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とある吸血鬼始祖の物語(サーガ)  作者: 近々再投稿始めます
第一章 学園編
26/86

模擬戦闘・完

 ――――レティーシアが指定された場所に向かうと、そこは丁度鍛錬場の真ん中であった。

 既に模擬戦闘の相手は来ている。どうやら相手はレティーシアがここに来た時、周りの物より頭一つ実力が抜けていると判断した男のようであった。

 周囲を見渡せば多くの観客が集まっている。彼等からすれば、一見場違いな姿に服装をした少女と、明らかに周囲より実力が勝った男との対戦は非常に魅力的に映っていた。

 誰もがどちらが勝利するかを囁き合い、各々が独自の理論で花を咲かせている。



「両者、所属の学部とクラス、名前を述べて下さい。それを持って宣誓とします」



 代理に上級生が二人の中間にたち、互いの紹介を諭すと、男のほうが一歩足を踏み出すと高らかに名乗りをあげた。

 


「俺の名前はボア、ボア=クラーレだ! 所属は剣術部格闘科、Sクラスに在籍しているッ! 俺の勘が囁いてるぜ? あんたはきっと強い、それもとんでもなく、だ。そう俺の勘が囁いてくるんだ、だからさ、見せてくれよ! あんたの実力をさ!」



 それなりに整った顔のその黄土色の瞳を爛々と輝かせ、口元は期待で三日月状に吊り上っている。

 吸血鬼でもないのに伸びた犬歯がちらりと見え、笑えば愛嬌のありそうな顔をしかし、今は獰猛な野獣のように滾らせていた。

 その身に張る気合は十分、何時でも戦闘開始が出来るぜと言っているようなものだと、レティーシアは思うが。

 悪くない、そう思ってしまった。そういう勘に頼るような輩も、馬鹿正直に思いのたけをぶつけて来るのも。

 悪くない、彼も、レティーシアも、悪くないと。そう思ってしまったのだ。

 ゆえに、その挑発にあえて乗る。口元を歪ませ、可視化するほどに濃密な魔力を纏い、まるで巨人が一歩進んだかのような錯覚を覚える程の威圧感で足を前に踏み出す。

 周囲の気温が下がったかのような空気、それら全てを背に、レティーシアが咆哮した。



「吠えたな小僧? わらわに向かって……遠吠えをあげたな? クックックックッ……愉快で、愉快で、堪らんわッ!! 腹が捩じ切れそうだぞ、抱腹絶倒とはこのことか? これ程痛快な気分を味わったのは久しぶりだぞ? 妾の実力を見せろ、だと? アッハッハッハッハッ!!」



 哂う哂う、余りの可笑しさに魔人が哂う。周囲は既に誰も言葉を発する者は居ない、レティーシアの気迫に呑まれてしまったからだ。

 それでも本気ではあるが、全力ではないと知ればどんな顔をするのであろうか?

 そんな思考がレティーシアの脳裏を駆けるが、壊してしまっては面白くない。そろそろミリアも来るころであると、己をギリギリのところで留める。

 そこでようやく笑い終えると、反転。何処までも冷たい無機質な表情で、未だその輝きを失わないボア=クラーレと名乗った男に投げかけた。



わらわの実力が見たければ、妾を追い詰めて見せよ! 話は全てそれからよッ!!」



 その言葉を合図に、硬直していた上級生が震えながらも戦闘開始の声をあげた――――




 

 

 ――ボア=クラーレはその瞬間。確かに周囲の気温が下がったと認識した。

 正確に言えば間違いなのだが、目の前の人物から放たれる、あまりにも凄まじい威圧感プレッシャーにそう感じてしまうのだ。

 ボアが名乗りをあげた後、その美しく艶を含んだ極上の人形すら足蹴にする美貌。

 その表情を地面に俯かせ、暫くの後、肩をふるふると震わせると、次の瞬間まるで吹き荒れるように可視化した魔力が少女の体から放たれる。

 あまりにも膨大、化け物中の化け物。Sクラスという実力を示すランクにおいてすら、恐らくは天外の実力。



 暴威の顕現。それを目の当たりにしているかのような、まるで開けてはいけないパンドラの箱をそうと知りながらも開けてしまったかのような、そんな冷たい汗が背中をジリジリと舐めていく。

