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初めての異世界

「はぁ……めんどくさい」


 僕は学校から家への帰り道、1人でとぼとぼと歩いていた。

 何がめんどくさいって、もう何もかもがめんどくさい。朝、母親に起こされるのもめんどくさいし、学校行くのもめんどくさいし、授業受けるのもめんどくさいし、友達と会話するのもめんどくさいし、宿題をやるのもめんどくさい。こんな窮屈な世界の何が楽しいのかわからない。

 どこかまったく別の世界に行って、冒険したい。そこで僕は勇者になって魔王を打ち破り、国を救った英雄になって、お姫様と結婚する。

 そんな破天荒な人生を送ってみたいのに、人生ってやつは、どうしてこうもつまらないんだろう。

 このまま生きていたって、みんなと同じことをして、同じように生きて、そのまま高校、大学にいって就職して、適当にあくせくしながら働いて、そして死んでいく。

 ……全然面白そうじゃない。


「はぁ……なんで僕、こんな世界に生まれちゃったんだろう?」


 何か、突然異世界へのゲートでも開けばいいのに。


「……そこの少年。つまらなさそうな顔をしているね」


 ……誰だ? 突然話しかけられて、僕は歩みを止めた。

 声の低い、大人の男の声がどこかから聞こえたのに、あたりを見回してみても、誰もいない。


「どこを見ている? 上だよ上」


 ……上? その声を聞いてふと上を見ると、2階建ての家の屋根の上に、黒いマントを羽織った、30過ぎくらいのおっさんが立っていた。


「変質者?」


 その男を見て、最初に出た言葉がこれだった。後で思うと、失礼な言葉だったと思うが、つい出てきたのだから仕方ない。


「誰が変質者だ……まったく、最近の若者は言葉を知らなくて困る」


 ……突然屋根の上で仁王立ちしている男を見てしまったら、誰だって変質者だと思う。


「まあいい、ところで少年。私は今、暇でな」


「……浮浪者?」


「誰が浮浪者だ。全く失礼なやつだな」


 平日の16時に暇人な大人なんて、浮浪者かニートぐらいしか思いつかない。


「まあ、君の口が悪いのは気にしないことにしよう。君、何か願い事はないか?」


「願い事?」


「そう、願い事だ。今暇で仕方ないのでな。普段はやらないのだが、ちょっと誰かの願い事でもかなえて遊ぼうと思ってな。たまたま目に入ったのが君だったのだ」


 ふん、願い事なんてたった1つだけ。このつまらない世界から、どこか別の世界に行きたい。ただそれだけだ。

 だが、そんなことを屋根の上に立っている不審人物に言ってもどうなるわけでもない。


「……別に」


「つまらん奴だな。何かないのか? ……ははぁ、さては私が何もできるわけない、と思っているだろう? ふむ、それならば――」


 屋根の上でずっとぶつぶつ言っていたが、突然屋根の上から跳んだ。いや、飛んだ。

 重力の法則を無視して、空高く飛び上がり、そのまま僕の前に、緩やかに着地した。


「ま、ま、ま、魔法使い!?」

 

「ふむ……魔法使いか。正確には違うが、少年がそのようにいうのなら、そう言うことにしておこうか」

 

 す、す、す、すごすぎる。今までファンタジーな世界とは無縁で、平々凡々な生活を送ってきた僕の前に、まさか本物の魔法使いが現れるなんて。

 しかも、この魔法使いは僕の願い事をかなえてくれるという。こんな素晴らしいことが他にあるだろうか。


「ね、ねえ!? 魔法使い! 願い事ってなんでもかなうの!? たとえば異世界に行きたい! とか魔法を使えるようになりたい! とか!」

 

「ふーむ……魔法はそもそも素養というものがあるからな……。残念ながら君には魔法を使う才能はないようだ」


 そうなのか……とても残念だ。魔法が使えるのなら、空を飛んだり、火を放ったり、人の心を読んだり、いろいろとやってみたいことがたくさんあったのに。

 だが、もう1つの願い事のほうはかなえてもらえるのか?


「それより、君は異世界に行きたいのかね? 叶えることは可能だが」


 叶えられるのか! ってことは僕は異世界に行くことができるんだ!

 僕はうれしさでいっぱいになった。もしも異世界に行くことができるというのなら、夢いっぱいの冒険が僕を待っているんだから。


「しかし、こんなに素晴らしい世界に住んでいるというのに。あまり私はお勧めしないが」

 

「こんな、退屈ばかりでつまらない世界の何が面白いのさ!? 新しい世界に行って、思いっきりたくさん冒険するんだ!」


 そう、それこそが僕の求めていた世界。

 既に僕の心は異世界に飛んでいた。ギルドのようなところに行って、パーティを組んで、数ある様々な冒険をクリアし、そしてどんどんと僕は色々なことができるようになっていく。最終的にはドラゴンをやっつけられるぐらい強くなっているんだ。

 どんな冒険がまっているのかはまだ想像がつかないけれど、絶対に楽しいに決まっている。


「そこまで言うなら、異世界に行ってみるか……もし帰りたいと思ったら……ふむ、どうするかな。帰りたいと強く強く願う、もしくは死ねば元に戻れる――」

 

「帰りたいなんて思うことないよ! 早く連れてってよ!」


 せっかく新しい世界に行けるってのに、なんだってわざわざ元の世界に戻るなんてことを考えなきゃいけないんだ。ばかばかしい。


「そうか。それならば、どの世界に行く? 異世界といっても、この世界を含め、星の数だけ世界はあるぞ」


「どんな世界だっていいよ! 地球以外だったらどんな世界だって!」


 さっきから気持ちがうずいて仕方ない。

 どんな世界だって構わない、そこで僕は新しい第一歩を始めるんだ。


「ふむ……どこでもいいというのなら、私も何も考えず、適当に世界を決めようか……それでは行くぞ!」


 そう、魔法使いが叫んだとたん、僕の体の周りが光りだして、何も見えなくなった。

 ここから僕の新しい冒険が始まるんだ!





 光が収まると同時、一瞬、建物のようなものが見えた気がしたが、それと同時に僕は地面にたたきつけられ、意識を失った。

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