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The story’s 全作品集 (あるバスは決まりなく色んな街、色んな街に進いていて、 バスの窓から色んな場所色んな物語見て語る話)  作者: San


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138/154

The story’s map 4

画面の中で、小さな選択が何度も繰り返される。


その一つ一つが、確かに“今”起きている。


――


気づけば、また指が動いていた。


あの坂の街は、まだどこかで続いているはずなのに。


あの女性も、まだ迷いながら進んでいるはずなのに。


それでも、視点は静かに離れていく。


高低差のある家々が小さくなり、複雑に絡んでいた道が一本の線のように潰れていく。


少しだけ、胸の奥が空いたような感覚。


追い続けることもできたのに、なぜか離れてしまう。


理由はわからない。


ただ、別の“今”を見つけようとしているようだった。


指先はそのまま、広い場所へと滑っていく。


街を越え、さらに外へ。


建物が減り、色が変わる。


緑と土の色が増えていく。


やがて、ひとつの場所で指が止まった。


畑だった。


広くはないが、いくつも区切られた土地が並んでいる。


整えられた土の列。


ところどころに作物が植えられている。


風が通り抜けているのが、わかる。


葉が揺れ、影がかすかに動く。


その中に、一本の細い道があった。


畑と畑の間を通る、踏み固められた土の道。


まっすぐに伸びているが、どこまで続いているのかは見えない。


その道の上に、人がいた。


ゆっくりと歩いている。


老人だった。


背は少し丸まっている。


歩幅は小さい。


けれど、一歩一歩は確かで、止まることなく進んでいる。


周りには、誰もいない。


遠くまで見渡しても、人影はない。


ただ、風と畑と、その人だけ。


視点を少し寄せる。


足元の土が、わずかに沈む。


乾いた場所と、少し湿った場所で、歩き方が変わるのが見える。


それでも、一定のリズムで進んでいく。


急ぐ様子はない。


かといって、休む気配もない。


ただ歩いている。


それだけなのに、なぜかその動きから目が離せなかった。


手には何も持っていない。


ポケットにも入れていない。


腕は自然に揺れている。


その揺れが、少しだけ左右で違う。


長い時間をかけてできた癖のように見える。


時々、足を止める。


ほんの数秒。


前を見て、何かを確認するように。


けれど、目の前には何もない。


ただ同じような畑が続いているだけ。


それでも、また歩き出す。


道はまっすぐなのに、その“確認”が必要なようだった。


空は広く、雲がゆっくりと流れている。


影が畑の上を横切る。


その影の中に、老人の姿も一瞬だけ溶け込む。


そしてまた、光の中に戻る。


時間が、はっきりと流れている。


街の中とは違う、静かな流れ。


誰にも急かされない時間。


それでも、止まることはない時間。


老人は、少しだけ顔を上げた。


遠くを見る。


何かを探しているようにも見えるし、ただ見ているだけのようにも見える。


そのまま、しばらく動かない。


風だけが動く。


やがて、また視線を落とす。


足元を見て、次の一歩を踏み出す。


その繰り返し。


道の終わりは、まだ見えない。


どこへ向かっているのかも、わからない。


家があるのか。


帰る場所があるのか。


それとも、ただ歩いているだけなのか。


何もわからないまま、その背中を見続ける。


小さくなりそうで、ならない。


遠ざかっているはずなのに、なぜか距離が変わらないようにも感じる。


同じ場所を歩いているような錯覚。


けれど、確かに進んでいる。


土の色が少しずつ変わる。


作物の種類も変わる。


それでも、風景の印象はほとんど変わらない。


その中で、ただ一人、動いている。


気づけば、呼吸がその歩幅に合わせられていた。


一歩。


もう一歩。


ゆっくりと、確実に。


画面の向こうの、その動きに、引き寄せられるように。


やがて、老人はまた足を止めた。


今度は、少しだけ長く。


道の先を見つめる。


何もないはずのその先を。


そして――


ほんのわずかに、身体の向きを変えた。


道の上にいながら、少しだけ横へ。


畑の中へ入るわけでもなく、戻るわけでもなく。


ただ、まっすぐ

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