表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある吸血鬼始祖の物語(サーガ)  作者: 近々再投稿始めます
第二章 クエスト編
32/86

クエストとは?

貨幣価値概念で一部ご指摘を頂いたので、らんらんるー! の水精核購入場面で一部加筆しました。

一応こちらでも書くと、帝國の一般人の月の平均収入が帝國金貨十枚程度。

年収でも百三十枚程となります。

日本円換算で月十二万~十三万程度ですね。

帝國での一般的な飲食店の一食が銅貨一~二枚程度(百円~二百円)

と言う感じになっています。





「全員揃ったようだね。それではHRを始めようと思う。と言っても大体の生徒が察している通り、内容は実技単位に関する各施設の開放になる。依頼斡旋所に闘技場、そして迷宮。今日よりこの三つの施設が一年生、諸君等にも使用許可がおりることとなる」



 自身をスペクターと名乗る少女が逃げ出した後、ミリアとレティーシアは我に返り教室に向かってから数分。

 HRの時間となり、担任のエリック教師が入って来て、冒頭の台詞に相成った訳である。

 どの生徒もどこかそわそわした雰囲気だ。無理もない、ある意味で待ちに待ったエンデリック学園のメインとも言える内容なのだ。

 と、エリック教師が説明に一区切り付けた所で一人の少女がすらりとした手を宙に伸ばした。



「何か質問かね、アリスティル君?」

「はい、長期遠征とかの依頼クエストの場合、学業の方はどうなるのデスか?」



 アリスティルと呼ばれた少女、身長はレティーシア並みに低いのだが、髪は金髪のうえに瞳は翡翠色。

 更に胸部は……とっても、おおきいです。という有様であった。

 思わずレティーシアの眉が吊り上ったのは必然であろう。そして、モゲロとそれなりの時間をこの肉体で過ごしてきた彼が、そう思わず心の内で呟いたのも致し方あるまい。

 持たざる者は何時だって持っている者を羨むものなのだ。



「ん? 体調でも悪いのかねアリスティル君」

「い、いえ。何やら悪寒が背筋を……」



 アリスティルと呼ばれた少女が教室をきょろきょろと見回すが、先程まで視姦するかのように胸部を見つめていたレティーシアは、既にエリック教師の方へと視線を戻している。

 先ほどの恨めしげな視線が嘘のように、冷たい無表情の仮面を貼り付け前を向いている。

 それを見ていたミリアが密かに笑っていたのだが、後でレティーシアにばれてしまい、お仕置きされることとなるのは余談であろう。

 首を傾げ、小声で「おかしぃデスねぇ」と呟いた後、自身が立ち上がっていることを思いだしたのか、慌てて次の言葉を紡ぎ出した。



「そ、それでデス。依頼や迷宮のような長期遠征になる場合ノ、座学の単位や日数はどうなるのデスか?」

「いい質問だ。よく聞いときなさい、諸君! 迷宮や依頼で三日以上の日数が掛かると思われる場合は、事前に予定表を提出してもらうこととなる。それが通れば迷宮に潜っている間や依頼の期間、その間の単位は最低限の分が保障される。ただしそれで座学のテスト、その結果で最悪の判定が出た場合……」



 と、そこまで説明したエリック教師が大きく息を吐き、顔を教壇の真下に俯かせる。

 その只ならぬ気配にクラス中の生徒にも緊張が伝播し、にわかにがやがやと騒ぎだす。

 一方レティーシアというより、彼は何となく先の展開が予想できたので詰まらなさそうに、窓際なのを良い事に大空をぼぉと見詰めている。

 脳内で考えていることが、実は胸囲に関してだと周囲知られればカリスマも地の底であろう。

 ミリアも我関せずの態度で……というか、目を開けたまま寝ていた。



「単位は足りていても、後のテストで悪い結果を残したものは残念ながら夏休み返上のうえ、教師と付きっきりでの超詰め込み授業だッ! どうだ? 嬉しいだろッ!!」


 

 何時もは飄々としたエリック教師が、常と違う態度で教壇を両手でバシンッ! と叩くと、驚愕の事実を発表する。

 レティーシアはやっぱりか、と予想通りの結果にある意味何処の世界も学業を学ぶ場は似通うのかと、彼と共に関心していたが、生徒の方は顔をムンクの作品、その叫びのように表情を引き攣らせている者が数名。