 魔力の暴風が収まり、その肉体から湯気のようにゆらゆら立ち上るのみとなった後。

 ボアには少女の姿がまるで、とある神話に出てくる巨神のようにすら見えた。

 凄まじいまでの威圧感に存在感、そこに居るだけですべてを呑み込んでしまいそうな程。

 ふと、少女がそのかんばせを勢いよく持ち上げると、一歩足を踏み出し。可憐ながらもどこか禍々しい声で咆哮した。


 

「吠えたな小僧? わらわに向かって……吠えたな? クックックックッ……愉快で、愉快で、堪らんわッ!! 腹が捩じ切れそうだぞ、抱腹絶倒とはこのことか? これ程痛快な気分を味わったのは久しぶりだぞ? 妾の実力を見せろ、だと? アッハッハッハッハッ!!」 



 目の前の少女、いや、人を模した魔人がまるで可笑しくてしょうがないと言わんばかりに哂う。

 真っ赤な瞳に涙を浮かべて、腹に片手を当てて哂い続ける。

 何が可笑しい! そうボアは言ってやりたいのだが、魔人の纏う空気がそれを許さない。許してくれない。

 強い、そう感じた。この鍛錬場で見かけた時、ボアは直感的にそう感じ取ったのだ。

 しかし、蓋を開けてみればそれは、己が予想等容易く食い破る“化け物”ではないか。

 姿形から純血の吸血鬼だとはボアも予想できたが、純血とはそれ程に馬鹿げた力を持ちえるものなのか? 

 という疑問がぐるぐるぐるぐるとボアの頭を駆け巡る。



 瞳の涙を拭って、一頻り哂いに哂った魔人がふと。

 その表情を冷たく硬質なものへと変化させた。

 先程とはまた違う空気、収束され、練磨されたとでも言うべきか。そんな鋭い空気を纏って、目の前の魔人が彼、ボア=クラーレに問うた。



「妾の実力が見たければ、妾を追い詰めて見せよ! 話は全てそれからよッ!!」



 口角を持ち上げ、妖しく笑みを浮かべて告げられた言葉。

 それに反応するかのように、ボアは下された開始の合図と共に地面を蹴り出していた。

 既に外套を脱ぎ捨てている。体にぴったりと張り付くシャツとパンツの上から簡易のレザーアーマーを当て、部分的に防御能力を底上げしたうえで、速度を損なわないにようにした装備。

 外套なんていう目くらましのような小細工は不要、もとより通用などしまい。

 だからこそ、少しでも動きを阻害する物は捨てていく!

 


 今日行われた模擬戦、その誰よりも速くボアは地面を駆け抜ける。

 強化魔法で強化された筋力に、魔道具マジックアイテムブラストリングによって局地的な風の後押しを受けたボアの速度は、常人では視認することすら難しい。

 まるで一陣の疾風の如き速度で迫る、迫る、迫る!!

 その速度を持って、瞬く間に距離を詰め寄ったボアの鋭い拳打が乱れ咲くッ!



「シッ! シッシッ! オラァッ!」


 

 身体を揺らし、緩急をつける事で相手に軌道を読ませないのと同時に、フェイントを織り交ぜながらも足技を絡めていく。

 余計な獲物を持たない、拳だからこその速度。上下左右あらゆる方向から襲い来る拳打。

 しかし、一見無軌道に見える拳の嵐はその実非常に洗練されていた。

 それでも、それでも当たらない・・・・・。ただの一発も服にすら掠らない。

 まるで拳の速度がハエが止まって見えると言わんばかりに、余裕を持ってかわされる。

 


「お主の実力はその程度か? それでは興醒めもよいとこぞ。妾の実力を引き出そうなど夢のまた夢であろう」


 詰まらそうにそう言った瞬間、その姿がぶれて掻き消えた。


「なっ!?」


 

