表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/150

70話 Side アレス

Sideアレス


「ふざ、けるなっ! せっかく転生したのに、こんなところで死んでたまるか! シロとクロも、絶対に殺させるもんかぁっ!」

「!」


 その言葉を聞いた瞬間、沸騰していた意識が急に冷えた気がした。


 転生……?


 この少年も、転生者なのか?


 というか僕は、なんでこの子の肩と腕を掴んでる?


 少年は傷だらけだ。僕がやったんだから、当然だろう。


 え? 僕がやった?


 なんで?


 それは、憎かったからだ。僕らから、竜の核を盗んだこいつらが。


 だからって、こんな――いやいや? え? 僕の体の、この黒いのはなんだ? 僕は、どうなって……?


 僕が動きを止めた瞬間を逃さず、少年が拘束から抜け出した。だが、彼は逃げない。それどころか、向かってきたのだ。


「ああああああああああ!」


 少年が叫ぶ。憎悪と憤怒に満ちた目で僕を睨みつけながら。


 少年の喉や胸が赤く光ったかと思うと、彼の全身を赤いオーラが包み込んだ。少年の怒りがそのまま形を得たかのように、そのオーラは禍々しく猛々しい。


 少年の周囲でユラユラと蠢く赤い炎は、角と翼を思わせる。まるで赤い悪魔のようにも見えた。少年に憑りつく、憤怒の悪魔だ。


 彼はその力を制御しきれていないのか、上半身の服が少しずつ燃え始めていた。そして、胸元が目に入る。


 あの蝙蝠みたいな黒い模様は――?


「がらあああぁぁぁぁ!」

「!」


 混乱のせいで棒立ちになる僕に対し、獣のように首に噛みついてくる少年。首から血が大量に溢れ出し、その凄まじい闘争心と執念に背筋が寒くなった。


 引き離そうとするが、少年は殺意に満ちた唸り声を上げて噛みつき続ける。手加減している場合じゃない。


「オォオォォォ!」

「があぁぁぁ!」


 僕は力を込めて無理やり少年を剥がす。だが、その直後、少年の口から真っ赤な炎が勢いよく吐き出された。やはり、この少年の力の源は天竜の核か!


 でも、一体どうやって……? 転生者としてのチート能力なのか?


 ああ、燃える! 熱い! 全身が、燃える!


「オォォォォォォ?」


 魔力で炎を吹き飛ばそうとしても、僕の体を包む赤い炎が弱まることはなかった。


 超再生力の恩恵と聖魔法で傷を癒しているからまだ立っていられるが、それがなければ僕はもう負けていただろう。


 僕は、魔王殺しというチートを神様から与えられている。魔王を倒して魔石と核を吸収すれば、その魔力と能力の一部を恩恵として得られるというものだ。


 僕はそのチートによって、ワーウルフの魔王から超再生力と身体能力強化を手に入れていた。そして、あの天竜もまた魔王であった。あの核を吸収出来ていたら、少年のような火炎を吐く能力を得ていたのだろうか?


 僕は全身の魔力を一気に膨張させるように放出し、無理やり炎を消し飛ばした。


 僕の顔を覆っていた黒い闇が剥がれ落ち、視界を遮っていた炎が消える。地面に転がった状態で僕を睨みつける少年と、目が合った。


 その瞬間、妙な既視感というか、懐かしさを覚える。以前からそうだったが……。自分と同じ転生者だって分かったからか? より強い郷愁を感じさせる。


 いや、本当に同郷ってだけか? この顔、どこかで――っ!


 思い出そうとした瞬間、僕の脳裏には雷鳴に貫かれたかのような衝撃が走っていた。そして、思い出した。


 あの日のことを。幼い僕を助けて、僕の代わりに死んでしまった、あの人の顔を。


 間違いない! この顔は……あの人だ! 結局、20歳で死んでしまったけど……。あの人みたいになりたいって思って、生きた。転生してからも……。


「なんで……。神様は、何も……」


 殺意が鈍る。というか、完全に殺意なんてどこかへと吹き飛んでしまった。


 そのせい? おかげ? なのか、僕の体を包んでいた黒い影も、いつの間にか消えていた。あれは、いったいなんだったんだろう?


 凄い力が湧き出るのと同時に、殺意や憎悪が抑えられなくなっていた気がする。いや、それほどの殺意を抱えたから、ああなった?


 とにかく戦いをやめて、少年たちを救わなくては。少女たちもまだ死んでいない。まだ助かる――。


「おおおおおおおおおおおおおおお――!」


 少年はまだ動けたのか!


 その口から再び吐き出される火球。少年の殺意が乗り移っているかのように、禍々しい。僕を絶対に殺すという、憎悪を感じる。


「ぐあぁぁぁぁ!」


 顔面への直撃は避けたが、左肩を消し飛ばされた。腕が千切れ飛び、灰と化す。


 これは、ヤバイ。焼け爛れた肩口から、血が噴水のように噴き出す。今の火炎で、心臓の近くまで抉られてしまったのだ。


 魔力で回復を試みるが、天竜の力が籠った炎に焼かれたせいなのか、全然傷が治らない。大量の出血のせいで、意識が――。


「くっ……」


 僕はほとんど無意識に、転移魔法を発動させていた。大量に魔力を消費する、僕の奥の手だ。


 希少すぎて、人に使えることを知られるのもまずい能力でもある。ただ、今はそんなこと言っていられない。


 僕の視界が、冒険者ギルドに借りている部屋へと切り替わった。目印の下へとちゃんと転移できたらしい。


 でも、魔力欠乏のせいで、動けな――。


「おい! アレス! 大丈夫か!」


 ああ、ガイランドさんか……。隣の部屋だし、異変を感じ取って様子を見にきたらしい。


「あぁ……」

「いい! 喋るな! いまポーション持ってきてやるからな! 死ぬなよ!」


 少年たちは、無事だろうか……? あの少年は、あの人本人なのか……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あああ…勇者の卵ってそういう〜?!うぬぬぬ
[一言] 激しく燃える憎悪の炎がシュンと消えてしまいましたね ただアレス君は誤解を解こうとしても、急襲したのは事実なんで和解出来るか? いや和解出来るような心のケアを彼らに与える事が出来るか?
[一言] そうなるんか…わぁ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