The story’s ABC物語 11
それから、
AとCが並ぶ場面が、少しだけ増えた。
偶然、みたいな距離。
話していなくても、
気づくと隣にいる。
昼休み。
Cが席で本を読んでいると、
Aは、わざわざ遠回りしてから近くを通った。
用事があるわけじゃない。
プリントを出しに行くだけなのに、
戻ってくるときも、
同じ道を通る。
Cは気づいていないか、
気づいていても何も言わない。
Aは、
話しかけるほどでもない距離で、
少しだけ長くそこにいる。
【メモ:
A、理由のない寄り道が増えた】
ある日。
Cがペンを落とした。
拾おうとしたのは、
Aと、もう一人のクラスメイト。
でも、Aのほうが少し早かった。
「はい」
そのときのAの声が、
いつもより、ほんの少しだけ柔らかかった。
Cは、
軽く会釈して受け取っただけ。
それだけのやり取りなのに、
Aはしばらく、
自分の席に戻らなかった。
【メモ:
A、Cと話した後、
少しぼーっとすることがある】
Bは、
それを全部、見ているわけじゃない。
でも、
“見えるところ”だけでも、
前と違うのは分かる。
三人で話しているとき。
Aの視線は、
BよりもCのほうに向く時間が増えた。
Bは、
それに気づいているのか、
気づいていないのか分からない顔で、
いつも通りに話を合わせる。
ある日。
AとCが二人で笑ったあと、
Bは少し遅れて笑った。
声は明るい。
でも、
その笑いは、
前よりも短かった。
【メモ:
Bの笑い、すぐ消える】
放課後。
Aが、
「先に帰る」と言った。
いつもなら、
Bと一緒に帰る時間帯。
理由は、
特に言わなかった。
Cは、
少し間を置いてから、
「じゃあ、また明日」と言った。
Bも同じように言った。
三人とも、
普通の別れ方をした。
でも、
Bは、
Aの背中を見送る時間が、
いつもより少し長かった。
【メモ:
B、Aを見る時間が増えた】
それが、
嫉妬かどうかは、
僕には分からない。
ただ、
Bは、
AとCの間にある“何か”を、
気にし始めているように見える。
はっきりした感情じゃない。
名前のつかない、
引っかかり。
【メモ:
Bはまだ気づいていない
でも、何かを気にしている】
僕の席から見えるのは、
変わり始めた視線の向きと、
少し遅れる笑顔だけだ。
それが、
どこに向かうのかは、
まだ、分からない。




