招かれし者
第3話
「ようこそ、ヴェスパニア帝国へ。星の導きの旅人様。」
今俺はヴェスパニア帝国の女王様と面会している。
普通の高校生が一国の女王様と会っているなんてありえないことだ。
「私の名はメアリー・ローレライです。旅人様のお名前を教えてくださいませんか?」
ローレライ、確か妖女のことだったな。
もしかしたら歌声で敵を倒せたり出来るのかとか考えていたが一応女性を待たせるのは悪いので自己紹介をすることにした。
「本多友埼だ。さっきから気になっているんだが『星の導き』ってなんだ?」
「それはですね〜。」
簡単に説明すると、この世界では星々には神が宿るとされているから星占いで国の今後を決めているらしい。
そして俺はオリオン座の導きでこの内戦を終わらせる旅人となっているらしい。
「なるほど…わからん。」
ドンッ!と物凄い音と共に1人の女性が入ってきた。
見た目は同じくらいに見えるが多分若君ってやつだろうな。
「バカ母!また星占いでガラクタを拾って来たんですか!!」
俺の方を指差している。
全く人の事をガラクタ扱いとはどんな教育をしているのか疑問だが。
「お父様がこの星占いのせいで死んだのに!まだ頼っていくつもりなんですか!」
「まったくフィーネ…少しは姫としての振舞いをしない。プライベートだけなら良いですが…大切なお客様の前なんですからね?」
フィーネと呼ばれる姫が俺を睨みながら近づいて来た。
近くで見ると大きく見え、コツコツと音が聞こえるからヒールを履いているんだろう。
「な、なんだよ…ぐはぁ!」
突如フィーネは俺の腹を蹴ってきた。
ヒールでだ、まさかスカートを気にせず蹴ってくるなんて予想外だった。
「ガラクタは平伏してなさい!」
それだけ言うと部屋を出て行った。
「大丈夫ですか?まったくあの子はそこまでしなくても良いのに。」
「詳しい話…聞かせてください。」
それから長い話がはじまった。
これまでとこれからの長い話が…
「昔あるところにある家族がいました。その家族の父は星の導きに従って命を懸けた大軍に参加しました。そして勝利しましたが帰る途中に死んでしまい、それから1人娘は星〈かみ〉を恨んでいます…今もなお。」
星の導きのせいで父親を失ったのか、俺にはわからないことだが世間一般からしたら当たり前の反応なのかもしれないな。
「さて、この話はこれくらいにしてあなたがこちらに来るきっかけを教えてくれませんか?それによってはあなたを戻す方法が替わりますから。」
「トラックと言う物に…この世界で例えるなら馬車に轢かれ目が覚めたらこっちにいた。」
メアリーの顔が俯いて一瞬空気が重くなった気がしたがすぐ最初と同じ静かな空気に戻った。
「あなたは自分の世界が嫌いなんですね…死をキーとした場合は帰還方法はありません。もうここで骨を埋めるしかありません。」
「別に良いさ…元々あの世界に戻るつもりはない。だから仕事をくれよ。俺にも出来るやつをな…」
メアリーの顔が明るくなり、声も最初の時のように元気になっているような気がした。
「なら…フィーネのナイトは執事の仕事もあるから頑張ってね。そうだリリィを呼んでくれる?新米ナイトに色々と教えないといけないしね♪」
執事だとナイトって護衛じゃないのかと驚いていると後ろの扉が開くとメイド達と共に洞窟で出会った美少女がやって来た。
「よし、お前達!新米ナイトを歓迎してやれ!」
メイド達が少女の合図と共に俺を取り囲み服を引っ張り始める。
「お、オイ!てめぇらこんなことしてどこが歓迎だ!や、やめろ!脱がすな、オイ!」
俺は脱がされ新しい服、王家の人の専属ナイトのそこそこかっこいい服に着替えさせられた。
「よく似合っているぞ新米。さて、ここのことを色々案内してやるからついてこい。」
