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とある吸血鬼始祖の物語(サーガ)  作者: 近々再投稿始めます
第二章 クエスト編
49/86

アルイッド遺跡探索 その11

 標高七千メートル地点。デスゾーン手前で一行が一時間の休憩を取っていた。

 六千五百メートルあたりでピークを迎えた嵐はしかし、徐々に勢力を弱め今は強風でとどまっている。

 このままいけば一時間内で吹雪は弱まると睨んでいた。

 現在はやや東よりから頂上を目指しており、丁度発見した亀裂で全員暖を取っている。

 足りない酸素を魔法で補い、凍傷になりかけの人物を中心的に身体を温めているのだ。

 吹き付ける吹雪に豪風は、一時的に体感温度を凄まじく下げ、肉体から容赦なく熱を奪い去っていく。

 精強で屈強たる前衛のメンバーですら正直かなり堪えていた。



 フリードリヒもかなり体力を消耗し、体温もかなり下がっている。

 Aランカーである彼でそうなのだ。後衛職の負担は想像を絶するだろう。

 事実後衛の半分が高山病の兆しを発症し、一部は重篤だと見られていた。

 正直この亀裂が無ければ脱落者が出ていたかもしれず、フリードリヒが精霊王に祈りを捧げてしまったくらいだ。

 基本的にこの世界には神はおらず、代わりに精霊達の王がその対象となっている。

 稀に異界より神の類がやってくると言うが、表に出てきたと言う記録は驚く程少ない。



 フリードリヒが溜息を吐く。このまま登り切れるのか、と。

 これ以上の標高は彼ですら過去一度あるかないかのレベル。

 そして経験からこの先は更に過酷だと誰が言えようか……

 予想以上の標高。魔法はまだ、使う訳にはいかない――――




 ――――メリルが魔法で沸かしたスープをゆっくり口に含む。

 隣でボアも同じく氷の亀裂の壁に背を預け、そっと口に運んでいた。

 スープには酒気が混じっており、身体の芯から肉体を温めてくれる。

 ミリアは火の傍だ。三名の中で唯一高山病の兆しが発症しており、優先的にそちらへと連れて行かれた。

 


わたくし達、無事に戻れるのかしら……」


 メリルらしくもない、弱気な発言が零れた。


「馬鹿言え、当たり前だろうが。こんなところでくたばってたまるかよ。この依頼が達成出来れば、ちょっとした偉業なんだぜ? 学園の一年がAランクの依頼クエストをこなすなんてよ」