 他は「俺のパーフェクト計画が!」と両手を地面に付き倒れ伏したり、「オーマイガッ!」や「ジーザス・クライストッ!!」などと好き勝手に暴れていた。

 実にノリの良い連中である。



「ごほん。つまりだ、実技単位の修得に集中するのも構わないが、各自予習程度はしておけと、そういう事だ。分かったか?」

「「サー! イエッサー!!」」

「よろしい、それでは今日のHRはここまでとする」



 ノリの良い連中がどこの軍隊ですかと、そう言わんばかりの返事を返したが、エリック教師はそれを見事にスルーして話を終わらせてしまった。

 そこで先程からずっと立ちっ放しであった、アリスティルという名の少女が椅子に座り込む。

 教室が妙な騒ぎを起こしたため、座る機会を逃してしまったらしい。合掌――







 ――――一日の授業が終わり時刻は夕方の放課後。エンデリック学園の魔法学部棟の食堂でレティーシア、メリル、ミリア、ボアの4人が集まっていた。

 これはミリアの提案で、この先迷宮に潜るなり依頼クエストを受けるなりするのでも、このメンバーで行動しないかという話であった。

 そこで、取り敢えず詳しい話は集まってからと言う事になり、現在この食堂で一同が会している訳である。



「それで、ミリアよ。提案者はお主なのだ、話もお主が進めるが良い」



 そう言って先程頼んだ、彼の世界で言うところのうどんらしき物。

 それを備え付けられた東方の食器類、木製の割り箸を使い、器用にちゅるちゅると音を立てながらその小さな口に運んでいく。

 一方メリルはそんなレティーシアの姿をにへらぁと、満面の笑みで視姦していた。

 レティーシアもそんな視線には慣れたもので、しかとしながら箸を動かし続ける

 最初から参加する気のない二名に頭痛を覚えながらも、ミリアは話を切り出した。



「今回皆さんに集まってもらったのは、ここに居る四人で基本的なチームを組まないか? という話なんです。レティーシアさんは言わずもながら、私やメリルさんも一年生の中では上位の実力だと言えます。ボアさんも前の試合から見るに、かなりの実力があるとお見受けしました」

「まぁ、そこの嬢ちゃんにコテンパンにしてやられた訳だがな」

「んぐ、もぐ。まぁ、妾に勝てぬのは当然だとして、悪くはない実力であろう。少なくとも一年でこやつに勝てる者など、居るかどうかだぞ?」



 ミリアの賞賛に自嘲気味に呟いたボアだったが、そこにレティーシアの横槍が入る。

 その言葉には純粋な賞賛の響きのみが含まれており、その意味を理解したボアが「あんたが言うならそうなんだろうよ」と、どことなく嬉しそうにはにかんだ。

 まっ、改善の余地は山のようにあるがの、とレティーシアが付け加えるとボアが苦笑を返す。

 


「まぁ、俺としちゃ元よりこちらから願いたいことではあったが。俺は遺跡専門だから、どうしてもそっち方面の活動が主になっちまう。だから、チームとして席は置くが、それ以外での依頼を受ける権限が欲しい。無論、それに三人が付き合う義理はないぜ? ただ、そっちの依頼とこっちの依頼の時期が重なった場合は、どっちを優先するかはこちらで決めたい。駄目か?」



 ボアの言い分にミリアが悩み、レティーシアとメリルに意見を求めた結果。

 レティーシアがボアに幾つか質問し、それを元に数十秒程思考。

 全員が同じ体制にしようという結果になり、各自で依頼を受けるのは自由。

 それでチームでの依頼とかち合った場合は、どちらを優先するかその場で決めればいい。

 と言う事で決まった――――





 その後、折角だからと四人で依頼を何か受けてみないか? という話になり、早速依頼斡旋所まで足を運んできた四人であったが。

 レティーシアが周囲を見渡せば放課後のせいか、同じことを考えてる連中や、上級生で依頼の掲示板の前は生徒で溢れかえっている。

 掲示板は複数用意されているようだが、それでも一つの掲示板に数十人は群がっており、見ているだけで近づく気が低下してしまう。



わたくしは嫌でしてよ? あんな人ごみの中に吶喊とっかんするのは……」

 


 そう言ってメリルがレティーシアと同じく、数歩掲示板から下がった位置に来る。

 そこに、言いだしっぺであるミリアが任せて下さい! と意気揚々と突入していくが、哀れ。

 僅か数秒で押し出されては、すてん、ころりんと擬音が付きそうな勢いで地面を転がってきた。

 口元からはあぅあぅと哀愁漂う声が漏れ、お尻をぶつけたのか両手で押さえている。

 たった僅か数秒で着ていた服装は地面を転がった際の影響か、埃まみれとなり、惨めさ倍増の雰囲気を醸し出している。



「うぅ……すいませぇん」

「そなたの勇気は認めるが、流石に今のは無謀であろう……」



 とぼとぼと、二人が居る位置まで戻ってきたミリアの姿は心なしか煤けているように見え、メリルが珍しくのその肩をぽんぽんと叩いて励ましている。

 と、三人がさてはてどうするか? と悩んでいる時、手洗いに行っていたボアが戻ってきた。

 そこで事情を聞いたボアがよし、んじゃ俺が行って来るとマントを脱ぎ、それをミリアに渡すと掲示板に殺到する人の群れに勢いよく飛び込んで行った。


 男は美少女に頼まれては断れない、という法則が存在するのだ。

 ここでレティーシアに己がどうにかする、という選択肢は存在しない。

 服が少しでも汚れればエリンシエが煩いし、元より彼は兎も角、レティーシアに手を出すつもりはないのだ。

 それから数分後……

 


