Bark At The Moon
「おい!兄者のところに行ってくる。帰りは遅くなりそうだから、留守番頼む」と言い残して、カレンは出て行った。
俺は、事務所で暫く留守番していたが夜に成って飯を喰いに出掛けた。
「ヤッパ日高屋はいいねー、ラーメンと餃子とレモンサワーで740円」
爪楊枝をくわえながら事務所に帰る途中、電信柱の陰に人がうずくまっていた。
「痛い、お腹が痛い」
女性だ。
「大丈夫?」
俺は、声を掛けた。
女性は振り返った。
その人は、郡山ハナ子だった
「あっ!」
俺は、直感的にヤバさを感じた。
ハナ子は見る見るうちに険しい表情に成ってきた。
目は血走り、鼻にシワを寄せ、歯を剥き出し「ウー」っと低く唸った。
四つん這いのまま、今にも飛び掛かろうと身構えていた。
「狼女だー!」俺は慌てて逃げようとした。
「ズバッ!」俺の横で風切り音がした。
直後に右肩に激痛が走り、血が吹き出すのを感じた。
ハナ子は、俺の右側を追い越し様に肩口を引き裂いた。
狭い路地の行く手を塞ぐとヨダレを垂らした口でニヤリと笑い「アオーン」と遠吠えをした。
頭上には、満月が不気味に赤く輝いていた。
ハナ子は、ジリジリと間合いを詰めてきた。
俺は、後ずさりするのだがなんとも足が地に付かず、ついに尻餅をついた。
腰が抜けたのだ。
ハナ子は、ヨダレを垂らした口を舌なめずりした。
ニヤリと笑うと、飛び掛ってきた。
すると、何かが俺の頭上を飛び越しハナ子に体当たりした。
大きな青い目の犬だった。
シェパードって言ったっけ?
よく警察犬とかで活躍している犬だ。
その犬は、俺とハナ子の間で身構えた。
「ジョリー!いい子ねぇ・・・下がりなさぁい・・うふ」
野太い声がした。
背後から現れたのは、身長2mはありそうな大男だった。
「アラヤダ、あなたヨダレが垂れてるわよ」
何故か、オネェ言葉だった。
「ガルー・・・・邪魔するな!このオカマが!」
ハナ子が、吼える様に言った。
「アラ・・・聞き捨て成らないわね!この、偽物が!!」
そう言うと、大男は毛が逆立ち、息が荒くなった。
不意に男は、ハナ子に飛び掛った。
「速い!」
飛び掛り様に2・3発パンチを入れた。
ハナ子は5m程、吹き飛んだ。
1度は立ち上がったが、「貫様万歳!」と言って、自らの首を引き裂いた。
男は何事も無かったように振り替えると
「あらやだぁ・・・カレンの話よりずっといい男じゃない・・・好みのタイプかも」
俺は、空いた口が塞がらなかった。
その男は、髭面と言うか むしろ顔の真ん中辺りだけ毛が生えていないだけの毛深い男だった。
手の甲もボウボウだった。
「あたし、フォクシーちゃん!よろしくね!これが、私の相棒のジョリー!カレンから話は聞いてるわ!」
「『この偽物が!!』って、貴方・・・まさか本物の狼男?」
「そうよ・・・そうだけど・・・・心は女の子よ!・・・あらイケナイ、花園っちに電話しなきゃ・・・うふ」
訳が分からないけど、強い味方に違いない。
「うん、そうよぉ・・あたしが居なかったら超危ないところだったんだから。うん チョットまってね」
「はい!花園っちが代わってだって」
「おう、久しぶり。危ないところだったんだって?一応、その場は近くの交番に俺が連絡入れるから、俺も合流するからチョット待っててくれ」
そう言って、電話を切った。
チョット、野次馬が集まってきたが警官がやって来て素早く黄色いテープを張った。
「佐呉丈さんですね?話は花園警部補から聞きました。今日はもう帰って頂いていいですよ」
「じゃぁ・・・帰ります」
俺は、事務所に向かった・・・・オカマ狼男も付いて来た。
事務所の前に着いた。
「あのう・・・今日は有難う御座いました」と言うと
「あら?今日からあたしもここに住み込みよ」
ええー!!!!!!
物凄い冷や汗が出た。
大丈夫か俺のオシリ・・・・