだ。」
務めていた探偵事務所の所長から朝一で言われたのは私のクビを知らせる一言だった。
「はぁ?」
恰幅のいい腹をユサユサさせながら所長は言った。
「どうしてもそれが嫌なら僕の愛人にしてやるがどうする?」
私は艶っぽく笑うと所長に近より所長の顔のラインを手で撫でた。
所長の鼻の下がのびている。
キモ!
私はそのまま所長の薄くなった髪の毛を掴み上げて、ヒクヒクとひきつる笑顔のまま言った。
「このチビデブうすらハゲ!愛人なんかになるわけねーだろ!調子に乗ってると、このなけなしの髪の毛全部引きちぎるぞ‼」
所長の顔色が真っ青だが気にせず続けた。
「私ね。この間、所長にお尻撫でられた時にはいてたレザーのミニスカート………所長の脂ぎった指紋がべったり付いたミニスカートは知り合いの大学教授に指紋とってもらってるからセクハラで訴えられるの!ねえ、所長!裁判で私と戦うのと私に少し多めの退職金渡すのどっちが良い?選ばせてあげる。」
「………た、退職金払います‼」
「良い子ね。そのお金はここの施設に寄付してね!寄付しなかったら裁判だから!」
私は施設の名前と住所を書いた紙を所長に渡し所長の頭をペチペチ叩いてからその場を後にした。
住んでいた家は仕事場の寮だった。
海外旅行用に買ったトランクに洋服や貴重品を詰め込み私は寮を出た。
一度施設に行って妹みたいに可愛がっていた永原道に会いに行って癒されよう。
私はそう決めて施設に向かった。
施設について先生達に話をするとミッちゃんはもうこの施設には居ないって言われた。
しかも高校の卒業式の次の日から連絡が取れないって聞いて私は最悪を想像してしまった。
そんな時だった。
あの男が現れたのは。
「道君の婚約者の緑川雷と言います。道君は今マタニティーブルーで外出を嫌がっていまして、代わりに俺だけうかがわせていただきました。」
イケメンだけど胡散臭い。
施設長との話が終わって帰ろうとしている緑川を捕まえて私は言った。
「道に会わせなさいよ‼」
「君は?」
私は財布から去年道と一緒に海に行った時の道とツーショットの写真を出して言った。
「私は道の姉代わりよ!」
緑川は私から写真を受け取りうっとりと見つめて言った。
「この写真下さい。」
「嫌よ!」
「道君は俺の前で水着なんて着てくれないだろうから下さい!」
水着姿を見せられない婚約者ってなんだ?
「その写真あげるから道に会わせて。」
緑川は驚いた顔の後ニヤリと笑った。
「なによ!」
「いや………そんなことより君、大きな荷物だね。」
「………仕事クビになって寮追い出されたんだから仕方ないでしょ。」
「好都合。」
「はぁ?喧嘩売ってるの?」
「君が側に居れば道君は喜びそうだ‼そう思わないかい?雛ちゃん。」
私は緑川に名前を言っただろうか?
「陣川雛菊ちゃんだよね?道君がよく話してくれていたよ。雛菊ちゃんって呼ばれるのは嫌いなんだよね?」
「解ってるなら呼ぶな。」
私の言葉に緑川はニヤニヤしながら言った。
「道君に会わせてあげるからついておいで。」
私は緑川について行く事を決めた。
連れていかれるのが異世界だと知らずに………
読んでいただけて嬉しいです‼