「そう、ね……私は帝國でも黎明と続いてきたブロウシアの一人娘……こんなところで死ぬなんてありえないわ」


 先ほどの弱気な発言から一転。メリルの瞳には確かな力が宿り、述べた言葉には熱が燃え盛っていた。

 その言葉にボアがにやりと笑みを浮かべる。


「へっ、元気でたじゃねぇか」

「ボア、あなた……いえ。そうね、なんでもないわ」



 小さくありがとうとメリルは呟く。聞こえなかったのか返事はない。

 それに少しだけ安堵し思う、まさかボアに元気付けられるとは思っていなかったのだ。

 何時もは猪突猛進で考えが足りない癖に、思ったよりも頼もしいのだと知る。

 心の中で少しだけボアの評価を上げていると、近くにレティーシアが歩み寄ってきた。



「メリル、手と頬を見せてみよ」

「?」



 寄ってくるやいなや、即座に告げられた言葉に戸惑っていると。

 レティーシアが手でフードをどかし、手袋を外してしまう。

 するとメリルの顔に一瞬苦痛の表情が浮かんだ。

 見ればその手は通常よりむくみ膨らんでいる。

 頬もやや腫れぼったくなっており、その端整な容姿に影を落としていた。



「極端な助けはそなたらの為にならぬが。これくらいは構わぬであろう」


 そう言うと指を使わず小声で「癒せ」と唱えると、見る見る内にその腫れが引いていく。

 十秒もしないうちに頬も手も通常通りになっていた。


「ほれ、ボアも見せるがよい」


 呆気にとられていたボアが我に帰り「あっああ……」とフードと手袋を外す。

 同じ手順を繰り返せば瞬く間のミリア程酷くないものの、それでも常よりは腫れていた手と顔が元に戻っていく。



「サンキュー、助かるぜ」

「義妹が優秀なのは、本当に誇らしいですわ」

「そこは普通妬む、とかじゃねーのか?」

「何をいっているのかしら? レティを前に妬むとか頭がおかしいんじゃありませんこと」

「こ、このアマ……」


 メリルの言葉にひくひくと口元を痙攣させるボア。


「あら、やるのかしら?」

「上等だぜ!」



 レティーシアを他所に口喧嘩を始めた二人を置き去りし、亀裂奥の火に近寄っていく。

 その動きに合わせ周りから視線が集まるが、その表情は誰しも憔悴が濃い。

 絶え間なく咳きを繰り返す音が耳に響く。低酸素領域かつ低温化で起こる現象だ。

 中にはあまりに強く咳きを繰り返し、肋骨が折れてしまう場合まであると言う。

 まるでちょっとした楽団の有様を素通りし、ミリアの傍まで近づく。

 足音をたて近づいた為か、ミリアも接近に気づき振り返る。

 