 瞬間、背筋に悪寒が走ったボアは即座に地面に身を投げ、転がるように後退する。

 同時、背後からドゴンッ! と何か砕くような音が耳に届く。

 一瞬でボアの背筋に大量の汗が発生する、本能が命拾いしたと訴えていた。



「ほう、今のを避けたか。面白い、すぐさま終わらせてやろうと思うたが、もう暫く付きおうてやるぞ? ほれ、もう少し頑張ってみせい」



 そう言って哂った魔人の足元には、直径数メートルに及ぶクレーターが出来上がっていた。

 何をしたのか理解したくはないが、当たっていれば即アウトであったのは想像に難くない。

 正面の魔人の気配を油断なく読み取りながら、起き上がり際に地面を一蹴り。一瞬で数メートルの距離を離れる。



「安心しろ、本番はこれからだぜッ!」



 そう言って整えた体勢から再び突撃を開始する。

 再び始まる拳の嵐。先程よりなお速く、次々と速度を増していく。

 体力配分など、今のボアには欠片も存在しない。最初から最後まで全開だ、そうしないと瞬時にやられると理解しての行動!

 密着するように近づき、懐から素早く掌打を叩き込むが、あっさりと腕を挟まれガードされる。

 ならばと、拳速に魔力を乗せて打ち出せばその着込んだドレスに当たった瞬間、あっけなく霧散してしまう。異常な防御力にボアの口から舌打ちが漏れそうだ。


 元から短期決戦。速攻型である彼は、後衛職のような大技を持たない。

 ゆえに、速さで撹乱しつつ、隙を突いていくのがボアの戦法であるのだが、それがまるで通用しない。

 速度という点において勝敗が喫している以上、彼に勝ちを拾うことはこの上も無く至難であった。

 それでも己が持てる技量を駆使して、可能な限り重い拳を、蹴りを幾度も浴びせかける。

 が、やはり当たらないッ。まるですべて見切られてしまっているかのように、軌道を読まれているように当たる気がしない。



「それそれ、どうした? 拳が鈍ってきたぞ」

「はっ! 余計なお世話だッ!」



 そう言って地面に拳を叩き付け、砂埃を発生させる。一瞬で視界を阻んだ砂埃を利用し、即座にレティーシアの背後に移動。

 全力の拳を叩き込む、が。命中する瞬間何か硬質なものに拳が当たり、防がれてしまう。

 砂埃が治まった後に見えたのは、いつの間に握っていたのか。二本の一切光を通さない不可視の剣であった。


 その握られている“ナニカ”を視界に映した瞬間、またも背筋に悪寒が走り。ボアは一瞬でその場を離脱する。

 ボアの感はこれまでその身を何度となく、死地から救い出してくれたものだ。

 全幅の信頼を寄せるに値する。



「クックックッ……突破力という点ではまだまだだが、回避や直感による危機察知は悪くない。しかし、妾は少々この児戯にも飽いた、今度は妾からゆくゆえ。精々直ぐに終わらぬよう、気張るのだぞ?」



 二本の不可視のショートソードいや、暗黒物質ダークマターで構成されたそれらを構え、レティーシアが地面を蹴った。

 瞬間、その力に耐え切れなかった地面が砕かれるのと同時、先程のボアよりなお早い速度で走り出す!

 一歩踏み出す度に地面が抉れ、小さなクレーターを形成する。

 そして近づく瞬間、ショートソードを一閃。そのまま、二閃、三閃と続けざまに振るう。

 実力の数割にも満たないかもしれない速度だが、それでもボアを圧倒するには十分であった。



 放たれる一撃は剣の異常な重さと相俟って、重くそして何より“速い”ッ! 

 視界に残像すら残して消え行く剣戟は、フェイントの必要すらなく、相手に防御も一切の抵抗も許さない。

 圧倒的物理エネルギーは、防御の上から容易に相手を粉砕してみせるだろう。

 ギリギリのところで回避と応酬を繰り返していたその拮抗が、レティーシアの魔力を込めた高速の一撃により崩れ去る。

 まるで吸い込まれるかのように、あたかもその場に移動することがあらため分かっていたかのように振るわれた一撃は、インパクトの瞬間纏った魔力と魔術の効果により爆裂する!!