「すまねぇ……なんとかもぎ取ってこれたのはこれ一枚だった……」



 そう言って一枚の紙をミリアに渡すと、まるで力尽きたかのように三人の前に倒れ伏す。

 一体あの人垣の中でどのような事がおきればここまで消耗するのか、倒れ伏すボア見て、少しばかりレティーシアの興味がそそられるが、今は持ってきた紙の方である。

 倒れ伏すボアには一切構わず、ミリアが持っている紙を後ろからメリルが覗き込みその内容を口にした。



「えぇと。依頼主はディルザング商業都市の町長で、報酬は共通金貨五百枚及び百単位? 依頼内容は街道に出没する地竜サンドドラゴンの退治……ですって? て、これBランカー二名以上用の依頼じゃありませんか! 今日から依頼を受け始める私たちのランクは全員揃ってEランクですわよ!? 確かに、これ、を! クリア、出来れば! 実技の単位は分配でも一人辺り二十五単位、つまり一年間の単位のおよそ十分の一になりますッ! 計算ですけれども! 完遂出来なければ意味がありませんわよッ!!」



 ボアが持ってきた依頼内容を見て、青筋を浮かべたメリルが依頼の内容を喋りながら足でボアを何度も踏みつける。

 ミリアが慌てて止めようとするが、びくびくと痙攣するボアの伸縮性に優れたパンツスタイルのせいで見える、その鍛えられた筋肉に思わずたじろいでしまう。

 仕方あるまい。びくんびくんとボアが痙攣するに合わせて、筋肉も躍動するように動くのだ。

 傍から見ればかなり気持ち悪い光景である。



「す、すまねぇ……無我夢中だったんだ……そろそろ踏むのは勘弁してくれ、地味に痛い」

「はぁはぁ……私としたことが。そうですわね、貴方を責めても仕方ないですもの、謝罪致しますわ」



 そう言って頭を下げ誤るメリルに、立ち上がったボアが構わねぇよとあっさり返事を返す。

 近接戦闘をメインにこなすボアからすれば、強化もされていない靴で背中をいくら踏まれようと、然程さほどのダメージになりはしないのだ。

 その後復活したボアも含め、この依頼をどうするか話し合う四人。

 主に三人ではあるが……



 そも、このギルドで提唱している個人のランクと、依頼の難易度のランクというのは幾つか種類がある。

 個人がギルドより与えられるランクとは、試験や依頼の達成内容によりギルドから送られる、“強さや信頼度”の目安であり、このランクが低いからといってランク以上の依頼が受けられない訳ではない。

 ただし、ギルドからのこの冒険者はやってくれますよ! という推薦が貰えないので、直接依頼人と交渉して認めてもらわないといけなくなる。


  

 また、依頼の難易度を表すランクにも二種類あり、一方が個人を指標としたランクでもう片方がチームを指標としたランクだ。

 つまり、個人用Aランクの依頼なら、その依頼は一人のAランカーさえ居れば十分という事であり、逆に難易度Aランク、人数三人以上限定。

 等と書かれているものはつまり、その依頼を完遂するのに最低でもAランカー三人分は必要ですよ、ということである。

 あるいは後者はAランカー三人以上のみ、という種類の場合もある。



 ただし、これも個人でチーム用の依頼が受けれない訳でもないし、チーム全員がランク以下だからといって受けれない訳でもない。

 この場合も結局は依頼主との交渉次第である。

 では、個人に与えられるランクにはどのような意味があるのかと言うと。

 先ず、同ランクの依頼なら交渉を必要とせず、失敗時の違約金も一部ギルドが負担してくれる。

 また、高ランクならその人物を指定した、特定の依頼も斡旋してくれる場合がある。

 他にも幾つか得点はあるが、大まかにはこのような形であった。



 このランクを上げるにはランクに対応した試験を受けるか、同ランクの依頼を五つ完遂するか、あるいは自分より上のランクを一つクリアするかが条件になっている。

 この場合後者の方がギルドとしては信頼できるので、前者より優遇される事も多いと言う。



 今回の依頼はBランクではあるが、目安はBランカー二名程度である。

 依頼のランクは大抵、実力を示すランクと直結している事が多いことを考慮すれば、十分このメンバーでもクリア出来る見込みは高い。

 ボアは既にその実力がBランクの領域内であり、ミリアとてニアBランクである。

 メリルもCランクながらも高い実力を保持している。

 





 その後、この依頼を受ける事になった四人は、メリルが予定表を提出し、レティーシアが依頼人に交渉することに決めてこの日は解散となった。

 なお、依頼中必要以上の実力は出さないという約束を三人に取り付けられるが、元より自身が面白そうだと思った物以外では、そうやる気を見せないレティーシアには好都合である。

 無論己に牙をむいてきた場合は別であるのだが……




後書き


いよいよクエスト編、本編始動。

数話後からは再投稿にはない展開になります。


ランキングは一日一クリックが可能らしいので、更新日にでも押していただけれと思います。


それでは、感想・評価その他心よりお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