The story's ABC物語 5
人は、
前よりもずっと一緒にいるようになった。
昼休みは、
同じ机を囲むことが増えた。
放課後も、
帰る方向が同じ日は、
三人で並んで歩いている。
笑い声も増えた。
教室の後ろ、窓際。
僕の席から見ても、
それははっきり分かる変化だった。
【メモ:ABCは、明らかに仲良くなっている】
でも、その光景を見ていると、
どこか引っかかる。
仲が良い、
という言葉でまとめるには、
少しだけ歪んで見える瞬間がある。
例えば、
AとCが二人で話しているとき。
声は聞こえない。
でも、
二人の距離は自然で、
笑い方も似ている。
前よりも、
“気を使っている感じ”がなくなっていた。
その横で、
Bは少し遅れて笑う。
タイミングが、
ほんの少しだけずれる。
【メモ:
AとCの距離が、
思っていたより近い】
ある日の昼休み。
Bが席を立って、
飲み物を取りに行った。
その間、
AとCは二人きりになった。
会話は続いていた。
沈黙にならない。
Bが戻ってきたとき、
二人はすぐに間を空けた。
【メモ:
Bがいない時間も、
AとCの会話は途切れない】
違和感の正体は、
少しずつ形になっていった。
三人でいるとき、
一番よく動いているのはBだ。
話題を振る。
場が止まりそうになると、
笑って繋ぐ。
誰かが黙ると、間に入る。
三人の空気を、
一生懸命、保っているように見える。
【メモ:Bは“場を回している”】
それに対して、
AとCは、
無理をしているようには見えない。
二人でいるときの空気を、
三人の場に持ち込んでいるだけ、
そんな感じがする。
【メモ:AとCは“自然に仲が良くなっている”】
ある放課後。
三人で歩いている途中、
AとCが少し前を歩いた。
Bは、一歩だけ後ろに下がった。
すぐに、
歩く速さを合わせて、
二人の横に戻った。
でも、
その一歩が、
僕には妙に長く見えた。
【メモ:
Bは、置いていかれそうになると、
すぐに距離を詰める】
三人は、仲良くなっている。
それは本当だ。
でも、
仲良くなり方が、
同じじゃない。
AとCは、
少しずつ近づいている。
Bは、
その距離が離れすぎないように、
必死に間に立っている。
それは、
三人で仲良くしたい、という優しさにも見えるし、
二人だけになるのを、
無意識に怖がっているようにも見える。
【メモ:
Bの優しさと、
AとCへの感情は、
同じ場所から来ている気がする】
教室の後ろ、窓際。
僕の席から見えるのは、
その“ズレ”だけだ。
Bが、
何を思っているのかは分からない。
ただ、
三人で笑っているその真ん中に、
見えない力がかかっているように感じる。




