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序
序
幼い頃から、お伽話は読んでもらえなかった。
子守唄代わりに聞かされたのは、いつも同じ言葉。
ラーラは草原に寝そべり、空を流れる雲を見つめていた。低いながらもそこは山の頂だから、空が近い。
黒くて長い髪が、緑の草の上に広がる。少し目線をずらせば、マゼンタ色のちいさな花が風に揺れていた。
退屈な毎日。
何かが違うと思いながら、何が違うのかすらわからない。お伽話がこの世に存在する物だって知ったのも、つい最近のこと。
十七年間、山から出た事はない。ふもとの森までが、ラーラの生きる領域だった。だから、普通がなんなのか。正しいこととはなんなのか。
『人を、愛してはいけないよ』
繰り返し言われた言葉。
今現在、理解出来ていない。




