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2話 ギルド

なんとか2話目です



翌日、ライトはミミを連れて町を散策していた。もちろん、ミミは隠さないといけないのでバッグーーー

に、入ってもらおうと考えていたのだが、ミミが、


「潰されたくない!」


と泣きながら訴えてきたので、今はライトのフードの辺りに隠れてもらっている。


いざ町に出てみると、ミミは興味があるものが見るとすぐ飛び出そうとする癖があるようで、止めるためにライトがフードを押さえるのだが、その度に「うっ」とか「ぐえっ」という声が漏れてしまい周囲の人に変な目で見られてしまう。


ライトは苦笑いをしてやり過ごすのが癖になってしまいそうだった。






「ライト!ライト!あれあれ!美味しそう!」



ミミが興奮しながら指差しているところを見ると、そこには果物販売の露店があった。



「あれ欲しいの?」


「食べたい!」



目を爛々と輝かせるミミを見て昼時だしちょうどいいかなとライトも思い、いくつか果物を購入した。


他にも家畜の肉での串焼きなどもあったので多目に買う。ミミの方はというと、最初に買った果物がよほど気に入ったようで、小さな実がたくさんなっている果物を一粒一粒幸せそうに口に運んでいた。







「今日はギルドに行こうかな」


通りを歩きながらライトが行き先を告げるとミミは小首をかしげた。


「ぎるどってなに??」


「ああ、ギルドっていうのはーーーー」



元々ギルドとは新大陸に来た開拓者に仕事を紹介する場所だった。今では少し変わり、活動内容は多岐にわたるが、主に魔獣等の討伐、捕獲や未開拓地の探索などのサポートを行うことになっている。


一応それ以外の安全な依頼が来ることもあるようだが、ギルドは「危険な依頼を頼む場所」として定着しているようでその数は少ない。


「まぁ、簡単にいって仕事を紹介してくれるところだよ」


「ふーん、どうしてそこに行くの?」



ミミの問いに、ライトは皮袋を持ち上げて答える。



「昨日とってきた薬草を渡しておきたいのさ。依頼の分を渡してお金をもらっておきたいからね」





○○○○○○○○○




ライト達は数分歩いてギルドの前にたどり着いた。人二、三人が通れそうなくらいの入り口に、新大陸の大まかな形とツルハシをあわせた看板がかかっている。


ツルハシは開拓者を象徴しているらしいのだがライトは最初、炭坑で働く人のための酒場だと思っていた。


その際はギルド職員の人や開拓者に大笑いされてしまった。とても恥ずかしい思い出である。



ギルドに入るとちらほらと武具を装備した男達が目に入った。女性はいない。開拓者になるのは男性ばかりではないのだがやはり女性はすこし少なく、割合としては六対四、もしくは七対三程度だ。とはいってもギルドを全体的にみた統計らしいので、田舎の方に位置する町に当てはまるかといったらそうではないのだろう。



ギルド、といえばやはりピリピリした空気もしくは騒がしいイメージがありそうなものなのだが、ここは異なる。土足で入るはずの床は意外にもきれいで、ほぼ砂埃も見当たらない。木製のテーブルや椅子もよく磨かれているようで見ていて気持ちがいいものだった。



(あ……)



その分、ライトは砂たっぷりの土足で上がってしまったことを後悔した。折角綺麗にしてあるものを汚すのはどうしても忍びない。



「そちらの方、こちらにどうぞ」


「あっ……はい」



多少落ち込んでいたライトに声がかけられる。窓口に座っていたのは二十を過ぎたくらいの女性。整った顔立ちとまとめられた金色の髪。澄んだ水色の目も合わさって優しげな感じがする人だった。



「本日はどのようなご用件でしょうか」


「………………」


「…………?」


「………………」


「……あの、えっと、私の顔に何かついてます?」


「あっ」


ライトは慌てて目を両手で覆い隠し後ろを向いた。彼女の一言で正気に戻ったのはいいのだが、いかんせん今のはまずい。そう思ったライトは仕切り直すことにした。






一、二歩と下がって………






「あっ……はい」


「そこからですか!?」




○○○○○○○○○○




「本日のご用件は?」



と、少し呆れた顔で問われる。ライトは、今の反応ダメだったかな、と頭をかくと皮袋を取り出した。



「依頼完了の報告です。薬草を渡しに来ました」


「分かりました。ギルドカードの提出をお願いします」



そう言われてライトは懐の中からギルドカードを取り出した。黒い長方形に白い文字で書かれた情報欄。これが現在のライトのギルドカードだ。一枚目を職員に渡した後、二枚目の緑のカードも取り出す。