そして俺は少女の後に続いてメアリーのいる部屋を出た。
「まずは武器を選んでくれ。姫を守るために必要だからな…こっちだ。」
案内された部屋に入ると大量の武器があった。斧に剣に洋刀それに槍にハンマーと俺の世界ではバトルアックスと呼ばれる物まである。
「どれにするか迷うな…これ重くないんだな。」
「あぁバトルアックスか…帝国は鉱物資源が豊富だから軽くて丈夫な武器が作れるんだ。」
1、5mあるバトルアックスを片手で振り回すがあまり肩に負担がなかった。
「これよりデザインのいいやつはあるか?」
「それは最低限の課程を終えたらお前の武器が貰える。」
課程が終わってからか…それがどのくらいで終わるのかがわからないがやるしかなさそうだ。
そして俺はバトルアックスを背負って廊下に出る。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は本多友埼だ。あの時は世話になったな。」
「王室親衛隊のリリィ・カーティスだ。一応お前の上司になるが今回、お前がやることになっている仕事は本来ないんだがメアリー様が決めたから私は仕事内容は知らない。取り合えず頑張ってくれ。」
俺しかいないフィーネのナイトか、あの於転婆娘〈おてんばむすめ〉のことだから大変になりそうだ。
そして次に帝国図書館に案内された。
「な、なんて広さだ…バケモノ並だな。」
「まぁここが一番大きな図書館だからな。ここに勝る場所はないぐらいだ。次に行くぞ。」
次の場所は外だった。
そこには模擬戦をしている人がいた。
「さて、お前の実力を少し見せてもらおうか。」
リリィが1人の兵士を呼び俺の前に立たせる。
「今からコイツと一本勝負をしてもらう。相手に一撃を与えれば勝ちだ。」
相手は普通の剣士だ盾と剣を持っている厄介なタイプだパリだったかそんな名前の行動をしてくると悪友がゲームの知識を言っていた気がする。
「わかった、やろう。」
バトルアックスを手に持ち相手を見る。
相手は剣をしっかり構えているが盾がフラフラしているのが怪しい。
「試合開始!」
俺は合図と同時に動くと相手を叩き潰す為に振るが「それを待ってました」と言わんばかりに盾がパリをするために前に出てきた。
「やっぱりか、この野郎!」
まだ少し余裕がある体のバランスゆあえて崩して盾に当てるとそのまま地面に突っ込む体勢になるのを利用して再び相手の前に立つ。
「カウンターをかわすか。」
「もう終わりにする…」
相手にギリギリまで近づいて蹴り盾を強制的に使わせる。
「終わりだ。」
相手の横っ腹に一撃を与えてこの試合は友埼の勝利に終わった。
「見事だな、お前名前は?」
「本多友埼だ。さっきの一撃を喰らったばかりなのによく平気だな。」
相手はピンピンしていた、まったく不思議なところだ。
「この程度でやられるほど弱くない。俺の名前はヴァレッタ・ファビウスだ。よろしく!」
「よろしくヴァレッタ。」
「盛り上がってるところで悪いが次の場所に案内しないといけないんだが…」
「そうか、それじゃあ行こう。またなヴァレッタ。」
そして次の場所に向かう事にした。
「そういえば友埼。まだ風呂に入ってなかったな?」
「そうだ。」
今まで一回も入る機会がなかった。
捕まるしいきなりナイトにされるしそれに案内まで始まったせいで風呂に入れてなかった。
「なら今から風呂に行こう。どうせ案内することに変わりないからな。」
もうリリィの中で決まっているようだ。
「わかった。そうしよう。」
「よし、ならこっちだ。ついて来い。」
第3話「招かれし者」を読んでくださってありがとうございます。
今回の担当者は超電磁ボーイ様です。
次回作は私でも予想外な展開になっており驚きました(苦笑)
では次回作もよろしくお願いします。