63話 金属の宝箱
木の根をじっと見つめるシロ。
「あんな離れた所からでも、魔力が見えたのか?」
「うーん、なんか変だったです! 魔力が、ちょっとだけ流れてたです」
どうやら、周囲からこの木の根元に魔力が流れているらしい。
やはり俺たちには分からんが、竜眼を持つシロだからこそ気づけたんだろう。
「掘り起こしてみるか」
「やるです!」
「クロもがんばーる」
俺とシロで土魔法を使い、木の根の周囲の土を取り除いていく。すると、そこには金属製の箱が埋まっていた。
手がかりじゃなくて宝箱だったか。転移陣とかを期待してたんだけどな。
まあ、これだけ入念に隠されているうえに、初の金属製だ。普通の宝箱よりも中身には期待できるだろう。俺たちでも使える軽くて強い武器とか、防具だといいな。
ああ、調味料関係でもありがたいけど。
何とか取り出した銀色の箱は、正方形の不思議な形をしていた。今まで見たことがある宝箱とは、微妙に形状が違っている。
「宝箱、だよな?」
「この箱、魔力があるです!」
「ふしぎたからばこ?」
シロの竜眼が感知したのは、間違いなくこの魔力だろう。目の前にすれば、俺にも微かに魔力が感じ取れた。
「罠は?」
「魔法陣は見えないです」
シロの竜眼は、内部の魔法陣なども見通す。そのため、最近では罠の看破役が板についてきたのだ。
「クロ、障壁を頼む。俺が開けるから」
「ごかいちょー」
離れた場所から魔法で蓋を開け――ようと思ったが、箱は開かなかった。鍵がかかっているらしい。だが、箱には鍵穴なんて存在していなかった。これではピッキングも試せない。
どうやって開くんだ? 無理やり破壊しては、中がどうなるか分からんし……。
「うーん、蓋に凹みがあるが……」
箱を観察してみると、蓋の部分が怪しそうだと分かる。蓋の中央には六角形の台座みたいなものがあり、その中央には三センチほどの窪みがあったのだ。いかにも何かをはめ込めそうな凹みだが、これが鍵ってことか?
「あ、そう言えば前手に入れた水晶と形が似ているか?」
「おー、確かにー」
「トールすごいです!」
「めーすいり」
ちょっとした思い付きだったが、クロとシロが目をキラキラさせて褒めてくれた。
「ふふん。そうだろうそうだろう。じゃあ、早速はめ込んでみますか」
俺は宝箱から出てきた白い水晶を、凹みの部分に嵌め込んでみた。なんと、形がピッタリとはまるではないか!
「おおー!」
「はまた」
「はまったです!」
俺の肩越しに宝箱を覗き込むクロとシロも、期待に満ちた表情である。だが、そのワクワクも長くは続かなかった。
宝箱はうんともすんとも言わなかったのだ。再度開けようとしても、鍵はかかったままである。
「え? 偶然嵌まっただけ……? それにしてはピッタリだったけど……」
シロとクロの慰めるような視線が逆に痛い! というか、超恥ずかしい! シロとクロに褒められてドヤ顔しちゃったよ! 10秒前の俺を殴りたい!
だが、ここで俺はあることを思い出した。
「そう言えばもう1つあったな」
スケルトンが落とした赤水晶だ。あれも、宝箱に関連している存在だった。
頼む、今度こそ正解であれ!
俺は赤水晶を取り出して、箱の凹みにはめてみる。
「うぉぉぉ! ちょ、ここから離れろっ!」
「わう」
「にゃう!」
赤水晶がカチリと音を立ててはめ込まれた瞬間、宝箱が強い魔力を放っていた。
俺たちは咄嗟に距離を取り、木の陰へと逃げ込む。否でも白霧が召喚された時のことを思い出すのだ。
何かが出たら、即座に攻撃をぶち込む。そう決意して魔力を練っていたんだが……。
「何も起きない?」
見つめる俺たちの前で箱がパカリと開き、魔力も光も消えていた。そのままさらに様子を見るが、何かが召喚される様子も、宝箱内から矢やガスが出ることもない。
魔法で施錠された蓋が開いただけ?
恐る恐る宝箱へと近づくと、中には不思議な道具が入っている。掌サイズの、黒っぽい円盤だ。微かに魔力を放っているが、危険性はなさそうである。取り上げてみると、結構重い。
円盤の中心には細い針のようなものが取り付けられ、一見すると時計や羅針盤のようにも見えた。円盤部分には彫刻が施され、美術品としても価値がありそうだ。
「魔法の道具です?」
「かっくいー」
「問題は使い方だよな」
これが入っていたのは、別の場所で入手したアイテムがなければ開くことができない特殊なタイプの宝箱だった。
それも、宝箱から普通に入手した白水晶では反応を示さず、あえて罠を作動させなくては出会えない凶悪なスケルトンを倒さねば入手できない赤水晶が必要だったのである。
そこから出たとなれば、普通のアイテムではないだろう。
「何に使うんだろうな?」
「投げてあそぶー?」
フリスビーかい!
「くるくる回して遊ぶです」
ああ、猫ってそういうの好きだよね。でも玩具扱いから1回離れようか。