「レティーシア、さん?」



 口にした言葉にはやはり強い倦怠感が漂っている。

 唇こそ火により色味は赤色に戻っているが、むくみなどはそのままだ。

 こうしている間にも咳きを繰り返し、頭も痛むのか時折片手で押さえている。

 ボアはまだしも、構造的に人より優れる魔族のハーフというのが逆に仇となってしまった。

 低高度で早めに順応できなかったばかりに、こんな高度で発症してしまう。

 その苦痛は三千付近で味わったメリルを大きく凌駕する。弱音を吐かないだけ見事と言えた。



「このままでは持たぬ、な……ほれ、手を貸すがよい」

「えっと、はい……」



 そっと差し出された手を握ってやる。大分温まってきたとはいえ、その体温は人より温度の低いレティーシアと同レベルだ。

 小さく詠唱を唱え、ついでに高山病の侵攻を抑えてやる。

 このままでは命に関わりかねないと判断した結果だ。

 高山病で命は落とさないがそこから別の病が潜んでいることもあり、特に肺水腫や脳浮腫の初期症状と似ており、安心していると命を失う。

 小さな魔術陣がミリアの手を包み、見る見る内に癒されていく。

 その表情から苦痛が和らいだのを確認し、そっと手を離す。



「病は侵攻をとめただけゆえ、現状の苦痛は治まりはせぬ。それくらいは耐えよ」

「いえ、十分なくらいです。ありがとうございます」

「よい。残り十分もないゆえ、しっかり温まっておくがよかろう」

「はいっ」



 威勢良く返事を返すミリアから立ち去る。

 亀裂の入り口まで移動すればグレンデルが蹲っていた。

 その背中に身を預ければ、尻尾がくるんとその胴体を包み込む。

 外に視線を向ければ雪はすっかり止んでいた。

 相変わらず風はそれなりに強いが、これなら行軍そのものは順調となろう。

 亀裂から空を眺める。どこまでも澄み渡る青。大気が薄いことで宇宙そらがかなり近い。

 それを眺めながら、大分読み解いたこの遺跡の謎に思考を馳せる。



 恐らくこの遺跡に封じられた者に名はない。

 どの記述にも名前だけは載っていなかったのだ。

 あえて載せていないのか、真実不明なのかは定かではない。

 ただその容姿は人に酷似し、纏う気配は邪悪。その性は非常に混沌であると言う。

 しかも笑えない事に千もの顕現体を持ち。封印されているのはその一柱だと言うのだ。

 予想よりとんでもないものが封印されているらしい。

 気になる記述に“外なる神”と言うのがあった。恐らくはその封印された者を指しているのだろうが、意味までは推量するしかない。



「よしっ、全員出発準備だ! 今から山頂まで休憩なしの強行軍を行う。千メートル程登ったらフルで魔法支援を行う、それまで全員耐えぬけよッ!」



 フリードリヒの声に各自が反応を返す。多くの者が治癒系の魔法でここに来たときより顔色は良い。

 一時的な気休めかもしれないが、士気は高い方がいいだろう。

 誰一人として生を諦めている者はいない。指示が飛ぶのと同時、まるで軍隊のような速度で荷物が片付けられていく。

 時間にして五分程で全員の出発準備が終わっていた。

 ロープを繋ぎ直すとグレンデルが嫌そうな顔をする。

 陣形もここ数日で慣れたものに整い、フリードリヒの「出発!!」と言う言葉と共に再び一行は名も分からぬ山の頂上へと再び歩き出した………






「はぁはぁ……肌、が痛いわ……」

「メリル、さん。陽射しに肌を当てないように…ごほっごほっ!」

「気温はつめてぇ筈なのに、肌が焼けちまうようだぜ。どうなってんだこりゃ――」




 標高八千メートル手前。傾斜角は四十五度を越える場所すら出現。

 積もっている雪は猛烈な陽射しと紫外線により固められ、雪と言うより全ては氷であった。

 地上の三十倍を優に越す紫外線は肌を容易に焼く。

 背を向けても雪に反射し、容赦なく顔や目を苛んだ。

 酸素は三十パーセントを切り、まさしく死の領域に相応しい世界である。

 人が順応することの出来ないこの領域では、本来は瞬く間にその生命を奪い去っていく。

