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The story’s (あるバスは決まりなく色んな街、色んな街に進いていて、 バスの窓から色んな場所色んな物語見て語る話)  作者: San


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The story’s 果てしない旅 5

旅は、特別な出来事のない日々が続いていた。


丘を越え、川を渡り、名前も覚えない村を通り過ぎる。

季節はゆっくり巡り、草は伸び、刈られ、また伸びる。

空の色が少しずつ変わることだけが、時間の証だった。


その日も、ただの道だった。


森を抜けた先の、古い街道跡。

崩れた石橋の下で、風とは違う音が混じった。


かすかな、途切れがちな声。


泣き声だった。


私は足を止める。

橋の影、草に半ば隠れるように、小さな包みが置かれていた。


布は上質ではないが、丁寧に巻かれている。

捨てられたというより、置いていかれた、という印象だった。


包みの中には、赤ん坊。


角はまだ柔らかく、ほんの突起のように額にある。

尻尾は短く、かすかに動く。


目は閉じ、顔をしかめ、弱々しく泣いている。


近くに足跡はあった。

大人が一人、ここまで来て、戻った跡。


追えば追えただろう。

だが、私は追わなかった。


赤ん坊を抱き上げる。


軽い。


体温がある。


それだけで十分だった。



最初の夜は、火を絶やさなかった。


小さな体はすぐに冷える。

私の外套で包み、胸元に抱く。


泣き声はやがて弱まり、眠りに落ちる。

その呼吸の上下を、ただ見ていた。


理由は考えなかった。


なぜ拾ったのか。

なぜ置いていったのか。


問いは風のように浮かび、消えた。


朝が来る。


赤ん坊は泣き、私は水を汲み、近くの村で山羊の乳を分けてもらった。

事情は話さない。

「拾った」とだけ言う。


村人は一瞬、驚いた顔をし、それ以上は聞かなかった。


世界には、説明されない出来事が多い。



旅は止まった。


移動は短くなり、歩幅も小さくなる。

赤ん坊を背負い、森を抜ける。

泣けば立ち止まり、眠れば歩く。


時間の流れが、以前よりも細かく刻まれるようになった。


一日が長い。


それでいて、短い。


昨日できなかったことが、今日は少しできる。

首が座り、目で物を追い、指を握る。


小さな変化が、はっきりと分かる。


私は湖の近くに小屋を借りた。

旅は続けられるが、急ぐ必要はない。


春が来て、夏になり、秋が過ぎる。


赤ん坊は、歩くようになった。


転び、泣き、また立つ。


角は少しずつ伸び、尻尾も長くなる。

笑うことが増えた。


名前をつけた。


深い意味はない。

ただ、呼ぶための音。


彼女はその音に振り向き、笑う。



湖の水面に、月が映る夜。


小さな手が、私の指を握る。


言葉を覚え始める。

意味のない音が、やがて意味を持つ。


「なぜ?」


という問いを、いつか向けられるだろう。


なぜここにいるのか。

なぜ二人なのか。

なぜ自分には角があり、あなたにはないのか。


そのとき、どう答えるかはまだ決めていない。


だが、今はまだ早い。


彼女は湖に石を投げ、波紋を作り、それを面白がる。

私はそれを見る。


ただ、それを見る。



年月が重なる。


背丈が伸び、走る速さが増し、声は澄んでいく。


私は変わらない。


それを、彼女は不思議に思い始める年頃になる。


「どうして?」


と問う。


私は少し考え、


「たぶん、そういうものなんだろう」


とだけ答える。


それ以上は言わない。


彼女も、深くは追わない。


世界には、説明のつかないことがあると、もう知っている顔をしている。



市場へ行けば、人々は彼女に話しかける。


角の形を褒め、尻尾の動きを笑い、果物を渡す。


彼女は人の輪の中へ入っていく。


私は少し離れて立つ。


それでいい。


ある日、彼女は言う。


「もっと遠くへ行ってみたい」


湖の向こう、山の向こう。


私は頷く。


旅は、また動き出す。


今度は一人ではない。



道を歩く。


小さな背中が、少し先を進む。


振り返り、手を振る。


私は歩幅を合わせる。


空は青い。


戦場の煙も、かつての満月の光も、遠い記憶の奥にある。


消えはしない。


だが、今ここにはない。


赤ん坊だった彼女が、笑いながら風の中を走る。


その後ろ姿を見ながら、私は歩く。


時間は流れていく。


止めることも、戻すこともできない。


それでいい。


歩き続ける限り、

どこへでも行ける。


そして、いつか彼女が自分の道を選ぶ日まで、

私は隣を歩いている。

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