The story’s 迷い街の運び屋 18
また次の日。
街の空気は昨日より少し湿っていた。
道路に小さな水たまりが残り、空は曇っている。
遠くで自転車のベルが鳴る。
鳥の声が、建物の隙間からかすかに聞こえる。
俺は住所の前に立つ。
いつものアパート。
壁も階段も、少しずつ日に焼けて色が変わっている。
でも昨日と同じ場所で、同じ建物。
ノックする。
コン、コン。
少しして、足音が近づく。
扉が開く。
女の子――いや、もう七年後の彼女だった。
髪は肩の少し下まで伸び、少し光を含んで揺れる。
服はゆるいけれど、外の世界にも少し慣れた感じがする。
彼女は俺を見る。
少し目を細めて確認するように、でも笑みを含んだ目で。
「……あ。」
ふっと息を吐くように言う。
「久しぶりだな。」
首をかしげ、少し微笑む。
「また七年後かしら。」
それだけ言って、箱に目を向ける。
俺は箱を持ち上げる。
「配達です。」
彼女は箱を両手で受け取る。
昨日より少し手慣れた様子で、机の上に置く。
そして、軽く言う。
「時間って早いと思わない?」
少し間を置く。
部屋の中の光が、机の上で揺れる。
カーテンの隙間から差し込む光が、白い光の四角を床に作る。
「七年なんて、あっという間に感じる。」
机に手をつき、遠くを見るように目線を上げる。
少しだけ笑みを浮かべる。
俺は、かすかにうなずく。
言葉は少ない。
「…そうかもしれませんね。」
それだけだった。
「こうして、また荷物を受け取って。」
箱を軽く叩く。
「なんだか不思議。」
少し沈黙があった。
部屋の中は静かで、外の風の音だけが遠くに聞こえる。
「配達って、同じことを繰り返すだけなのに。」
彼女は軽く笑う。
「でも、同じじゃないんだね。」
外では風が少し強くなった。
カーテンが揺れ、廊下に涼しい空気が流れ込む。
俺は軽く頭を下げる。
「それでは。」
彼女は顔を上げ、ゆっくりうなずく。
「あ、うん。」
少し笑みを浮かべて言う。
「またね。」
扉が静かに閉まる。
廊下に、湿った空気と、わずかな余韻だけが残った。