 過度のストレスの結果、肉体は生存の為に自身を消耗し、脳が崩壊を始める。



 未だ高山病がミリアを苦しめていたが、魔族のハーフであるお陰か他のものより肺が強く、酸素をギリギリ行き渡らせていた。

 一方ただの人間に過ぎないメリルとボアはかなり重症だ。

 先頭付近を歩くボアの息は世話しなく、明らかに酸素が足りていない。

 レティーシアが治癒の時に日焼けを防止する魔術も掛けていたため、紫外線の脅威は薄れているがそれでも瞳などにダメージが蓄積していく。

 他のメンバーは既に肌を日焼けしている者もいる。日焼けは立派な火傷であり、進行すれば更なる肉体の崩壊に繋がるだろう。



 気温はマイナス三十度付近だと言うのに、陽射しが熱く感じると言う現象。

 そしてそれは容赦なく肉体の崩壊を進めていく。

 最後尾を進むレティーシアの瞳に誰かが急な傾斜に耐えられず、ズルリと倒れこむのが映る。

 先程からよろけるように歩いていたことからも、既に限界なのだろう。

 他にも数名、酸素不足で意識が曖昧だと思われる者達が居た。

 何とか比較的マシである屈強な前衛数名が倒れていく者を担いで進むが、このままでは死者が出るのも時間の問題かもしれない。

 レティーシアもまともにこの紫外線量を浴びれば相当な苦痛である。



 吸血鬼が陽射しを苦手とする理由の一つとして、紫外線に比較的弱いのがあげられる。

 幸い行軍中のパーティーに吸血鬼に連なる者は居なかったが、居た場合は既に死を迎えていただろうことは想像に難くない。

 レティーシアも魔術で紫外線をカットしていなければ、ダメージを負うほどなのだ。

 たとえ紫外線に弱い種ではなくとも、このレベルであればどちらにせよ長時間浴び続けることは即ち自殺行為に他ならない。

 精神を保つ為に愚痴を零す者、そんな余裕すらない者。

 そんな中で極一部の者だけが何とか余裕を確保しているようだ。



「よしっ、全員ここまで集まれ! これより魔法によるフル支援を行う。後に一気に頂上へと向かうぞ」



 先頭進んでいたフリードリヒが、丁度突き立つ岩肌に手を添え立ち止まる。

 各自が返事はせず黙々と集まっていく。返事をする体力すら勿体無いのだ。

 傾斜が急であるため一部座り込む者も居るが、無事全員集ったのを確認し、後衛の者達に指示を下す。

 同時に朗々とした詠唱が幾重にも鳴り響き、治癒魔法、補助魔法、強化魔法と次々発動。

 全員に効力が行き渡っていく。事前にレティーシアには不要だと通達しているため効果範囲外だが、メリル達三人はその効力に目をみはっていた。



 完全には取り除くことは出来ないが、疲労は幾分中和され、肉体的な損傷が全快。

 一時的な肉体の最適化により、本来なら順応不可能な環境に肉体が適応。

 更には筋力や骨格その他まで強化され、本来の身体能力を数倍にまで高める。

 先程まで苦痛と体力の低下で下がっていた士気が、活気と共に高まっていく。

 全ての支援魔法が完了したのを見届け、フリードリヒが口を開いた。



「魔法はそう長い時間は続かない、一気に進む、遅れるなッ!」

「「了解!」」



 元の陣形に戻り、今までの遅々とした行軍とは比べものにならない速度で進んでいく。

 急な傾斜も、突き出す岩肌に滑る雪面。それをまるで平坦な道を突き進むが如く踏破する。

 ザッザッザッと、雪をしっかり踏みしめる音だけが周囲に響く。

 一時間も経てばとうとう標高九千メートル付近まで到着。見上げれば煉瓦状の肌が特徴的な塔が見える。

 目的は不明だが、更に千メートル単位で聳えるそれは言いようも無い存在感だ。



 確実に終わりは近づいている―――その思いを糧にラストスパートを全員が駆け抜けていく。

 既に気温は氷点下四十度に到達し、瞬間的体感温度は五十を上回っている。

 酸素濃度も低下の一途を辿り、もし魔法が切れれば数分であの世へと行きかねない。

 それを理解しているからこそ、全員口を開かずに足のみを動かすのだ………

 




