私の事大嫌いな彼女とのlove ストーリー 2
僕がコーヒーを飲もうとすると、
彼女はじっと見てきて言った。
「……今の、音立てたでしょ」
「えっ、立ててないです!」
「立てた。
ズズッて感じがもう無理」
「ごめんなさい!」
⸻
しばらく無言。
彼女はコーヒーを一口飲んで、
また僕を見る。
……そして、何も言わずに、
すごく嫌そうな顔をした。
「……え、今のも何かしました?」
「……別に」
「別に!?
その顔で別に!?」
⸻
それでも彼女は、
席を立たなかった。
むしろ、スマホをいじりながら言った。
「……ねえ。
あなたといると、胸の奥がちょっと苦しい」
「それ、恋じゃないですか?」
「最悪の仮説立てないで」
⸻
それから、僕らはなぜか会うようになった。
会うたびに、彼女は言う。
⸻
「その前髪の分け目、嫌い」
「左右どっちがいいですか!?」
「どっちも嫌」
⸻
「その服の色、なんでそれ選んだの?」
「安かったからです!」
「価値観がもう無理」
⸻
「……今の笑い方、無理」
「自然な笑顔です!」
「作為を感じる」
⸻
たまに、
本当に何も言わない日もあった。
ただ、僕の顔を見て、
……はあ。
ってため息ついて、
露骨に嫌そうな顔をするだけ。
「……今日は、総合的に嫌い」
「項目分けしてほしいです!」
⸻
ある日、僕は彼女にお菓子を渡した。
「よかったらどうぞ」
彼女は袋を受け取って、中を見た瞬間、
ぴたりと動きを止めた。
「…………」
「……あ、もしかして甘いの苦手でした?」
ゆっくり顔を上げて、僕を見る。
「……これ」
「はい」
「私、これ嫌い」
「えっ」
「前に言った」
「えっ!?
あ、ほんとだ……言ってましたね……!」
「……なんでこれ選んだの」
「え、たまたまです!
コンビニで一番目立つところにあって……」
「最悪」
「狙ってないです!!
むしろ完全事故です!!」
⸻
その夜、彼女は僕にメッセージを送ってきた。
( なんで、あれ買ったの )
僕は即レスした。
(本当にたまたまです!!!)
(運命レベルで最悪 )
(むしろ引き当てた僕を褒めてほしいです)
(褒めるか!)
(ちなみに、そんなに嫌いだったんですね……)
(甘すぎるし、匂いが無理)
(なるほど…)
(二度と買ってこないで)
(了解です!!)
⸻
数日後、また会ったとき。
彼女は何も言わず、
無言のまま小さな袋を僕に差し出してきた。
「……はい」
「えっ」
「どうぞ」
「え、なんですかこれ……」
袋の中を見ると、
そこには僕が前に一度だけ言ったお菓子が入っていた。
「…………」
「……これ」
「あなた、これ嫌いでしょ」
「えっ、なんで知って……」
「前に言ってた」
「え、僕そんな話しましたっけ……?」
「『子どもの頃から苦手なんですよね』って」
僕は、ちょっと動揺した。
「なんでこれ買ってきたんですか……」
「仕返し」
「理不尽じゃないですか!?」
「あなたも、私にやった」
「いや、あれは事故です!!」
「結果は同じ」
⸻
僕は袋の中身を見て、
普通にテンションが下がった。
「うわ……本当に嫌いなやつだ……」
「でしょ」
「なのに、なんでわざわざ……」
「あなたがどんな顔するか見たかった」
「性格悪くないですか!?」
「あなた限定」
⸻
それでも僕は、
ちょっと嬉しくなってしまった。
「……覚えててくれたんですね」
「ありがとうございます……」
「なんで感謝するの」
「わざわざ僕が嫌いなもの、
買ってきてくれたんで」
彼女は、真顔で言った。
「……ほんと、そういうとこが嫌い」




