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61話 初野営


 森林の探索にも完全に慣れ、食材の採取できる場所や、魔獣の仕留め方なども分かってきた。大雑把な地図も作れてきたし、罠の傾向も分かってきた。


 おかげで、竜の力に頼りきりにならずとも、怪我をせずに探索を終えられるようにもなってきたのだ。特に、このエリアに出現する魔獣の種類がほぼ判明し、対応がスムーズにできるようになったのが大きいだろう。


 また、体内魔力が減った様子がないのも助かる。料理の効果で得られる魔力上昇は、マジで永続なのだろうか?


「今日は、住処に戻らずここで野営をする! 覚悟はできているな?」

「にゃぅ!」

「わふ」


 シロとクロが俺の言葉に真剣な顔で頷きながら、手を上げて応える。


 今日の俺たちは、いつもと違って夕方になっても撤退していない。野営を行う計画なのだ。日帰りでは同じような場所しか探索できず、奥までは全く踏込めていないからね。


 遂に迷宮内で夜を明かし、森林の奥へと進む時がきたというわけだ。まあ、今回は1泊だけで様子見だが。


 野営する場所は、木と深い茂みが密集した一角だ。


 普通なら、開けた場所でテントなどを張るんだろう。適当にドームを作るだけでも、寝るには十分なはずだ。だが、俺たちは隠密性重視である。


 魔獣から身を隠す意味もあるが、一番危険視しているのは傭兵たちである。


 ここ最近で2度、俺たちは傭兵と出くわしてしまっていた。


 日帰りで住処に戻っているということは、集結型魔法陣の存在する建造物から余り離れていないということでもある。


 そこは当然ながら、他の傭兵も多く行き来する地帯でもあったのだ。


 1度目は、遠くから俺たちを観察しているようだった。4人組に見えたが、隠れているメンバーがいた可能性もある。


 2度目は、2人組の傭兵に10メートルくらいまで接近されてしまっていた。どうやら、気配を消す魔法を使える相手だったようだ。クロの鼻の良さがなければ、もっと近づかれていたかもしれない。


 ただ、俺たちを見てかなり驚いていたので、魔獣か何かだと思っていたようだ。


 どちらも、スケルトン事件の時の3人組のように接触してくるわけではないんだが、俺たちを見つけた後は明らかに獲物を値踏みする目だった。


 子供がいることに驚き、包帯や眼帯を見て欠損奴隷と判断し、他の傭兵が迷宮に連れてきた囮役だと判断する。ここまでが、俺たちを見つけた傭兵に共通する流れだった。


 ガイランドのような面倒見がいいタイプであれば心配し、下衆どもであればどうにか自分たちの利益にできないかと思案するのだろう。


 まあ、周囲に所有者がいると判断するのか、俺たちに襲い掛かってくることはなかったが。


 しかし、子供だけで寝ているところを見られたら、絶対に危険だろう。そのための対策は必須であった。そのための方法も考えてある。


「じゃあ、まずは土魔法で穴を掘る!」

「ほるです!」

「ほる」


 皆で一定の大きさにしたら、仕上げは俺だ。


「おー、すごいです! 階段です!」

「トール、さーすがー」

「ふふん。ここ数日、ずっとイメージしてたんだ。なかなかだろ?」


 俺たちが茂みの真下に生み出したのは、2メートル四方の地下空間だった。結構浅い場所に作ったので、天井からは根っこが僅かに飛び出ている。


 後はこのまま中に入って、入り口部分を埋めてしまえば発見される確率はかなり低いだろう。


 ああ、密室というわけじゃない。空気穴はしっかりと作ってあるけど、濃い茂みによってカモフラージュされているのだ。


 床は少し押し固めてあり、それぞれのお尻の下には元テントのシートを敷いて座る。緊急事態を想定して、靴は脱がない予定だ。


 その後は、事前に立てた予定通りに野営を進めていった。


 今日の夕食は、蟹に似た風味を持つパラライズアイで作った塩スープと、ヘルキマイラ肉で作った照り焼き風ハンバーグだ。


〈『麻痺眼獣のスープ、穴倉風』、魔法効果:生命力回復・小、体力回復・中、魔力回復・小、生命力強化・小、体力強化・小、魔力強化・小〉


〈『死毒混成獣の照り焼きハンバーグ、異界風』、魔法効果:生命力回復・小、体力回復・小、魔力回復・小、生命力強化・小、体力強化・小、魔力強化・中〉


「うまうまです!」

「うーまーいー」


 シロもクロも幸せそうにご飯を食べてくれるからいいよね。


「トールのごはん最強です!」

「うん。きっとお料理屋さんのごはん、こーゆーの」

「おー、きっとそうです!」


 嬉しいこと言ってくれるねぇ。でも、シロもクロも実際に料理屋でご飯食べたことはないのか。考えてみたらずっと奴隷だったわけだし、それも当然か……。


「いずれ、料理屋なんてやれたらいいよなぁ」

「おー、きっと大繁盛です!」

「最初のお客になるー」

「好きなだけ食っていいぞ! というか、2人も手伝ってくれよ? 看板娘ってやつだ」

「やるです!」

「お任せー」


 呪いを解いたら、本当にそんな道も考えてみよう。料理屋でお金を稼いで、慎ましくも楽しい人生を過ごすんだ。


 楽しい食事の後は、浄化の術で体を綺麗にして持ってきた寝具で交代で眠る――はずだったんだが……。


「すぴーすぴー」

「すやー」

「ぐっすりですな」


 シロとクロは可愛い顔で眠っており、強めに揺すったくらいでは全く起きなかった。


「うーむ、2人とも、今日は大分はしゃぎ気味だったしなぁ」


 遠足前の子供状態だったのだ。朝からテンション高いし、この野営空間を作った後はもうずっとハフハフしていた。


「うう……おにくしかいらないです……」

「やさいきょひー……」


 野菜も食べなさい! 明日の朝食は野菜スープにしてやる。


「というか、本当に寝てるのか?」

「すぴーすぴー」

「すやー」

「……寝てるな」


 仕方ない。今回は俺が不寝番しよう。竜の力を得たことで体力も付き、夜も起きていられるようになったからな。


「シロとクロにとっては初めてのお泊りって感じなのかね?」


 いつもと違うシチュエーションに、興奮してしまったんだろう。何度か繰り返せば、慣れてくれるかね?


「にゃむ~……」

「ふわ~……」


 まあ、今日のところはぐっすり眠ってくれ。


色々と意見があるとは思いますが、私の作品に関しましては「ネタバレ絶対ダメ!」的なスタンスでやっております。

自分がネタバレしてほしくない派なので。

ですので、書籍版で得た情報は、感想欄に書き込まないようにお願いします。

書籍版をお読みの方々は、「くくく。この情報は我だけが知っておるのだぁぁ!」という優越感を楽しんでくださいませ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >書籍版で得た情報は、 直感が働いて見ても居ないのに正解する事があるのでなんとも言えない…ちなみに書籍版はまだ見てないので正解しちゃったらそれ即ち直感なのでご勘弁を
[一言]  そう言えば、これは獣人でも食べちゃダメって食材はあるのでしょうかね?
[一言] ネタバレ禁止。了解いたしました。以後、気を付けます。
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