「つ、ついたぞ!」



 誰が最初に口にしたのか。頂上でありながら、ちょっとした広場になっている場所。

 中央には金属らしき巨大な両開きの扉を備えた塔。そう、遂に地獄の登山は終わりを迎えたのだ。

 魔法が切れるまでの残り時間は三十分あるかどうか。フリードリヒと後衛数名が扉の調査に向かう中、多くの者がこの天に近き場所から見渡せる圧倒的な光景に感動していた。

 時刻は夕方の五時過ぎ。巨大な夕日が全てを茜色に染め上げ、遥か下に見える雲海はまるでベージュ色の絨毯だ。

 その雲を突き破るように水晶の反射光が時折天に伸びている。

 遥か前方を見渡せば赤い大地。一体どれだけの人々が、これほどの絶景を見渡すことが出来るのだろうか。



「綺麗、ですわ……これだけでも、ここまで来たかいはありましたわね」

「きっと一生忘れられないです、こんな神秘的な風景。空だって腕を伸ばせば届きそうなくらい、こんなにも近いんですよ」

「まさか遺跡を潜ってこんな風景を見れるなんてよ。世界は広いぜ。きっと学生でこんな経験、俺達だけだぜ?」

「そうですわね。私達だけですわ……映像に残しておけないのが惜しいくらいですもの」

「ふむ。確かに妾もこれほどの絶景、そうは経験しておらぬ。記憶を映像化して保存するのもよかろう」



 えっ? と驚く三人を無視して異空間から一つの魔道具を取り出す。

 レティーシアの持つ宝物にも近い効果の物はあるのだが、今回取り出したのは果て無き地平線のイベントアイテム。

 ぶっちゃけると“写真機”と“デジカメ”である。

 両方とも動力は魔力だが、不思議な事に分解することが出来ない。

 かなり強力な固定化の概念が掛けられているようなのだ。

 そんな訳で放置していたアイテムだが、こういう場面ではこのうえもなく役立つ。

 先に手のひらサイズのカメラで風景を数枚撮り、同じくデジカメで周囲と人を録画。

 それを終えて再び別のカメラを手に取り、自動設定。



「よし、そなたら全員一列に並ぶがよい」


 疑問符を大量生産していた三人だが、それでもレティーシアに従い夕日を背に並ぶ。

 脚付きの写真機を置き、三人の後ろにグレンデルに跨ったままレティーシアが向かう。

 

「全員十秒後に風景が記録されるゆえ、笑みでも浮かべるがよかろう」


 レティーシアの言葉に慌てて思い思いのポーズや表情を浮かべる三人。

 その一瞬後、ウィーン――と音が鳴り響き、フラッシュが瞬く。


「ほれ、一枚ずつ渡しとくゆえ、好きにせよ」



 そう言って写真機から三枚複製を生成し、全員に渡す。

 写真にはフラッシュに驚き驚愕した顔のボア、目を瞑ってしまったメリル。

 唯一まともなミリア。そして珍しく笑みを浮かべたレティーシアの四名が映っていた。

 背後には巨大な夕日。染まる雲海に、瞬く星々。芸術的な価値すら持ちそうな一品だ。

 全員がその写真に写る精巧な絵以上にそのままの姿に驚愕したり、大事そうにお礼を告げていると、扉の調査を終えたフリードリヒ達が戻ってきた。



「全員時間がないからそのまま聞いてくれ。扉には封印の類はない、中には転移陣があるだけのようだ。正直門番でも居たらアウトだったがな……もう十分もない、直ぐに列を正して潜るぞ!」



 フリードリヒの言うとおり、魔法が切れるまで時間はそれほど残されていない。

 各自素早く扉の前に並んでいく。改めてレティーシアもその扉を見る。

 縦六メートル程度、横四メートルあたりだろうか。

 何か幾何学模様のようなレリーフが施されている。

 どうやら呪文の類だが、今は効力を失っているらしい。

 レティーシアの感覚ではその残滓を感じ取るので限界であった。

 少なくとも効力を失って千年は経っているだろう。

 


「それじゃあ順番に進めッ!」



 フリードリヒの幾分緊張した声を皮切りに、次々と渦巻く空間の歪へと飛び込んでいく。

 やがてレティーシア達の番となり、静かに頷き合うと来るときよりも大きなその転移陣に一斉に飛び込む。

 瞬間――まるで浮遊するような、身体がグニャリと伸び縮みするような不快感が襲う。

 それも一瞬。気づけば四人は宇宙・・に佇んでいた。

 右を見ても、左を見ても、はたまた上下を見ても煌く星の輝き。

 まるで見えない透明な床でもあるかのように、足元は硬質な感覚で、あたかも宙に立っているような気分である。



 レティーシアもここがどこか密かに探るが、どうやら少なくとも数十キロ以上は広い空間であると判明するだけであった。

 何か強力な結界のようなもので仕切られているらしく、簡単な魔術。

 少なくとも指パッチンで発動出来るレベルでは暴く事が出来ない。

 次々と後続が到着する中、最終的に全員がソレ(・・)に視線を固定していた。

 


 全長百メートル程の石化した巨人。

 何か豪奢な貴族的な衣服を纏い、襟の立った足元まで伸びたマント。

 後ろに撫で付けられた髪の毛。引き締まった肉体。

 そこまでは人そっくりだが、その下半身は“竜”であった。

 人の上半身と竜の下半身が融合したような姿。

 石化していると言うのに、漂う気配はどこまでも邪悪で濃密。

 沈黙が漂う中――ピシリ――と、石化したその表面に亀裂が走った………







 

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