「ーーーーーー!…………ライト………セオレンさん…ですね」



職員の女性はライトのカードを見るや否やその水色の目を大きく見開いた。



「あれ?変なところでもありましたか?」


「い、いえ、…この辺りで二種ランク取得の方は珍しいと思いまして……」


「ああ、そういうことですか」



ギルドには依頼を受ける際、情報の管理やサポート等をしやすくための独自のシステムがある。その中でも重要な役割をしているのがギルドカードだ。ギルドカードは自分の身分証明以外にも、開拓者ランク、受注中もしくは完了済依頼などの情報を保存しておける便利道具で、ギルドに登録するときに一緒に渡される。



数十年前までは手書きで行っていたそうなのだが、近年は魔法の解明が少しずつなされてきたために情報の書き込みなどが容易にできるこのカードが広まったらしい。



また、開拓者ランクというのは実力のない開拓者が無駄に死ぬのをなくすためのもので、IからSまで十段階に分けられる。これが高くなるほど難度が高い依頼にも参加できることになっている。必然的にランクが上がると稼げる金も増えるが、開拓者達は安定した収入を得られる目安ーーー下から四番目のFランクを目指している者が多い。



ちなみに今までの最高ランクであるSランクに達したのは八人。そのうち三人は亡くなっていて、四人は現役、一人はランク剥奪中だそうだ。





また、開拓者ランクは二つに分けられている。



一つは討伐ランク。その名のとおり討伐とは魔物や獣との戦闘をこなすもので、危険なものとなると大陸の奥深くまで行くものもある。実力がものを言うためにランクが高い者はなかなかいない。



もう一つは探索ランク。こちらは素材の収集や未開拓地の調査が主な仕事となる。討伐と比べて簡単なように見えるが、少人数もしくは一人で行くことが多いので難度は高い。他にも薬草や魔物の知識が多量に必要になる。



マイアが言った二種ランク取得というのは討伐、探索、どちらのランクも取得していることを言う。どちらか一つのランクを取得するのが一般的なので、ライトのようにどちらもランクを持っているのは珍しいのだ。欲を出して二つともとる人がいるが、そういう輩に限って長続きしない。



「俺は探索の方が主ですよ。そっちはDランクですけど討伐の方はHランクですし。ここ近辺は田舎の方だから、ランクが高い人もあんまりいないんです。たまに討伐依頼があるから昔取っておいたんですよ」


「そうなんですか…。あ、申し遅れていました。この度このギルドに勤めることになりましたマイアといいます。よろしくお願いします」



そう言って職員ーーーマイアが腰を折る。ライトも「あ、確かに名前聞いてなかったな」と納得しながら挨拶を返す。



「はい。こちらこそ」



「では、ライトさん。なにか新しい依頼を受注されますか?」



「そうですね………。最近薬草ばかりとっていたのでそろそろ探索をやっておきたいと思うのですが、何かないでしょうか?」



「はい、それでしたら……」



マイアは窓口の横にある引き出しから何枚かの書類を取り出す。



「この町から少し離れますが、ロハスとこの町の街道沿いから西に行った森への探索依頼があります」



ロハスというのはこの町も入っているロハス領の中心の町だ。領の中心だけあって周りは石が積み上げられた壁で囲まれているし、兵士や警備隊も常駐している。商人もよくロハスで商いをすると言うから、の影響でかなり栄えている。



「その森の魔物、獣が最近凶暴化しているようなのです。なので、その凶暴化の原因の解明と解消が今回の依頼内容となっています」



「えーっと、解明だけでは報酬はないんですか?」



「少々お待ちください」



一枚数秒で目を通しているようにマイアがペラペラと書類をめくっていく。結構手慣れているようですぐに情報は見つかった。



「一応、原因解明だけでも報酬は出るようです。ただ少々金額は少なくなりますね」



ライトは腕組みをして考えるような仕草をした後、皮の袋を取り出した。中には数枚の銀貨と十数枚の銅貨が入っている。いつもならそれだけなのだが、今日は他のものも入っていた。



ライトが袋を開けると、



(ツーマーラーナーイー!!!)



ミミが小さい頬を真っ赤に膨らませていた。さすがにミミをそのままフードの裏に隠しているとギルド内で見つかる可能性があったので移動させておいたのだ。本人としてはとてもつまらないだろうが、念のためである。



(色々見たいって言ったのに何で袋の中なのっ!!)



それを見たライトは「仕方ないなぁ…」と呟いて、



「じゃあ、その依頼、受けます」



と苦笑ぎみに告げたのだった。







誤字・脱字よろしくお願いします。



書けたら投稿する予定になっています。

ただ、ここ一年は忙しいです。

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