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The story’s (あるバスは決まりなく色んな街、色んな街に進いていて、 バスの窓から色んな場所色んな物語見て語る話)  作者: San


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The story’s 迷い街の運び屋 1

階段の途中で、もう一度配達票を見た。


 番地は合っている。

 建物の名前も合っている。


 だが、目の前にある景色はどう見ても一つの建物には見えなかった。


 同じ形の部屋が、箱のように重なっている。

 左右にも、上にも、奥にも。

 灰色の箱がぎっしり詰め込まれたみたいに並び、その一つ一つにドアがある。


 数えようとして、途中でやめた。


 無理だ。


 どれも同じだからだ。


 同じ色の壁、同じドア、同じ小さな窓。

 まるで誰かが同じ部屋を何百回もコピーして並べたみたいだった。


 それなのに、不思議なほど静かだった。


 人は住んでいるはずなのに、生活の音がほとんど聞こえない。


 テレビの音も、笑い声も、食器の音もない。


 ただ、遠くでどこかのドアが閉まる音が、たまに小さく響くくらいだった。


 俺は配達箱を持ち直して、また配達票を見る。


 部屋番号。


 4階 C-417


 この建物の中で、その番号を探す。


 それが今日の仕事だった。


 会社に入って、もう三週間くらいになる。

 新人扱いはされているが、見習いというほど丁寧な指導もない。


 荷物を渡されて、住所を見て、届ける。


 それだけだ。


 できなければ残業になる。

 失敗すれば評価が落ちる。


 それだけは入社初日に言われた。


 だから、探すしかない。


 階段を上がる。


 四階。


 廊下に出る。


 そこにも同じドアがずらりと並んでいた。


 番号だけが小さく貼ってある。


 C-402

 C-403

 C-404


 進む。


 廊下は長く、途中で曲がっている。

 窓がないから、昼なのに少し暗い。


 C-411

 C-412

 C-413


 途中で一度、立ち止まる。


 静かだ。


 本当に静かだった。


 これだけの部屋があるのに、人の気配がほとんどない。


 ようやく、


 C-417


 と書かれた小さなプレートを見つけた。


 俺は荷物を持ち直し、ドアの前に立つ。


 チャイムを押す。


 しばらくして、内側で足音がした。


 ドアが開く。


 出てきたのは、三十代くらいの女性だった。


 髪は後ろで束ねていて、表情は薄い。


 目だけが少し鋭い。


 俺は言った。


「配達です。」


 荷物を少し持ち上げる。


 女性は、その箱を見る。


 一瞬だけ、目が止まった。


 それから、首を横に振った。


「受け取るものはありません。」


 ドアを閉めようとする。


 俺は慌てて言う。


「依頼で、本人受け取りになっています。」


「知りません。」


「送り主は――」


「いりません。」


 ドアが閉まった。


 音は小さかった。


 俺はしばらくドアを見ていた。


 それから、配達票を見直す。


 依頼内容。


 そこには、短く書かれている。


 本人に受け取らせること


 それだけだった。


 置き配不可。

 代理不可。

 受取拒否不可。


 会社の依頼はだいたいそうだ。


 断られても終わりじゃない。


 受け取らせるまで終わらない。


 俺は少し廊下を見渡す。


 静かな廊下。


 同じドアがずっと並んでいる。


 そして、またドアを見た。


 今日は無理だろう。


 そう思いながら、階段へ向かった。



 二日後、またここに来た。


 同じ階段。

 同じ廊下。

 同じドア。


 C-417。


 チャイムを押す。


 しばらくして、ドアが少しだけ開いた。


 女性が顔だけ出す。


 俺を見る。


 そして、箱を見る。


「まだいるんですか。」


「依頼なので。」


「受け取らないと言いました。」


「受け取らせる依頼なんです。」


 女性は黙った。


 それから、小さく息をついた。


「……しつこいですね。」


「仕事なので。」


 またドアが閉まる。


 それだけだった

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