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裏の世界の過ごし方  作者: G@in
1章 入隊編
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3話 白黒ツイン(テール)ズ

凛と軍部入隊を決めてから2週間。この2週間は人生で1番短い時間だったように思う。まあ、普段退屈でしかなかった学校の時間中に考える楽しみが出来たのだから当然と言えば当然かな。

今は凛と一緒に首都中心部の街「カイラル・フラルド」に電磁走行車で向かってるところだ。これから軍部に自分が入るなんて、2週間たっても実感は持てないままだし、大丈夫かと少し内心心配。


「鏡?何ぼーっとしてるのさ。」


「あ、ごめん。少し考え事。」


凛の言葉で我に返り、横を向く。すると、凛もいつも通りニヤニヤしながら見つめ返してくる。

例え実感が持てなくても、今からこいつと「軍部入隊」という人生最大の決断をしに行くんだ、しっかりしないと。


「ふーん考え事かぁ。鏡でも緊張するのかな~?。」


「でもまあ、それは一旦置いといて、ようやく見えたよ。ほら、首都中心部だ。」


言われて、ふと窓の方を見る。そこには、今まで見たこともないような美しい装飾が施された道路や噴水、およそ人の家とは思えない大きさの豪邸など、初めて見る光景が広がっていた。


「これが首都か…すっごい…」


この光景、それだけでもう昨日までの退屈な日々との決別を実感できたような気がした。それほどまでに美しかったんだ、この街は。


「いやー、首都中心部なんて軍家の集まりだからね〜。僕たち一般人は普段来にくいよね~」


凛の言う通り、私たち一般人は首都までは来れたとしても、ここ中心部はイマイチ居心地が悪くて行きにくい。というのも、ここに住んでるのは皆、100年前ずっと続いてた戦争で武功を多くあげた家の末裔、いわゆる「軍家」の人しか住んでないからだ。


「わかる、軍家の人ってなんか…自分たちが貴族なんだーって感じに偉ぶって来るんだもん。」


「僕たちはこれからそんな人たちの巣窟に行く訳ですから?なれようね〜鏡。お互いに。」


「まあそうは言っても、ここに住むレベルの軍家は僕たちみたいな一般募集と同じ寮部屋には来ないと思うけどね~、多分。」


「首都の軍家とは同じ部屋にならない」、その可能性は実はかなり高い。

「軍家」と1括りに私たちは言うけど、実際は武功の大きさ、先祖の軍での立ち位置などで住む場所はもちろん変わってくる。その中でも、ここ首都中心部に住んでるような連中は最高級の中でもさらにトップクラス。

そんな人達が、いくら全募集共通で全寮制だとしても、一般募集と同じ部屋に入るとは考えられない。


「でも、例えここの軍家と同じ部屋になったとしても、挫けず居続ける。それが約束でしょ?凛。」


「…そうだね~、さすがは凛ちゃんのお嫁さんだ。」


「凛はここで1回挫けとく?」


「あっはははははっ。冗談だって、その様子じゃだいじょぶそうだ。」



そんなこんなしているうちに目的地に着いた。窓から見てわかってはいたけど、生で見る迫力はやっぱりどこか違うものがあって、窓から見た以上の感動が、胸に込み上げてくる。


「凛見てアレ凄い!!すっごいおっきな噴水だよ!!どうやって動いてるんだろあれ。」


「おぉ~、ここまでテンションの高い鏡は久しぶりというか、初めて見るかも。」


「まあさすがの凛ちゃんでも、噴水の原理はわかんないな〜。電磁走行車もどうやって動いてるかわかんないし。」


そう言われて、凛にも話していないもう一つの軍部入隊理由を思い出す。


『軍部は、僕たち一般人が知らない秘密を持ってる。そして軍家出身の人は多分…それを知ってる』


入隊を決めた日、凛が言った言葉。これを聞いて以来、思うんだ。今まで学校で習ってきたこと…いや、私や凛でも説明出来なかった物事の全てが、軍部に入れば分かるんじゃないかって。そしてそれは、私の退屈を大きく壊してくれるんじゃないかって。

そう思うようになってから、私の軍部入隊の目的は「退屈な生活から抜け出すこと」、「自分の知らない世界を知ること」の2つに変わった。凛も自分が軍部に入りたい理由を「鏡と同じさ〜」と言うばかりで、はぐらかして全然答えないし。これくらいの秘密はいいと思う。


「それじゃあ行こう、凛。軍部本部に。」


「はいはい。僕はいつでも鏡について行きますよ~。」


同刻


「今年は一般募集が多いね~、僕の人望かな?さすがは僕だね。」


白のツインテールをなびかせながら、回転式の椅子を窓の方に回転させて、首都を見つめる制服に身を包んだ少女が1人。

態度や発言からも読み取れるが、なによりその胸に光る「隊長」の2文字。この少女は、軍部の隊の隊長の1人、つまり、かなり大物である。


明里(あかり)のバカ。上の連中が教育統制だの情報統制だのやりだして100年経つらしいし。何も知らない連中が退屈しのぎにどんどん来てるから増えてるのよ。」


そんな少女を咎める少女が部屋にまた1人。黒のツインテールをなびかせ、白髪の少女を後ろから抱き抱え、顎を白髪の頭に乗せながら、同じように首都を見つめている。そしてその胸には、「副隊長」の文字が刻まれていた。


「退屈〜?そんな理由で軍に入りたがるのかい?全く、最近の一般人は物好きだね。」


怪訝そうにしながら、顔を上にあげ、黒髪の少女を見つめる。その仕草は、まるで妹のようであった。


「バカ、さっきも言ったけど、一般人は何が軍で起きてるか知らないのよ。…まあ、これも上の狙いなのかもね。募集の度に一般枠の人が増えてる気がするし。」


これもまた、妹を咎める姉のように、黒髪の少女は綺麗な白髪を撫でながら答える。


「でも紫暗(しおん)、言い訳じゃないけど、僕は2つ前の募集以前はマクギリスにいたんだよ?だからフラルドの軍部のことはそんなに知らないし、わかんないよ。」


2回も「バカ」と言われたのが気に食わなかったのか、白髪の少女はやや食い気味に答える。それに対して、黒髪の少女は頭を撫でることで返答とした。

この2人こそが、後に鏡と凛の上司かつ師匠となる、隊長、「白河明里(しらかわあかり) 」と同じく副隊長、「黒岩紫暗(くろいわしおん)」であった。


ぶっちゃけこの小説を書き始めた理由、このふたりが個人的に大好きだから

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