 


「ガッ――!? ……カハッ…ゴホッ」

 


 まるで襤褸切れのように一瞬で吹き飛ばされたボアは、数十メートルもの距離を滑空。

 ズザ、ズザザザザッと、体中で地面を転がりながらも何とか停止するに至る。

 インパクト時、魔力を集め風の集中で防御したボアだが、肋骨の一本二本は確実に折れただろう。

 内臓に走る鋭い痛みにボアの眉が苦痛で歪む。



「ほれ! 休んでいる暇などありはせぬぞッ!」



 吹き飛ばす瞬間と同時に走り出していたレティーシアが、起き上がろうとしていたボアに神速の一太刀を見舞う。

 視認不可能な刃は、その扱う人物の腕と目測でしか間合いを計れない死神の一撃だッ!

 当たれば昏倒必須の一撃はしかし、何か空気の塊のような物に当たり、僅かにその軌道を逸らす。

 


「グッ―――あがッ!?」



 しかし、逸らされた一撃は左腕に命中し、その骨を容易く粉砕する。

 更に呻き声をあげる暇すら与えずに、レティーシアは続け様に次々と剣を振るう。

 それを無様に転がりながら回避していくボアだが、折れた左腕が、肋骨が悲鳴を上げる。

 ボアはそれに構わず、なんとか致命傷だけは避けて行くも、刻まれて行く刀傷、飛び散る真っ赤な血飛沫が大地を赤く染め上げる。

 どこからか人の悲鳴がボアの耳に届いた気がした。

 まるで猫がおもちゃで遊ぶかのような絶望的な実力差。



「ハッハッハッ! ボア、と言ったか? 地面をゴロゴロと、無様であろう? まるで芋虫のようではないか……そらどうしたっどうしたッ! 啖呵をきったあの言葉は嘘偽りか!? わざわざ貴様の得意な接近戦で戦ってやっているのだぞ、少しは根性を妾に見せてみよッ!!」



 鋭く、あるいは鈍く、重体と称して間違いのない肉体が警告として痛みを発し続ける。

 しかし、ここまで言われて地面とキスしているようじゃあ男じゃない。そう静かな闘志を瞳に宿し、ふらふらと何とか立ち上がる。

 元よりやられっぱなしなど、彼の性格ではないのだ。

 それなのに、それ程までにぼろくそ言われたのでは、こんなところで寝んねしているわけには行かないではないか。



 立ち上がった瞬間「ゴホッゴホ――ッ!!」と、真っ赤な血が口から吐き出された。

 恐らく肋骨が内臓のどこかに刺さったのだろう。抑えた手と、衣服、地面に鮮血が撒き散らされる。

 痛みは限界を越え、大量に分泌された脳内麻薬で麻痺している。左腕もあらぬ方向に曲がり、既に使い物にならないだろう。

 下手をすると、その腕は治癒魔法でも駄目かもしれない。一生使い物にならない可能性すらある。

 それでも、ボアは立ち上がる。男にはどうしても退いては行けない時がある、それは彼にとっての心理であり誓いであった。



 悲鳴を上げる肉体を意思の力で叩き伏せる。腰を落とし、限界まで力を溜める。

 己に暗示の如く言い聞かせる――俺の実力はこの程度じゃない、と。何度でも、何度でも……

 信仰するべきは己自身! 越えるべきは己自身!! どこまでも愚直に求めた先にあるのは――

 そして――――地面を蹴るッ!!

 まるで爆発したかのような推進力を得て、肉体の限界行使すら越えてボアは走り出す。

 一歩踏み出す度に零れて行く肉体の寿命、命の源泉。それでも彼は走り続けるッ!



 それは先程のレティーシアにすら匹敵する速度である。まるで周囲の流れが遅く感じるような、高速の世界。

 今のボアはまさしく疾風迅雷、およそ限界の領域を遥か先にまで飛び越えて立っているという奇跡! いや、必然ッ!!

