The story's ABC物語 6
ある日の昼休み。
三人は、いつもの机を囲んでいた。
話題は次の授業のことだった。
誰がノートを貸すか、
課題がどれくらい残っているか。
特別な話じゃない。
ただ、三人でいる時間の延長みたいな会話。
AがCのノートを覗き込んで、
何かを指で示した。
Cはそれを見て、
少しだけ身を乗り出した。
二人の距離が、
自然に近づく。
そのとき、
Bが、何か言った。
声は聞こえなかった。
でも、
Bの口の動きが、
いつもより速かった。
AとCは、
同時に顔を上げた。
ほんの一瞬
三人の間の空気が止まった。
笑い声が
続かなかった。
次の言葉が、
すぐには出てこなかった。
【メモ:
Bが、少しだけ強い言い方をした?】
Bは、
すぐに表情を整えた。
いつもの、
場を和ませるような笑い方に戻る。
それから、
話題を変えた。
手で机の上のプリントを指しながら、
別の話を始める。
Aは
一瞬だけBの顔を見てから、
その話題に乗った。
Cも少し遅れて頷いた。
三人の会話は、また動き出した。
でもさっきまでの流れとは、
どこか違う。
距離は変わっていないのに、
間の取り方が、
少しだけ慎重になった。
【メモ:
会話が、一度“切れた”】
放課後。
三人は、
同じ方向へ歩いていた。
並び方は、
いつもと同じ。
でも、
歩く速さが、
ほんの少しだけ合っていなかった。
Bは、
ときどきAとCの位置を気にして、
歩幅を調整していた。
それは、
いつもと同じ行動のはずなのに、
その日は、
妙に目についた。
【メモ:
Bは、あの後、
いつもより“間に入ろう”としている】
あの昼休みの出来事は、
大きな事件じゃない。
誰も、
その話を後から蒸し返さない。
謝ることも、
理由を聞くこともない。
でも、
あの一瞬だけ止まった空気が、
僕の中に残っている。
Bの言葉は、
たぶん悪意じゃない。
むしろ、
三人でいたい、という気持ちの延長だ。
それでも、
AとCの会話が一瞬止まったのは、
偶然じゃない気がする。




