序章 ジョーとカレン再び
・・・あれから、数ヶ月の時が過ぎた。
朝礼で国山が言った。
「みんな聞いてくれ 大変言いにくいことだが、昨日 わが社は2度目の不渡りを出した」。
最初、俺は何を言われたのか良くわからなかった。
国山は言った。
「解散!」
みな、それぞれ荷物を片付けると来たばかりの会社から帰路についた。
行く当てもなく、俺はパチンコ屋でパチをブッて夕方にはすっからかんに成っていた。
「ちっ!湿気てやんの!」俺は悪態をつくとパチンコ屋を後にした。
空がゴーゴーと音を立てていた。
その冷たい乾いた風に吹かれると、心まで荒んで行ってしまう気がした。
「明日から、どうすっかな?」
ポケットから財布を出し、中身を確かめた。
1280円入っていた。
「まじやべー、プリペイドとか持ってなかったかな?」
財布をごそごそ捜すと、スーパーのポイントカードだのガソリンスタンドの会員券などにまじり、名刺が入っていた。
『花園カレン探偵事務所』と書いてあった。
カレンは、この名詞を渡す際に「困ったことが有ったら、ここに来いよ」と言っていた。
・・・・困ったこと有ったよカレン・・・・
俺は、カレンの事務所にワゴンRを走らせた。
そこは、本当に寂びれた雑居ビルの3Fだった。
エレベーターなどと言う気の利いたものは無く、俺は階段を上った。
2Fの踊り場まで行くと丁度カレンが降りてきた。
「あっ!何しに来やがった!」
「・・・実は、困ったことが有って・・・」
「何だぁ?言ってみろ、金以外なら相談に乗るぞ!」
「・・・・その金の事です・・・・」
するとカレンは、「じゃっ!」と言って階段を下りていった。
「待ってよカレン!会社潰れちまったんだ!・・・俺を雇ってくれないか?」
カレンは振り返った。
「・・・そいつは、気の毒だな・・・・」
俺は、一筋の光明が見えた気がした。
「もう、飯食う金も無い・・・家賃も払えないし、車も売り払うしか・・・最もこのオンボロじゃ、二束三文だろうけど・・・」
「わかった!!アパートは、引き払って来い」。
「えっ!」
「ここに住み込みだ、車は社用車として使ってやる」。
「いいのっ!」
「給料は少ないけど、住む所と飯位は何とかしてやる」。
「ああっ・・なんていい人なんだ・・・神様!仏様!カレン様!」
こうして俺の助手と言う名の『奴隷』生活が始まった。