 人が人である領域、それを飛び越えた先にあるべき世界。その領域へとボアはその時、確かに足を踏み入れていた。

 その姿にレティーシアが一瞬驚愕の表情を浮かべるが、次の瞬間には笑みを浮かべる。まるでさぁこい、とでも言わんばかりの笑みを。


 

「オオオオォォォォォッ!!」



 口元から漏れる獣のような咆哮。己が風になったかのような感覚。それを持って刹那に肉薄していく!

 そしてレティーシアの剣の範囲に足を踏み入れた瞬間、振るわれた一撃を折れた左腕を無理やり持ち上げ受け止める。

 規約にすら反して刃の潰されていない剣、その圧倒的な運動エネルギーによりあっけなく左腕が斬り飛ばされ、彼方に飛んで行く腕。

 ボアの内心では痛みでも、やられたでもなく、無くなって楽になったぜという。あるのは狂人に紙一重の思考ッ。



 傷口から大量の鮮血が迸り、レティーシアの顔にビチャリ、と返り血が付着する。

 一瞬でも目潰しになればと考慮するボアだが、一切瞼を閉じる様子を見せない。

 悠然と構えるレティーシアに、獰猛な笑みを浮かべボアが近接するッ。

 周囲が何やら騒いでいるが二人だけの世界には届かない。届く筈がないッ!

 そこで更に一歩踏み出し、レティーシアが残った片方の剣を振るう。その一撃が胸元を袈裟懸けに斬りつけ、鮮血がブパッと飛び散るが、浅い!!

 都合両手の二撃、それが終わる瞬間に出来た一瞬の隙。それをボアは見逃さないッ!!

 

 

「おぉおぉおぉおぉおッッ!!」


 

 満身創痍、出血多量で倒れても可笑しくない状態、既に半死人。そんな限界寸前どころか墓穴直前の肉体に、咆哮を上げることで渇を入れる。

 喉奥から、肺から更に真っ赤な液体が飛び散るが既に思慮の外。

 型もクソもあったものじゃない原始的な一撃、子供の喧嘩レベルのパンチとすら呼べない稚拙な一撃はしかし、見事レティーシアの右頬に命中するッ!!

 本来なら避けれたのではないか? と疑問に思える一撃であったが、今の彼にそこまで思考する余裕はなかった。



「へへっ……どうよ。お綺麗な顔に一撃入れてやったぜ……」

 

 入った一撃によりレティーシアの左頬は赤く腫れ上がり、その美しさに影を残していた。


「誇れ。貴様は正真正銘、その身一つで魔王たるわらわに立ち向かい、一撃入れたのだ。その栄光は歴史に残る勇者とて、成し得ぬ所業である。ゆえに、誇れ。そしてその誇りを胸に逝くがよい」



 その言葉にボアの胸が満たされる。少女の言った言葉はよく理解できなかったが、己は確かに目の前の人物に認められたのだと。

 圧倒的強者に認められるという、その愉悦のなんと素晴らしきことか。

 そう思えた瞬間、彼の胸が満たされた。奇妙な感覚ではあったが、まだ遣り残したこともあるのに。

 すとん、と。胸に落ちたのだ。充足感とも満足感とも言えるモノが。目の前の魔人の言葉により齎されてしまったのだ。


 前を向く、その顔に笑みを浮かべ前を向く。最後、振り下ろされた一撃を放った人物の満足そうな、どこか嬉しそうな顔を彼はきっと死してもなお忘れないことだろう、それだけその笑顔は美しく、可憐であった。

 最後に何か言葉を呟くが、あまり小さいため音にならずに空に散る――

 そこで彼の意識は闇の彼方に落ちて行った。

 




後書き


模擬戦闘編終了。

ついでに新キャラも登場。初の男性キャラ。

再投稿前に募集でいただいたキャラなのですが、設定は消えた感想にあるので載せれません^^;

自分も結構困るのですが、なんとかしようと奮闘しますw


後一話程で学園編は終了です。

その次は予定どおりクエスト編、その後は異界大戦編へと突入していきます。

異界大戦で起承転結の承の中間あたりか、終わり付近でしょうか?


それでは、最近更新が微妙なじかんばかりですが、次の更新でお会いしましょう!

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