混沌な一時
第4話
俺はリリィについて行き、城の大浴場にいた。大浴場というだけあってとても広く、自分一人では持て余す程であった。
「城の浴場ってだけあってやっぱりすごいな…学校の体育館ぐらいあんじゃねえかな?」
浴場の大きさに感嘆としながら俺はゆっくり湯に浸かった。
「あーあったけぇ…この変な世界にきてからやっと落ち着けたような気がするな…思えばここに来るまで酷い目にあってきたな。」
トラックにひかれたと思ったらこの世界に居て、森から出れたと思ったら、反乱軍やら化物に襲われたりで大変だったな。
だけど…
「俺は逃げる最中にリリィと会ったおかげで脱出できたんだよな…そうリリィの…」
その時俺は思い出してしまった。あの時俺はリリィと…キスをした。
「つつつっ!」
事故とは言え俺はリリィとキスをした。まだあの時の感触をしっかりと覚えている。
俺のファーストキスは甘く、温かく、そして…柔らかかった…
「ああ!クソッ!忘れろ忘れろ!!何変な事を考えてやがるんだ俺は!アレはただの事故だ!正気に戻れ!」
自分の中に渦巻く何かを抑えようともがいていると…
「…お前はいったい何をしているのだ…」
やっと正気に戻りかけていた所で俺に声をかけてきた方を見た。
そこにいたのは…
「リッ、リリィ!!」
そこにいたのはリリィだった。
タオルを身体に巻いただけのあられもない姿で立っていた。
「何を驚いている?まだ案内する所は残っているのだ。それまで一緒に行動するのは当たり前じゃないか。」
「あっ、当たり前ってお前…そんな格好で…」
「はぁ?さっきからお前は何を言っているんだ?ここは浴場なのだから服を脱ぐのは当たり前だろうが。」
そう言うとリリィは隣まで来て湯に入ってきた。
「ふ〜やはり湯はいいな。疲れた身体をこうも癒してくれる。」
リリィの身体が桜色に染まり、ほてっていく。
戦場で戦う騎士のわりに身体には傷一つ無く、肌はとても透き通っており、濡れた金の髪を手櫛でとかす仕草に、色っぽさを感じた。
戦場で出会っていなければ、彼女を美しい貴族の令嬢だと思っていただろう。
その何処か気品のある姿に、俺は見とれていた…って
「いやいやいや!まず何でリリィが男湯にいるんだよ!」
そう言うとリリィはため息を吐いて、やれやれとあきれ始めた。
「全く…いいか友綺。お前はどうやら私の事を女だと思っているようだが私は…男だ。」
その瞬間、俺の思考が停止した。俺はリリィとキスをした。そしてリリィは男だった。俺のファーストキスの相手は美しい少女だった。
しかし彼女は男だった。
彼女の姿はまごう事なき美少女だった。
だが男だった。そしてさっきまで俺は、彼女の事を考え悶えていた。
しかし彼女は…男だった。
「嘘だぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間俺の中の何かが崩れ去った。
「お、俺のファーストキスが男だと…!いや、それ以前にリリィが男だと…!ばかな!!どう考えても女の子じゃないか!!!」
「…お前がどう思おうとも私は男だ。」
「そんな…そんな…こんな事あるわけがない。そう!リリィは男の子じゃない、女の子なんだよ!神々の悪戯によって本来ついていないモノがついているに過ぎないだけだ!!そうだよ!リリィはリリィなんだ!むしろ性別もリリィだ!だから別に俺は男とキスをしたわけじゃない!リリィとキスをし…ぐはぁ!!」
「うるさい!ゆっくり風呂に入れんだろうが!!それとあの時の事を蒸し返すんじゃない!!」
俺は暗くなってゆく視界の中で、騎士としての強さと少女の可愛らしさを持つ美少女(?)の姿を見ながら意識が途切れた。
しばらくして…
「う〜ん、俺にいったい何があったんだ?」
気づいた時、城の中の俺がこれから住む事になっているという部屋で寝かされていた。
どうやら浴場で倒れていたようだが、俺の記憶はリリィと浴場に向かう所で終わっている…リリィに何があったのか聞いても「うるさい!黙れ!!」と怒られてしまい、俺は浴場で何があったのかは、わからずじまいであった…。
第4話「混沌な一時」を読んでくださってありがとうございます。
この話しは友達が暴走し「R−18指定に引っ掛からないと良いなぁ」という思いで投稿しました…
今回の担当者はロリコン大魔王様です。
こんなんですが次回もよろしくお願いしますm(__)m